大炎上コミッショナーVS凄腕スーパー交渉人 現地記者が見たMLB労使泥沼化の構図

[ 2022年3月3日 02:30 ]

会見する選手会役員のメッツ・シャーザー(AP)
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 労使が対立する大リーグで1日(日本時間2日)、機構(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナー(63)は、予定されていた31日(同4月1日)の開幕延期と、最初の2カード中止を発表した。当初の期限を1日延長して交渉に臨んだが、新労使協定の妥結には至らず。(1)労使交渉の現場(2)選手会の団結の理由(3)コミッショナーのリーダーシップ(4)今後の見通し――について、米スポーツサイト「ジ・アスレチック」で労使交渉の取材を担当するエバン・ドレリッチ記者が解説した。(構成・奥田秀樹通信員)

 私はフロリダ州ジュピターで、9日連続交渉の取材にあたった。交渉の場となったロジャー・ディーン・スタジアムの駐車場の外で何時間も立ちっぱなしで、事態が動くのをひたすら待つ。片方が何か提案しても、相手の期待には程遠く、がっかりしてしらけるのを繰り返した。ただ、交渉の戦術や、どちらが先に妥協するかというチキンレースは、見ていて面白くもあった。

 選手会は16年に前回の労使協定が締結された後、「変革」をもたらすため、敏腕弁護士のブルース・マイヤー氏を招へいした。NBA、NFL、NHLの労使交渉にも関わったスポーツ界の労使問題のスペシャリスト。今回の「変革」とは、交渉に臨むアプローチを変えることだ。元タイガース一塁手で通算251本塁打のトニー・クラーク専務理事が今でもリーダーだが、マイヤー氏は交渉に断固とした姿勢と押しの強さをもたらした。温情のあるタイプではないし、発する言葉にも全く隙がない。選手たちが求めていたタフな交渉役だった。

 一方のマンフレッド・コミッショナーには余計なことを言ってしまう癖があり、悪目立ちする傾向がある。選手はその部分を好きではないし、コミッショナーを信じられなくなってしまう。彼がオーナー陣を団結させ続けられるかは別の問題で、それについては分からないが、困難なのではという臆測はある。

 この先どうなるかを予測するのは難しい。交渉は近日中にニューヨークで再開される見通しだが、大きな動きが出てくるには時間がかかるかもしれない。双方とも、どこまで収益を失うリスクを負い、自分たちの主張を維持し続けられるかが、今後の鍵になる。(「ジ・アスレチック」遊軍記者)

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2022年3月3日のニュース