【畑野理之の理論】「マイペース」佐藤輝打ち続ければ「伝説」に変わる

[ 2021年2月10日 08:00 ]

練習試合   阪神8ー5日本ハム ( 2021年2月9日    宜野座球場 )

糸井(左奥)と並んでのティー打撃。佐藤輝の浮かべる笑顔にも大物の風格が…。(撮影・坂田 高浩)
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 カッコ良すぎるでしょう。佐藤輝です。本塁打を確信したときのシルエットや、悠々とした貫禄のベース一周。三振してもベンチまで闊歩(かっぽ)する姿は、まったく新人らしくなかった。

 キャンプインからずっと観察してきたが、この子は確かにタダ者ではない。当たり前のことを力強く言っているが、決して柵越えを数えてそう思ったのではなく、練習中の態度や振る舞いがベテラン選手かと思うくらいなのだ。いい言い方をすれば「堂々としている」、悪い言い方をすれば「手を抜いている」――。

 たいていのルーキーは首脳陣や先輩の目が気になって、アップも移動でも、着替え中ですら周囲にアンテナを張って最初はビクビクしているもの。しかし佐藤輝は周囲なんてお構い無し…に見える。ティー打撃や素振りのメニューなど、監督やコーチの目が自分に向いていないときは明らかに休憩モード。バットをいじったり、体を伸ばしたりして、そう見せないようにごまかしているのだから要領がいい。6日の練習ではティー打撃でなかなか振らなかったことがついに北川打撃コーチにバレてしまい、「ほらほら、もう始まってるよ~」とうながされたが、それでも慌てる様子はなかった。両隣の選手が10本目に、ようやくスタートさせたから恐れ入る。

 スポニチのカメラマン陣もこう口をそろえる。「レンズを向けても全然嫌がらないし、気にもしないのが珍しいですね。注目されることに慣れているというか、楽しんでいるのかな」。球団公式のインスタライブで大山と岩貞の投打のキャプテントークでも今年の新人たちについて「みんなマイペースだよね」と紹介していた。

 不真面目じゃないか、ピリッとしろよなんて言うつもりは全然ない。おそらく初めてのプロの練習に疲れているのだと思う。だから決してサボっているわけではなく、彼なりに必死にやっている。むしろ、今のままでいい。他に迷惑をかけない程度にふてぶてしい方が、怪物くんにはふさわしい。

 近大時代は寝坊の常習者だったと伝わる。そういえば松井秀喜さんも寝坊は有名だったそうだが、要は試合で打てば、一流選手になれば、それらのエピソードはすべて伝説になるということ。佐藤輝明。ものすごいヤツが入ってきた。 (専門委員)

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2021年2月10日のニュース