侍Jの守護神に急浮上したDeNA三嶋 もし記者が予知能力を持っていたら…

[ 2021年2月10日 09:30 ]

<DeNAキャンプ>ブルペンで投球練習する三嶋
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 侍ジャパンの稲葉篤紀監督が7日、沖縄のDeNAキャンプを訪れた。

 視察後、取材の最後に指揮官は切り出した。「あと三嶋の名前を出してもらっていいですか。後輩ですが、あいつは(昨季)後半は後ろ(抑え)をやっていて、抑えの候補として見ていきたい」。

 三嶋、侍ジャパン守護神候補に急浮上!と速報記事が並んだ。そして記者は感慨に浸った。「後輩。法大か。あの三嶋君がここまでになったんだ」。

 時を戻そう。09年秋。アマ野球担当だった記者は、東京六大学秋季リーグ開幕直前に、ドラフト候補の法大・二神一人を取材するため神奈川県川崎市内の同大練習場にいた。

 約束時間より早く到着しグラウンドには誰もいない。だがバックネット裏の小さな観客席で、練習着の小柄な選手がポツンと1人、ぞうきんを手に座席の掃除をしていた。「そうか活躍しても、1年生だし仕事はこなさないとね。頑張って」。黙々と席をふく男に声をかけた。三嶋一輝の反応は静かだった。「はい、頑張ります」。

 その春リーグ戦デビュー。153キロを計測し注目を集めた。神宮の取材では「高校(福岡工)からプロに行きたかったけど3年の春に腰を痛め諦めました。でもいつかプロに行く」と何度も話していた。淡々としつつ内面から出る強い意志。でも記者は「小柄で腰も痛めプロは無理だろう」と思った。もちろん見立ては違った。

 今年DeNA担当になり、1月の自主トレで久しぶりに目撃した姿は1メートル76、80キロの堂々とした雰囲気。座席を掃除していた面影などあるはずもないが、当時が懐かしくなった。

 もし記者が予知能力を持っていたら…。法大練習場で会ったときにこう言っていた。「今は席掃除をしているけど、12年後には日本代表の監督が名前を出すよ」。三嶋の答えはこうだ。「そうですか。プロ入りするつもりですし、そんなことも将来あるでしょう」。

 侍ジャパンの指揮官が名を挙げるほどの男。記者以上に稲葉監督が、右腕の内面の強い意志にほれ込んでいるのかもしれない。(記者コラム・大木 穂高)

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2021年2月10日のニュース