エンゼルス大谷、2年8.9億円で契約合意し調停回避 代理人「公聴会避けたかった」

[ 2021年2月10日 05:30 ]

エンゼルスと2年8億9300万円で合意した大谷。メジャー4年目に向けて不安材料はなくなった
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 エンゼルスは8日(日本時間9日)、大谷翔平投手(26)と2年総額850万ドル(約8億9300万円)で契約合意したと発表した。年俸は今季が300万ドル(約3億1500万円)、来季が550万ドル(約5億7800万円)。19日(同20日)に予定されていた年俸調停を回避し、なぜこの契約に至ったか。メジャー取材歴25年の奥田秀樹通信員(57)が舞台裏に迫った。

 大谷はメジャー3年目を終え、年俸調停の権利を初めて取得した。今季年俸330万ドル(約3億5000万円)を主張。球団提示は250万ドル(約2億6000万円)だった。

 今月上旬、ペリー・ミナシアンGMは19日(日本時間20日)の公聴会突入を明言していた。ところが「1年契約に関しては話し合いは行き詰まったが、複数年契約については話が進んだ」と同GM。契約の大前提が変わった。複数年契約を提案した大谷の代理人、ネズ・バレロ氏は「公聴会はネガティブな空気。少し心配だった。不必要なことで避けたかった」と説明した。

 調停では双方いずれかの希望額を選択する。公聴会ではそれぞれが主張を通すため、選手の人格否定とも取れる主張もしばしば行われる。希少な二刀流の是非論さえ巻き起こる可能性もあった。

 結局、調停回避では珍しい複数年で合意。大谷は2年間は成績に左右されず昇給が約束され、当面プレーに集中できる環境が整った。17日(同18日)のキャンプイン直後に公聴会で時間を取られずに済んだことも大きい。

 エ軍は単年契約の場合、今季の大谷の活躍次第で、来季契約が大幅出費につながる可能性があった。調停交渉に詳しいエコノミストのマット・スワルツ氏は「22年年俸は1000万~1200万ドル(約10億5000万~約12億6000万円)に跳ね上がる可能性もあった」と解説。22年年俸が550万ドルに抑えられ、MVP級の活躍でも翌23年の年俸は最大1500万ドル(約15億8000万円)程度にとどまる。

 FA前年の22年までの2年契約。一般的にFA前年は将来を見据えて長期契約を結ぶか、無償放出を避けるためにトレード候補となるケースが多い。3年以上の契約は、大谷側にとっては安売りになる。エ軍も二刀流での故障リスクを抱える。リスクと将来性の妥協点。同GMが「2年契約は大いに納得がいく」と話した落としどころだった。

 ≪“日本選手初”も回避≫過去、日本選手では野茂英雄(99年メッツ)、大家友和(04年エクスポズ、06年ブルワーズ)、田口壮(07年カージナルス)、大塚晶則(07年レンジャーズ)、田沢純一(14、15年レッドソックス)らが年俸調停を申請。だが、最終的には調停を回避し、公聴会まで至ることなく契約に合意しており、大谷も同様のケースとなった。

 ▽年俸調停 1973年オフに導入。メジャー出場登録が原則3年以上、6年未満の選手に与えられる権利で1、2年目は球団が決めた年俸となるため、交渉で増額する可能性がある。1月中旬に申請日と、選手側と球団側の希望額提出期限(今年は15日)が設定される。調停人による公聴会は今年は2月1~19日(日本時間20日)。調停ではどちらかの希望額を採用することになり、実際は双方で妥協点を探り公聴会に持ち込まれるケースは少ない。

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2021年2月10日のニュース