【阪神新人連載】佐藤輝の祖父孝行 “野球の師”が息子に見た夢、孫がかなえた

[ 2020年12月11日 11:00 ]

牙を研ぐルーキー2020 1位・佐藤輝明内野手(3)

祖父・勲さん(左)と佐藤輝
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 輝明と野球を結び付けたのは、父方の祖父・勲さん(81)だった。父・博信さん(53)が振り返る。

 「(祖父が)小さい頃から教えていました。小学校に上がる前からやっていたと思います。公園に行って野球をやったりとか(宮城に)帰ったときにテニスコートでキャッチボールしたり。うちの親は少年野球から輝明の試合を見に来ていたんで」

 博信さんは元柔道家で88年のチェコ国際や91年の講道館杯86キロ級で優勝した実力者だが、幼少期は白球を追いかけていた。宮城県の村田第2小学校に通っていた1年生の時に、勲さんが初代監督として地域初の少年野球チーム「沼辺少年野球クラブ」を設立。博信さんも1期生として入団し6年時の県大会では投手として宮城県営球場(現楽天生命パーク宮城)のマウンドにも上がった。ただ「野球のセンスがないなと正直思ってしまった」と5年生から始めていた柔道の道に進んだ。

 「オヤジは野球をやらしたかったからすごく残念がっていた。あまり褒められたことはなかったけど、将来は結構いいところまでいくと期待していたみたいで。プロ野球選手を夢見ていたんじゃないですかね」

 祖父が息子に見たプロ野球選手の夢を、孫の輝明がかなえた。少年野球から近大時代まで宮城からたびたび観戦に訪れていた勲さんへの“祖父孝行”に、博信さんは「これ以上ない。一回(息子に)裏切られてのことですから」と目を細め、輝明も「楽しんでくれていると思うんで。良かったですよね」とうなずいた。

 阪神入団を祖父同様に喜んでくれたのが、弟の悠くん(9)だ。阪神のファンクラブに入っており藤浪や梅野の応援タオルを持つ大の虎党。母・晶子さん(48)は2人の関係を「(悠が)生まれたときからずっとかわいがっていて。出かけていても手をつないだり、肩車したり。どっちかというと小さいお父さんみたい」と表現して笑う。

 ここまで応援してくれた祖父母、両親、2人の弟へ、まずはプロ入りという形で最初の恩返しを果たした。「応援してくれていると思うんで。頑張りたいですね」。新たなステージで、さらなる活躍を誓う輝明だったが、高校入学時に将来を左右する一つの決断があった。 (阪井 日向)

 ◆佐藤 輝明(さとう・てるあき)1999年(平11)3月13日生まれ、兵庫県出身の21歳。甲陵中では軟式野球部に所属。仁川学院では高校通算20本塁打で甲子園出場はなし。近大では1年春からリーグ戦に出場し、通算14本塁打は新リーグ(82年創設)記録。1メートル87、94キロ。右投げ左打ち。

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