3A球場での開催 手狭感否めずもメジャー仕様に…伝ってきた受け入れ側の熱意

[ 2020年8月21日 09:00 ]

セーレン・フィールドの記者席に用意された消毒液と除菌用のウェットティッシュ(撮影・杉浦大介通信員)
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 もう15年以上もメジャーリーグを見てきた筆者にとっても、8月14~16日に行われたブルージェイズ―レイズ戦の取材は新鮮なものだった。ブ軍はトロントでの試合開催をコロナ禍の検疫問題でカナダ政府から認められなかったため、今季はニューヨーク州バファローにある傘下3Aの球場、セーレン・フィールドが本拠地となることが決定。突貫工事で11日の「ホーム開幕戦」開催にこぎつけ、レイズとの3連戦も同球場で行われたのだ。

 やはりマイナーの球場とあって、施設全体が手狭な感は否めなかった。従来通りの形ではクラブハウスでソーシャルディスタンスを取ることが不可能ということで、一、三塁側両方のロッカールームをブ軍が使用。レ軍のクラブハウスは右中間のフェンス後方にある巨大なテントの中に設置され、試合後は筒香を含む選手たちがフィールドをゆっくり歩いて帰路に着くという、のどかな光景が見られた。

 15日の試合は激しい雷雨で中断し、約2時間後にサスペンデットゲームとなった。この中断中、行き場をなくしたレ軍の選手たちは、球場のコンコースとスイートルームをうろうろ。ケビン・キャッシュ監督は「グラノーラ(シリアル)バーがたくさんあって良かったよ」などと明るく話していたが、正直、世界最高峰のリーグであるMLBの試合が開催されている雰囲気ではなかった。

 「1年間まだこちらでプレーしたこともないですし、全てが初めてですので、(マイナーの球場でも)不思議な感覚はなかったです」

 メジャー1年目の筒香に聞くとそんな答えが返ってきたが、ベテラン選手たちはそうは思わなかったのではないか。

 もっとも、施設は豪華とは言えなくとも、受け入れる側の熱意が確実に感じられたことは付け加えておきたい。球場の至るところにブルージェイズカラーの青のカバーが掛けられ、少しでもメジャーのホームらしく見せる努力はなされていた。記者席の一つ一つのテーブルに消毒液と除菌用のウェットティッシュが置かれ、対策は万全。スナック、飲み物が設置された記者エリアも広々としており、少なくともニューヨークの2つの球場(ヤンキースタジアム、シティフィールド)よりも過ごしやすかった。

 球場で働く数少ないスタッフも懇切丁寧。取材パスの受け渡しからスタジアム内の動き方、さらには近所の食事の調達先まで、こちらがストレスを感じないように案内してくれたことが印象的だった。そんな姿からは、あくまで臨時とはいえ、メジャーリーグの本拠地となった喜びは確実に伝わってきた。

 新型コロナウイルスの影響をまともに受けた今季、MLBには永く語り継がれるであろう様々な変化がもたらされている。「ダブルヘッダーは7回制」「延長は無死二塁から」といったルール採用とともに、「3A球場でのシーズン開催」も象徴的な事実として記憶されていくに違いない。そんな場所での記憶を振り返ったとき、急ごしらえの施設よりも、個人的には、地元の人々の熱意の方を真っ先に思い出すことができそうなのが少し嬉しくもある。(記者コラム・杉浦 大介通信員)

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2020年8月21日のニュース