明徳、16大会連続初戦突破“代打の神様”田中がトドメ3ラン

[ 2014年8月16日 05:30 ]

<明徳義塾・智弁学園>7回2死一、三塁、明徳義塾・代打田中が左越え3点本塁打を放つ

第96回全国高校野球選手権1回戦 明徳義塾10―4智弁学園

(8月15日 甲子園)
 代打男が甲子園でも打った。明徳義塾(高知)の田中秀政捕手(3年)が智弁学園(奈良)との1回戦で代打で登場し、試合を決定付ける左越え3ランを放った。高知大会でも全て代打出場の職人の活躍で、チームは10―4で勝利。出場16大会連続で初戦突破を果たした。第9日の2回戦では大阪桐蔭と大会史上初の3年連続対決に臨む。

 ここが勝負!とばかりに、絶妙のタイミングで馬淵史郎監督が1枚のカードを切った。1点を加え5―3とした直後の7回2死一、三塁、満を持して送り込まれたのは背番号11の「代打の切り札」田中だった。

 初球。田中は智弁学園の2番手、浦中の初球をフルスイング。打球はゆっくりと左翼席に消えた。夏では史上13本目の代打アーチは勝利を決定付ける値千金の3ラン。田中は「凄くうれしい。打った瞬間、入ったと思った」と拳を突き上げた。

 チームにとっては貴重な「代打の神様」も、8強入りした今春のセンバツではメンバーから外れていた。佐藤洋部長が「打撃はチームで1番」と断言するも、課題は守備。本来は捕手だが、ワンバウンドが捕れず肩も弱いという。転機は4月下旬、指揮官に「打つことに専念しろ」とアドバイスされ、田中の人生が変わった。

 守備練習は免除。チームメートがノックを受けている最中も、ひたすらティー打撃を繰り返した。さらに集中力を高めるために西岡から、ユニークな調整法も教わった。トス打撃のように、バドミントン用シャトル(羽根)を投げてもらって打つ。風や空気抵抗もあって予測がつきにくいシャトルを芯で捉えることを繰り返し、変化球への対応が飛躍的にアップした。高知大会では決勝で逆転の2点適時打を放つなど代打のみで4打数3安打1本塁打、7打点。この日も「浦中君はチェンジアップが多い。必ずそれでくる」と狙い通りのボールを、一振りで仕留め「シャトルのおかげです」と胸を張った。

 田中の一発が決め手となり、岡本ら強打者をそろえる智弁学園に16安打10得点で打ち勝った。馬淵監督も「(田中の起用は)あそこしかないと思った。ムチャクチャ大きい3ラン」と振り返り、今後の起用についても「最高の場面で」と不敵な笑みを浮かべた。ここ一番で頼れる「仕事人」。この日の勝利が甲子園通算45勝目となった名将が最高の「ピース」を手に入れた。 

 ◆田中 秀政(たなか・ひでまさ)1996年(平8)10月4日、滋賀県東近江市生まれの17歳。小1で長峰少年野球クラブで野球を始め、捕手と投手。朝桜中時代はびわこクラブ(軟式)で捕手。明徳義塾では2年秋に背番号18でベンチ入り。今春のセンバツではベンチから外れ、春季大会から再び背番号11でベンチ入り。1メートル78、83キロ。右投げ右打ち。

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