NTT西日本・徳丸天晴の迷いのないフルスイング 悔しい経験が成長を加速させた

[ 2022年9月29日 09:00 ]

入社1年目から公式戦出場を果たしているNTT西日本・徳丸(NTT西日本提供)
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 一夏の悔しい経験が、成長を加速させた。10大会連続23度目の社会人野球日本選手権出場を決めたNTT西日本。近畿地区屈指の強豪にあって、三塁の定位置をつかみつつあるのが入社1年目の徳丸天晴内野手だ。

 「結果よりも、自分がやるべきことを考えて、自分のスイングをする。予選で感じ取ったことを踏まえて、本戦までに打撃の引き出しをたくさんつくっておきたい。予選は出場できましたが、そのまま本戦に出られるとは思っていません」

 9月4日に誕生日を迎えた19歳。その横顔にはあどけなさも残るが、言葉の端々から野球にかける熱い思いが伝わってきた。

 「悔しかった。試合に負けたとき、次の選手権ではスタメンを取れるようにと。スタンドで感じた悔しい気持ちを持ったまま、ぶれずにやることができました」

 今夏の都市対抗。JR東日本東北との初戦は、スタンドから敗戦を見つめることしかできなかった。名門・智弁和歌山でも1年夏から4番。高校通算42本塁打をマークし、3年夏には全国制覇を成し遂げた。誰もがうらやむエリート街道を歩んできた右のスラッガーにとって、初めて味わうベンチ外の屈辱。だが、その事実を正面から受け止めることができたのは、ゆるぎない決意があるからだ。

 高卒でプロ入りする選択肢もある中、自らの意思でNTT西日本を選んだ。

 「自分で“これだ!”と思えるものを、確立させたい」

 NPB経験者でもある中谷仁監督からの助言も大きかった。スカウトも務める赤嶺慎コーチからは、熱心に試合や練習を見てもらっていた。同社には存分に野球に打ち込める環境もある。その上で追い風となったのが、都市対抗の本戦終了後から実戦的なメニューが増えたことだった。徳丸は言う。

 「ピッチャーの生きた球を見る機会が増えたことが、自分にとっては大きかった。いま、一番大切にしているのは打てるポイントを広くすることです」

 入社当初は苦しんだストレートの速さと強さ、切れ味鋭い変化球、抜群の制球力…。投手と打者が真剣勝負する通称“1カ所バッティング”を繰り返すことで、実戦での対応力に磨きをかけることができた。自身の打撃でも<1>左肩が入りすぎない<2>早めの始動<3>軸足である右足の強さ<4>踏み込む際の左足の使い方など、チェック項目を細かく設定。河本泰浩監督からは「内側からバットを出して、バットの面を広く使う」と指導され、センターから逆方向への強い打球を徹底した。

 地道な取り組みが結実し、今秋の近畿最終予選は3試合とも「6番・三塁」でスタメン起用された。8打数1安打に終わったが、新戦力の台頭は打線のアクセントになった。河本監督はその将来性に光を見る。

 「吸収力がある。まだまだこれからとはいえ、将来的には中心を打ってくれるような選手。変化球への対応力もあって、日々成長している。ならば経験を積ませた方が良いという判断です」

 智弁和歌山時代の右翼から三塁へ転向させたのも、確固たる理由がある。「俊敏な動きを経験した方が体のキレも出る。グラウンド内のいろんな声を聞ける方が成長につながりますから」。元来、スローイングは強く、正確。打球捕を数多くこなしたことで、守備も安定感を増してきた。

 「1試合で1本でも長打を打って、チームを勝たせたい。失敗をおそれずに、どんどん攻める気持ちでいきます」

 NTT西日本の象徴でもある、迷いのないフルスイング。若きスラッガーは臆することなく、晴れ舞台で真価を発揮する。

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2022年9月29日のニュース