森組織委会長辞任…泣きのお願い、川淵氏が後任決定的「人生最後の大役」

[ 2021年2月12日 05:30 ]

自宅前で報道陣の質問に答える川淵三郎氏(撮影・河野 光希)
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 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)が辞意を固めたことが11日、明らかになった。今月3日の女性蔑視発言に非難が集中していた。後任には元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)の就任が決定的。12日に評議員、理事を集めた組織委の合同懇談会で森会長が辞任を正式に表明し、開幕まで半年を切った祭典開催へ舵(かじ)取り役が代わることになる。

 川淵氏はこの日午後、都内で森会長と約1時間話し合いを行った。終了後、千葉市内で報道陣の取材に応じ「森さんが“ぜひ後を引き継いでほしい”と。推薦をするという意味だな」と後任の会長就任を直接要請されたことを明かした。

 正式決定前のため言葉を選びながらも「前向きにならざるを得ない。もし選ばれれば僕の人生の最後の大役ということで、ベストを尽くしたい」と受諾する意向を示した。

 前日、組織委員会関係者から連絡が入り、森会長との会談が設定された。その席で会長就任を打診されることを想定し、家族に打ち明けたが「みんな反対だった」。自身も断るつもりで会談に臨んだ。しかし、森会長が家族の前で泣いた話などを伝え聞き、もらい泣き。「外堀を埋められていた感じで“勘弁してくれ”とはとても言えない状況だった」と受け入れた。

 森会長とは同じ早大出身で距離も近い。選手村村長を引き受けたのも森会長に説得されたからだ。「残りわずかで退任されるのは残念だと思う。森さんの成果を横取りするのは嫌。陰の人として最後の成功に努力できればいい」と気遣い、退任後は自身の相談役として政財界とのパイプ役を託す方向だ。

 川淵氏は“既成概念”を打破し、サッカーやバスケットボール界を救ってきた実績がある。ただし、東京大会は目に見えないコロナ禍という難題が待ち受けている。現状では開催さえ見通せないため「感染状況を悪化させずに開催できたら成功と言える。どういう施策が必要かは五輪開催の一番の問題」とまずは感染対策に目を向ける。

 「Jリーグ、プロ野球もお客さんを入れて特に問題ない。問題がないのに、なぜ無観客でやらなければいけないのか」と有観客開催には前向きで、国内の観客に限定する可能性にも言及するなど早くも川淵色を打ち出したが、五輪開幕まで半年を切り、残された時間は少ない。また、森氏の83歳に対し、川淵氏84歳。ある団体の幹部は「若い人を据えるくらいの改革をやってもよかったと思うが、日本では難しいだろうな」と話したように、周囲の反応も含めて難しい舵取りが予想される。

 ◆川淵 三郎(かわぶち・さぶろう)1936年(昭11)12月3日生まれ、大阪府出身の84歳。中学時代は野球部。大阪府立三国丘高でサッカー部に入部。早大在学中の58年日本代表に初選出。卒業後は古河電工でプレー。64年東京五輪に出場。70年に現役引退後は古河電工監督、日本代表監督を務めた。その後、Jリーグチェアマン、日本サッカー協会会長、日本バスケットボール協会会長などを歴任。現在は日本サッカー協会相談役、日本トップリーグ連携機構会長などを務める。

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