お上の「無責任体質」改めない限り五輪開催への道は険しい

[ 2021年2月12日 08:15 ]

東京五輪・パラリンピック組織委員会 森喜朗会長辞任 後任に川淵三郎氏決定的

自宅前で報道陣の質問に答える川淵三郎氏(撮影・河野 光希)
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 東京五輪開幕まで162日となった11日に判明した、組織委員会トップの交代。新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)され、1年延期という史上初の事態に直面してきた祭典は、川淵体制でどうなっていくのか?スポニチ本紙の藤山健二編集委員(61)が独自の目線で分析した。

 森会長が“女性蔑視”も同然の発言をした時、私は本紙で「致命的な失態だ」と書いた。IOC自身が14年に策定した「アジェンダ2020」の最優先事項である「男女平等」を、こともあろうに組織委のトップが否定してしまったのだから、どう取り繕っても辞任は不可避だった。

 開幕まで5カ月しかないこの時期に、後任として外部の人材を登用するのはリスクが大きい。失地回復のためにはクリーンなイメージを持ち、内部の人間としてこれまでの流れを把握し、国際的にも知名度があって交渉術にもたけている人物でなければならない。その条件を全て満たしたのが川淵氏だった。

 少なくともこれで国内世論の改善は期待できる。だが、それで五輪を取り巻く厳しい状況も変わるのかと言えば、答えは「NO」だ。今夏に予定通りに五輪を開催するのか否か。新会長はまずタイムリミットとなる3月25日の聖火リレースタートまでに、最も重大な決断を下さなくてはならない。

 暫定的に会長代行を立てるのではなく、実績十分な川淵氏を選んだということは政府も都も組織委も、何が何でも五輪を開催する決意を固めたとみていい。だが、見えないウイルスを相手に「安心安全」な対策などあるはずもなく、国民の五輪離れをV字回復させるのは、いかに百戦錬磨の川淵氏でも容易なことではないだろう。

 今一番大事なのは日本中の「団結」だが、森氏の進退が取り沙汰される最中、菅首相も小池都知事も「組織委が決めること」の一点張りで“部外者”を貫いた。森会長の就任が決まったのは14年1月。決めたのは当時の下村博文五輪相とJOCの竹田恒和会長、そして東京都の秋山俊行副知事の3人。つまり国と都、JOCの3者が森氏を選んだ任命権者であるにもかかわらず、いざとなると誰もが知らん顔を決め込んだ。組織委も含めてこの「無責任体質」を改善しない限り、誰がトップになっても五輪開催への道は険しいと言わざるを得ない。

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2021年2月12日のニュース