【世界のアスリート】著名な兄と間違えられ…優勝会見途中で打ち切り

[ 2016年8月15日 13:13 ]

男子円盤投げで優勝したクリストフ・ハルティング(AP)

リオデジャネイロ五輪 男子円盤投げ

(8月13日)
 うっかり記者が「ロベルト」と口を滑らせたために公式会見は途中で打ち切られた。「兄と違って僕は皆さんを喜ばせるようなことは言わない。自分が愛する人間に祝ってもらえれば十分」。陸上男子円盤投げ決勝。最終6投目に自己新記録の68メートル37をマークし、逆転で金メダルを獲得したドイツのクリストフ・ハルティング(26=ドイツ)は足早に会見場から姿を消した。

 ロベルトは5歳年上の兄。ロンドン五輪のこの種目の金メダリストであり、世界選手権で3度優勝している実力者だ。しかし今大会では予選落ち。宿舎のベッドで足で照明のスイッチを消そうとして腰を痛め、納得のいく結果は出なかった。

 ハルティングといえばロベルト。記者が間違えるのも無理はない。しかし優勝したあとユニホームを切り裂いて吠えるパフォーマンスで有名だったド派手な兄と違って弟は内向的。「ここにいるだけで苦痛だ」と、名前を間違えられた金メダリストは居心地の悪い場所に長居はしなかった。

 身長は兄より6センチも高い2メートル7。多くのカメラマンは兄を超える?ワイルドなパフォーマンスを期待したはずだ。ところがクリストフは観客に対して日本人がするようなおじぎをしただけ。兄弟による同一種目の五輪連覇という偉業は、全く異なる形で写真に収められた。

 主要大会では未勝利。兄と比べられる日々が続き、心が屈折していったのかもしれない。しかし嫌悪感を抱かせる選手ではない。競技前の選手紹介ではBGMのサンバに合わせてステップを踏んでいた巨漢のアスリート。「何も考えなかった」という6投目は“ハルティング家”に予想もしなかった2個目の金メダルをもたらした。

 ▼クリストフ・ハルティング 1990年4月10日、ドイツ東部コトブス出身の26歳。世界選手権には2度出場したが、13位と8位。今年の欧州選手権では4位だった。五輪前までの自己ベストは67メートル93。2メートル7、123キロ。

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