【佐藤信人の目】おもしろい五輪用新設コース ホールごとに個性あり

[ 2016年8月15日 17:44 ]

 ローズとステンソンの金メダル争いは非常におもしろかった。良いショットの応酬だったし、バックナインは毎ホールのようにスコアが動いて、目が離せない展開だった。勝負を分けたのは18番の第3打。6メートルほどを残したステンソンに対し、ローズがタップインの距離に寄せて決着を付けた。ともにティーショットはフェアウエーの右サイドぎりぎりに止まった。第2打は2人ともグリーン手前に刻んだが、ローズの方がピンに対してアングルが良い左サイドに打ってきた。寄せる確率が高い位置に置いた第2打のマネジメントが大きなポイントになった。

 片山は66をマークして有終の美を飾った。取りこぼしもあったが、ショットが冴えていたし何度も良いパットを決めた。最終日は風がほとんどなかった。風が吹けば日本のゴルフ場でも難易度は上がる。しかし、このコースは風が吹くと、通常の何倍もいろんなことを考えさせられるし難易度が格段に変わる。3日目までは海外経験の豊富な片山でもさすがに対応に苦労していた。風がやんだことでようやく力を発揮できたのだと思う。

 池田は途中で5位まで順位を上げてメダル獲得の期待を抱かせた。後半に3つボギーが出たが、10番までは素晴らしいプレーだった。4日間通してショットは良かった。パットがもう少し入っていればという無念さもあるだろうし、初日の出遅れももったいなかった。この経験を4年後の東京五輪につなげてほしい。

 男子の競技が終わっただけだが、五輪のゴルフはここまでは成功と言える。最終日は1万人を超える大観衆が詰めかけて盛り上がった。また五輪用に新設されたコースはホールごとに個性があり見ていてもおもしろい。風向きや風の強さが変わると、前日は関係なかったバンカーが効いてきたりとレイアウトにも工夫が感じられた。

 そしてリオに来て感じるのは五輪という大会の凄さ。一言で言うなら熱だ。選手は4年に1回の試合で命がけで最高のパフォーマンスを出そうとしている。ゴルファーはジカ熱や治安を懸念して辞退者が出たが、他競技のアスリートはここで戦争が起きていても来るのではないかというくらいの熱を感じるのだ。

 ゴルファーたちもその熱を肌で感じていたはずだ。最終日のステンソンは「OK」の距離のパットを何度も仕切り直ししたり、メジャーの時よりもナーバスになっていた。五輪でしか手にできないメダルの存在がそうさせていたのだろう。メジャーとはまた違う雰囲気、緊張感、重みを持った魅力的なイベントがゴルフ界に誕生した。 (プロゴルファー)

 ◆佐藤 信人(さとう・のぶひと)1970(昭45)3月12日、千葉県生まれの46歳。ネバダ州立大卒。93年プロ転向。国内ツアーでメジャー3勝を含む通算9勝。欧州ツアーに参戦するなど海外経験も豊富。今年3月に日本ゴルフツアー機構(JGTO)理事に就任。1メートル79、75キロ。

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