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【コラム】金子達仁

中国戦、頭痛を覚えるくらい低調 下手くそが運転するマニュアル車のよう

[ 2022年1月28日 14:00 ]

W杯アジア最終予選<日本・中国>後半、得点しイレブンと喜ぶ伊東(中央) (撮影・光山 貴大)
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 こんな試合を見せられてしまうと、今更ながらに組み合わせの妙に感謝するしかない。

 この日の相手が、中国で良かった。

 前回の対戦で何もしてこなかった中国は、この日も何もしてこなかった。オーストラリアと引き分けたことからもわかるように、日本戦以外の彼らは、案外勇敢なところを見せていただけに、正直、またしても呆気(あっけ)にとられてしまった。

 だから、勝てた。

 コロナ禍の影響で予定されていたテストマッチは流れてしまった。国内組がオフに入っている上に、主軸に故障が出てしまった。滑らかな連動性を期待するのは難しいだろうなと覚悟はしていたが、日本の出来は片頭痛を覚えるぐらいに低調だった。

 何しろ、5メートル程度のパスがズレまくっていたのだ。Aという選手の考える最善手は、Bという選手の考える最善手ではない、という場面を何度見せられたことか。スムーズにパスが回らないサッカーを「各駅停車」と表現することがあるが、この日の日本代表は下手くそが運転するマニュアル車のようだった。

 そんな日本が曲がりなりにも勝ち点3を奪うことはできたのは、まず相手が中国だったこと、そして伊東のクロスが相手の手に当たったことが大きかった。つまり、日程と幸運と伊東が、勝因の3大要素だった。

 もし、この日の相手が中国ではなくサウジだったら――。

 ともあれ、もっとも難しい状況での試合は、もっとも簡単な相手と戦ったことでクリアすることができた。では、この勝利によって日本が得たものは何か。絶対条件だった勝ち点3以外の収穫はあったのか。

 初めて代表の最終ラインを任された2人は経験値をプラスすることができた。いくら相手が何もしてこなかったとはいえ、代表戦で90分集中を切らさずにいるのは簡単なことではない。そして、その簡単ではないことを、彼らはやってのけた。これは好材料だ。

 PKを獲得し、自らもゴールを決めた伊東も、自信を深めたことだろう。当然、サウジも大いに警戒してくるだろうが、その分、他が間違いなく疎(おろそ)かになる。これまた、悪いことではない。

 だが、それ以外のプラスが、わたしにはどうしても思いつかない。

 なぜこんなにひどい日本代表になってしまったのか。原因は、初戦でオマーンに敗れたことにあった。あの敗戦で、日本は余裕と自信を打ち砕かれ、それまでできていたこともできなくなってしまった。

 では、陥ってしまった苦境から脱するために必要なものは何か。わたしは、時間と自信だと思っていた。時間の経過で傷を癒やし、新たな、そして会心の勝利をつかむことで得る新しい自信が、日本を立て直してくれるものだと信じてきた。

 この2―0は、サウジに勝たなければならない日本選手の新しい自信になっただろうか。

 外部からチームを眺める人間としては、「なった」と感じている選手が多数であることを祈るしかない。そもそも、チームとして新たな自信を掴(つか)みに行ったように見えなかったのも、単なる気のせいだと思いたい。

 いずれにせよ、来週の火曜日は、日本サッカーにとって21世紀最大の決戦となる。個人的には、出場機会の少ない選手の飢えに期待したいと思っている。(金子達仁氏=スポーツライター)

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