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【槙野智章観戦記】足速いFWがプレスかけ続ける…主流のスタイルになるかも

[ 2022年12月3日 05:10 ]

FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会1次リーグE組   日本2-1スペイン ( 2022年12月2日    ハリファ国際スタジアム )

<日本・スペイン>後半、シモンにプレスをかける前田(右)(撮影・西海健太郎)
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 【槙野智章 ピッチサイド】最高の気分ですね。ハリファ国際競技場には日本のサポーターが多く、最後はみんな祈っている感じでした。選手に体力を分けてあげたいと心から思いました。勝利の瞬間は選手の輪の中に飛び込みたくなりました。

 試合前日、スペインの練習を見たのですが、日本と対照的でびっくりしました。日本はウオームアップ時には笑顔も見られるけど、緊張感がありました。一方のスペインは終始笑顔で、ハイタッチやハグをして和気あいあい。スペインの文化なのでしょう。だからこそサッカーを楽しむことができるんですね。

 スペインは序盤からボールを保持しました。ただ日本も慌てる感じはなく選手の表情からは自信がうかがえました。やはりサッカーはメンタルのスポーツ。ボールを持たれても、持たせているという意識で、相手が危険な地域に入ってきた時には強く行くという守備ができていました。大会を通してチーム力も個人能力も上がっているなと感じました。

 日本の得点はプレスから生まれたもの。前田選手はめちゃくちゃ走っていました。スプリント強度も高く、森保監督がやりたいサッカーを体現しています。ドイツ、スペインに勝てたのも献身的な走りがあったからです。前線に大柄な選手を置きボールをキープさせる戦い方が王道だけど、足が速くてチェイシングができて攻撃時にDFの裏に飛び出していく前田選手のようなFWを置く。途中から出る選手も同じタイプで相手にプレスをかけ続ける。これが日本の主流のスタイルになるかもしれないですね。

 コスタリカ戦は悔しい負け方だったけど、あの敗戦があったからスペインに勝てたのだと思います。敗戦から学ぶことはたくさんある。東京五輪でスペインに負けた選手がこの試合でもピッチに立ちました。年代は違うけど、同じ国際舞台で同じ相手に負けることは受け入れたくない。五輪の悔しさが力になったのだと思うのです。

 森保監督は終了間際に「ドーハの悲劇」を思い出したと話していました。29年前から時間が進んでいなかったんですね。過去の失敗や敗戦が記憶から完全に消えることはないけど、ようやくアップデートされて前に進めるのかなと思います。

 2大会連続の決勝トーナメント進出です。ロシア大会の開幕前、西野監督(当時)は僕ら選手に「サッカーを楽しんでくれ。積極的なプレーをしてくれ」と2つのことを求めました。でも決勝トーナメント1回戦で負けた時、後悔している選手がたくさんいました。あの時なぜ前に出なかったのだろうとか、なぜ下がったんだろうとか。積極的なミスなら次につながるし、後悔しないはずです。クロアチア戦では積極的に、楽しんでプレーしてほしいと思います。(W杯ロシア大会日本代表、神戸DF)

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2022年12月3日のニュース