新たな「金田一耕助」つくりあげた古谷一行さん 推理に行き詰まると「逆立ち」

[ 2022年9月3日 05:00 ]

79年、「金田一耕助の冒険」の撮影の合間、台本を手にした金田一耕助役の・古谷一行さんと松田美由紀がロケに臨む
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 ドラマ「横溝正史シリーズ」の金田一耕助役や「金曜日の妻たちへ」などで人気を博した俳優の古谷一行(ふるや・いっこう、本名かずゆき)さんが8月23日に死去した。78歳。東京都出身。葬儀・告別式は親族のみで済ませた。

 デビュー当初はスーツが似合う二枚目俳優として活躍した古谷さん。出演作品は恋愛ドラマが中心。色気ある低音の声も相まって、若い女性や主婦層から人気を集めた。

 そのイメージを一変させたのが、33歳の時に出合った名探偵・金田一耕助。77年開始のTBS系「横溝正史シリーズ」だった。古びた着物やボロいはかまで、ボサボサの髪の毛をかきむしる。「精神を解放する男を演じるのは無理」と自信もなかったが、数を重ねるにつれて「“俺の金田一”と思えるようになった」と話していた。

 推理に行き詰まると「逆立ち」するという、新たな金田一像をつくり上げた。げたを履いて全力で走り、いびきをかいて寝るなど自由奔放で、とぼけた一面もある。この明るさがお茶の間で受け、撮影所前に“出待ち”の女子高生が集まるほどだった。金田一役はシリーズが終了する2005年まで、29年にわたって演じた。

 ミステリーと並んで、不倫ドラマでも欠かせない俳優だった。TBSの「金曜日の妻たちへ」、日本テレビの「失楽園」に出演。「不倫男を演じると右に出る者はいない」と言われた。プライベートでも温厚そうに見えて「マメで情熱的でよくモテた」(テレビ局関係者)という。

 テレビ朝日「混浴露天風呂連続殺人」シリーズも25年間放送されるなど、出演作品が次々に長期にわたりシリーズ化。同作では毎回、女性と露天風呂に入るという役で「この仕事が入ると心が休まる」と楽しんでいた。

 出演作のシリーズ化は、共演者、スタッフ、視聴者の誰からも愛された証拠。関係者は「とにかく真面目。一作ごとに集中して取り組む役者さんでした」と振り返った。

 役者の仕事に対しても、趣味に対しても、とにかく凝り性な性格だった。私生活ではテニスやゴルフといったスポーツが趣味。40代でテニスは週5回、ゴルフは50歳時に年間100ラウンド超とアクティブだった。

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