「半沢直樹」堺雅人“受けの芝居”も卓越 香川照之&猿之助ら敵役際立ち 圧倒的な脚本解釈力&現場対応力

[ 2020年8月9日 08:30 ]

日曜劇場「半沢直樹」第4話。絶体絶命の半沢(堺雅人)(C)TBS
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 俳優の堺雅人(46)が主演を務めるTBS日曜劇場「半沢直樹」(日曜後9・00)の7年ぶり続編は9日、15分拡大スペシャルで第4話。序盤最大のクライマックスを迎える。俳優の香川照之(54)や歌舞伎俳優の市川猿之助(44)ら敵役の“顔芸”が毎週、反響を呼んでいるが、それも大黒柱・堺の揺るぎない存在と“受けの芝居”があるからこそ。ドラマを牽引する堺の演技の凄さや魅力を探った。

 前作はベストセラー作家・池井戸潤氏(57)の「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」が原作。2013年7月期に放送され、東京中央銀行のバンカー・半沢(堺)が行内の数々の不正を暴く逆転劇を痛快に描き、視聴者の心をわしづかみにした。最終回の平均視聴率は平成ドラマ1位となる42・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークし、社会現象に。決め台詞の「倍返し」は新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた。

 新シリーズは「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」が原作。半沢は大和田常務(香川)の不正を暴き“倍返し”したものの、子会社の東京セントラル証券へ出向。営業企画部長として赴任後、半沢に巻き起こる事件を描く。前半は株式取得に1500億円以上かかる大手IT企業による敵対的買収をめぐり、半沢が東京中央銀行と対立。後半は航空会社の経営再建をめぐるストーリーとなる。

 半沢という役について、堺は今回、スポニチ本紙のインタビューにこう語っている。

 「半沢は遊べない役なんですよ。技はそんなに持ってない。パンチとしてはストレートしかなくて、それをずっと繰り出している。周りの方々がクセ者ぞろいなので、クセはいくらでもつけてくれる。自分は前に真っすぐ進むということしか考えてないですね」

 言ってみれば、その“真っすぐさ”を堺が体現しているからこそ、ヒール役が一層、引き立つ。半沢が宿敵・大和田(香川)や新しい敵・伊佐山(猿之助)、因縁の相手・黒崎(片岡愛之助)らに攻め込まれ、窮地に立たされる時の堺の“受けの芝居”が見事だからこそ、逆襲の痛快さが何倍にもなる。

 もちろん半沢には行動力があり、そういうシーンは堺が主役らしく前に出る“攻めの芝居”に転じる。半沢の部下・森山を熱演している賀来賢人(31)をはじめ、多くの役者が「堺さんに引っ張られている」と口にしているが、当の本人は「引っ張っている実感はないです。半沢は真っすぐしかないので、引っ張るも何もない。皆さんには好き勝手やってほしい」。決め台詞「倍返し」についても「“倍返し”は相手ありきのこと。もらわないと返せない。そういう意味では演技の応酬なんです」。周囲が自由に演じてくれれば、あとは自分が受け止め、鏡のように反射する――。8日、TBS「王様のブランチ」(土曜前9・30)に生出演し、猿之助とともに第4話をPRした香川は「堺さんは(自分たちの演技に)リアクションができない(ことがある)から。グッと(耐えて)いるしかないから。つらいお立場だと思いますが、あとちょっと耐えてください」と堺の“受けの芝居”に言及した。

 堺は16年のNHK大河ドラマ「真田丸」に主演。戦国武将・真田幸村(信繁)を冷静にして熱く演じた。幸村最大の敵・徳川家康を力演した俳優の内野聖陽(51)は「受け芝居の名手」と座長を評した。

 内野や豊臣秀吉役の小日向文世(66)らとのシーンは堺が“受けの芝居”に回ることが多く、主役らしく“前に出る”ようになるのは、終盤「大坂の陣編」(第42回~最終回・第50回)から。07年の大河「風林火山」に主演した経験からも、内野は「歴代の大河の中でも(真田幸村は)一番“受けの芝居”が要求された主役だったのでは。それも凄い。普通、主役だと『オレがやらなくちゃ!』と思うものですが、彼にはそういう部分がなく、むしろ相手の人が喜んでいるのを見てニコニコしているような人。“受け芝居の名手”だなと。その感覚機能の多さ。彼は稀有な役者さんだなと思いました」と絶賛。これは「半沢直樹」に通じる部分があるように感じた。

 「真田丸」の撮影は1年2カ月に渡り、何度か堺にインタビューする機会に恵まれた。三谷幸喜氏(59)の脚本やキャラクターに対する堺の深く鋭い理解、その洞察力には何度も驚かされた。

 人質として秀吉に仕える「大坂編」(第14回~第31回)を「コネ入社の楽しいサラリーマン生活」と例えたかと思えば、「大坂の陣編」は「市役所の課長さんクラスがこんな感じなのかなと。任された現場でトラブルや非常事態が起きて、上との連絡が途絶え、その時に現場の最高責任者として決断するという状況が一番近いと思いましたね」と表現。第45回「完封」で徳川の大軍と対峙し「我こそは真田左衛門佐幸村!」と自らの名を轟かす場面も、堺が意識したのは実務者としての顔。「自分の名前を名乗るというよりは『何とか警察の何とかです。止まりなさい』『何とか市役所土木課です。そこの車両止まってください』みたいな実務指示ですね。名乗って、そこに止まらせるというような気持ちで演じていました」と実に分かりやすく明かした。

 (※以下、ネタバレ有)

 圧巻だったのは、最終回のラストシーンの解釈。大坂夏の陣(慶長20年、1615年)、家康(内野)を仕留め損ね、安居神社に逃れた幸村(堺)だったが、追手の徳川兵に囲まれ「ここまでのようだな」と自害を決意。佐助(藤井隆)に刀を手渡す…。

 「美学として死ぬというよりは、相手に首を取られると、それだけ相手の作戦が立てやすく、実行しやすくなります。幸村が死んだと分かれば、徳川は幸村に割く兵力を削減できるので。相手に首を取られるというのは作戦上、よくないわけです。自分の首を取って逃げる佐助の体力の温存具合を見計らいながら、どうやらここがギリギリだから、ここまで来たら佐助に首を取って逃げてもらった方が作戦上よろしかろうという非常に現実的な選択だと思うんです。幸村の生死を曖昧にした方が、豊臣にとっては戦略的に有効なわけで。だから『ここまでのようだな』というのは決して美学として言っているわけではなく、最後の最後まで職務をあきらめず、最後の最後まで職務を全うしたセリフだと思うんです」

 しかし、単なる“頭でっかち”とは違う。「真田丸」のチーフ演出を担当した木村隆文氏は「理と情のバランスが素晴らしい人。堺さんはいったん頭で役を構築した上で、自分の作り上げたプランと違う芝居を相手の役者さんがしたり、違うオーダーを演出家がしたりしても、そこに柔軟に対応してくださる。凄いと思います。実際に現場に立って初めて湧く感情もあるわけで、それもその場その場で軌道修正するといいますかね、決して頭で考えたことだけに固執しない、本当に柔軟な方だと感心しました。主役の膨大なセリフも全部、事前に入っているんだと思います。待ち時間も、あまり楽屋に戻らず(スタジオ前の)前室にいることが多く、モニターで共演者の方の演技を見て『いい芝居するなぁ』と笑って、みんなと雑談したり。作品全体や共演者のことを考えた振る舞いは、座長として素晴らしかったです」と“現場対応力”も称えた。

 圧倒的な解釈力と洞察力をベースに生まれ、現場において進化を遂げる堺の緻密な演技。今回は大和田に「お・し・ま・いDEATH!」を食らった時や黒崎が襲来した時など、一瞬の顔の歪みも印象的だった。7日放送のTBS「ぴったんこカン・カン」(金曜後8・00)にゲスト出演した香川が「伝説になる可能性があります」と手応えを示した今夜の第4話。大和田や伊佐山らへの半沢の「倍返し」は――。逆襲に出る堺の“攻めの芝居”にも酔いしれたい。(記者コラム)

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