「なつぞら」スピンオフ見どころ 雪月メインに“伏線回収”ネタは豊富 次は亜矢美のロードムービー?

[ 2019年11月2日 09:00 ]

連続テレビ小説「なつぞら」のスピンオフドラマ「とよさんの東京物語」(上)と「十勝男児、愛を叫ぶ!」(中)(下)(C)NHK
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 今年4~9月に放送されたNHK連続テレビ小説「なつぞら」のスピンオフドラマ2本を含む2時間特番「なつぞらSP 秋の大収穫祭」が2日午後7時からBSプレミアムで放送される。制作統括の磯智明チーフプロデューサー(CP)に見どころを聞いた。

 女優の広瀬すず(21)がヒロインを務めた節目の朝ドラ通算100作目。大河ドラマ「風林火山」や「64」「精霊の守り人」「フランケンシュタインの恋」、映画「39 刑法第三十九条」「風が強く吹いている」などで知られる脚本家の大森寿美男氏(52)が2003年後期「てるてる家族」以来となる朝ドラ2作目を手掛けたオリジナル作品。戦争で両親を亡くし、北海道・十勝の酪農家・柴田家に引き取られた少女・奥原なつ(広瀬)が、高校卒業後に上京してアニメーターとして瑞々しい感性を発揮していく姿を描いた。

 今回の特番は広瀬と草刈正雄(67)が進行役を務め、反響の多かったシーンや未公開映像も交える。スピンオフドラマは十勝の菓子屋「雪月」を中心に「とよさんの東京物語」(50分)と「十勝男児、愛を叫ぶ!」(50分)の2本。時代設定は本編最終回の1975年(昭50)8月から約8カ月後の76年(昭51)4月。スピンオフの撮影は本編の撮影と一部並行して行われた。

 「とよさんの東京物語」は90歳のとよ(高畑淳子)が坂場(中川大志)に老婆の声を頼まれ、1人、上京。アフレコ現場を初訪問し、人気アニメ声優・土間レミ子(藤本沙紀)に感動したとよは、咲太郎(岡田将生)に声優として働きたいと頼み込む。しかし、その裏には妙子(仙道敦子)を「雪月」の女将として独り立ちさせたいという思いがあった。とよは必死にレッスンを重ね、声優への道を突き進む。

 「十勝男児、愛を叫ぶ!」は雪次郎(山田裕貴)がある日、子育てをめぐって夕見子(福地桃子)とささいな夫婦ゲンカをしてしまう。それをきっかけに、照男(清原翔)や番長(板橋駿谷)たち十勝の男と、砂良(北乃きい)や良子(富田望生)たち十勝の女が大分裂。結局、仲直りのため、夫が妻のために愛を語るコンテストを開くことになる。妻たちの人気を一番集めるのは誰か?十勝男児たちの死闘が始まった。

 本編に登場しなかった新キャラクターも続々。なつの酪農の良き先生・戸村菊介(音尾琢真)の妻・カナ子を中島亜梨沙(36)、菊介の一人娘・公英(きみえ)を川床明日香(17)、柴田家の父・剛男(藤木直人)と“運命的な縁”がある東京在住の独身女性・五十嵐静を坂井真紀(49)が演じる。

 キャスティングの理由については、札幌出身の中島は「濃いキャラクターが多い十勝チームの中に、スムーズに溶け込める人が良かった。音尾さんとのバランスも、意外性があって面白いと思いました」、川床は「以前にオーディションでお会いしていて、とても印象的な女の子だったので、本編でお願いできる役があればと思っていてチャンスがなかったので」、坂井は「ピンポイントの出演なんですが、だからこそ演技力のある方にお願いしたいと思いました」(磯CP)とした。

 スピンオフ制作が具体化したのは今年5月。磯CPは「制作するきっかけとして、一番大きかったのは大森さんの脚本に魅力的なキャラクターがたくさんいたことです。本編の表には描かれなくても、雪月には雪月の、天陽(吉沢亮)には天陽の時間が流れている。それを描かないのはもったいないと思いました。とはいえ、本編には入り込む余裕がなかったので」と企画の経緯を説明。

 雪月を題材にした理由は「単純に雪月を舞台にしたホームドラマを見たいと思いました。雪月チームは楽屋でも仲良しで、山田裕貴さんをはじめ、役者さんたちも、まだまだ演じ足りないという空気が伝わってきまして(笑)。他にも、時間をさかのぼって泰樹(草刈)の開拓者時代や天陽と妻・靖枝(大原櫻子)が結婚するまでのラブストーリーなども考えてみましたが、全編十勝ロケが必要なぐらいの壮大な物語になるので、今回のスケジュールだと難しかったと思います」と明かした。

 スピンオフの脚本は本編執筆に専念していた大森氏が原案に回り、映画「闇金ドッグス」シリーズなどの池谷雅夫氏(32)と演劇ユニット「ろりえ」を主宰し、俳優としての顔も持つ奥山雄太(32)が担当。若手演出陣からの推薦もあり、磯CPは「ドラマの世界観は本編で既に出来上がっているので、そこに新鮮な空気感を入れてみたいと思いました」と起用理由を説明した。

 1本目「とよさんの東京物語」は「とよさんが上京して、東京の人たちと絡むのは新鮮。特に本編だと全く接点がなかった、とよさんとレミ子の組み合わせは面白いと思います」。2本目「十勝男児、愛を叫ぶ!」は「実際に取材をしてみると、十勝の酪農家や農家の女性は家業にも携わりつつ、家事もしたり、女性の役割が大きいんです。剛男と富士子(松嶋菜々子)の関係もそうですが、もっとクローズアップして、酪農や農業に携わる夫婦の物語をコメディータッチで描いてみたいと思いました」。2本を通じて「スピンオフというより、本編で明かされなかった伏線を回収しながら、雪月をメインに置き換えた物語が続編的に展開します」とアピールした。

 最後に、さらなるスピンオフ制作の可能性を尋ねると、磯CPは「なつが東京でアニメーターに挑戦している間、十勝の人は何をしていたのかなど、本編の表には描かれなくても、大森さんはちゃんと裏設定を考えて、ストーリーを重層的に作っているので、どこを切り出してもドラマにはなると思います。眠っている物語や尺の関係で本編に盛り込めなかったエピソードがたくさんあるので、視聴者の皆さんからご覧になりたいという声や機会があれば。亜矢美(山口智子)がおでん屋・風車を出ていった後、どこで何をしていたのか、ロードムービー風に描くのも面白いかもしれないですね(笑)」

 ▼「とよさんの東京物語」=高畑淳子/広瀬すず、中川大志、岡田将生、比嘉愛未、貫地谷しほり、安田顕、仙道敦子、山田裕貴、福地桃子ほか

 ▼「十勝男児、愛を叫ぶ!」=山田裕貴、福地桃子/広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人、清原翔、北乃きい、音尾琢真、戸次重幸、富田望生、板橋駿谷ほか

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