佐藤隆太 広がる演技の幅「手紙」で殺人犯役 私生活では3児のパパ、家族との時間を大切に

[ 2018年12月16日 11:00 ]

佐藤隆太といえば柔和な笑顔がトレードマークだが、近年はシリアスな役で存在感を発揮(撮影・三島 英忠)
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 【俺の顔】人懐こい柔和な笑顔がトレードマークといえる佐藤隆太(38)。そのイメージ通り、快活な青年や熱血漢を演じてきた印象が強いが、近年はDV夫などシリアスな役どころで貪欲に演技の幅を広げている。テレビ東京のドラマスペシャル「東野圭吾 手紙」でも、強盗殺人を犯し弟の人生を狂わせる兄役で存在感を発揮。一方で、子供のことを語る際には自然と目尻が下がり、頬が緩む。そこに好感度の高さの理由が垣間見えた。

 物腰も柔らかく、言葉を選びながら紡ぐ受け答えも丁寧。間近で相対した佐藤には、どこか周囲を和ませる雰囲気がある。

 大学在学中に演出家の宮本亜門氏(60)の目に留まり、1999年に舞台「BOYS TIME」でデビュー。その舞台を見たテレビのプロデューサーが注目し、翌年のTBS「池袋ウエストゲートパーク」でドラマ初出演。続く同局「木更津キャッツアイ」で、スターへの階段を駆け上がっていった。

 「本当に人、出会いに恵まれていました。当時はなんのことやら分からないままにやっていましたけれど、今でも見ていましたと言われる作品に大抜てきしてくださったことへの感謝しかないです」

 謙虚に振り返るが、2008年に「ROOKIES」に出合う。高校時代に原作コミックを読んで影響を受け、いつか演じたいと公言していた念願の作品。ドラマは高視聴率を記録し、翌09年には映画化され興収85億5000万円の大ヒット。野球で不良高校生を更生させようと奔走する熱血教師・川藤を演じ、現場では市原隼人(31)、佐藤健(29)らを引っ張ったが、「やっている時は苦しかった」と明かす。

 「役者人生を終えてもいいというくらいの思いだったけれど、自分の理想としていた川藤と、そこにたどり着けていない自分が浮き彫りになっちゃった。こんなところでやめるなんて言っている場合じゃない。もっとやれよと、役者としても佐藤隆太という人間としても課題を与えてくれた作品でした」

 それでも、積極的に声を上げたことで、運命を引き寄せたことは間違いない。依頼があってこその仕事という基本姿勢は保ちつつ、能動的に発信していく意識も芽生えた。

 「大きな夢を恥ずかしがらず口にすることの力は、確かにあるような気がする。目標を定めることで、そこに近づくために、自分を奮い立たせて行動していくことが結果につながると思うようになりました」

 その変化が周囲にも伝わったのだろう。16年のフジ「ナオミとカナコ」では誠実そうに見えてDVをしている夫と中国人不法滞在者の2役に挑むなど、さまざまな違った顔を見せるようになった。「手紙」でも、弟役で主演の亀梨和也(32)とは2回しか対峙(たいじ)しないが、物語のキーパーソンとして強烈なインパクトを残す。CG処理ながら丸刈り頭も披露した。

 「丸刈りにしたいってここ何年も言っていたからチャンスだと思ったんですけれど、他の役もやっていたので逃してしまった。悔しかったなあ」

 現在は「ROOKIES」ほどの作品を見つけることは難しいというが、依頼された役とより真摯(しんし)に向き合い作品世界にいかに寄与できるかを見いだすようになった。

 「基本は笑って見ているのに最終的にちょっと泣かされるような作品が好きなので、またやりたいですね。僕にくる?という想像がつかない役を頂いた時も毎回怖くてしようがないんですけれど、やり終わった後にちょっと自信につながる。そんな面白い出合いもしたいです」

 私生活では09年に結婚し、今では小学3年生の長女を筆頭に3児のパパに。16年からは、スポーツに打ち込む子供たちを追うフジテレビ「ライオンのグータッチ」でMCを務めている。

 「父親になってからは、自分の子供じゃなくても頑張っている姿を見ていると泣けてくるというか、こんなに感動するんだと思ってしまう。自分も頑張らなきゃと刺激をもらいます」

 仕事の合間も、家族と過ごす時間を大切にすることでメリハリをつけている。「作品が終わったら子供や家のことをやります。撮影中の休みの日もそうですが、台本を離して子供と接していても頭の中でセリフを考えちゃうこともあるので、ビシッと区切らなければいけませんね」

 長女は父親の仕事が分かる年齢になったが、出演作はあまり見ていないという。「気にならないことはないんでしょうけれど、けっこう怖がりで、この前見せた舞台と映画で僕がどっちも死んだので、トラウマを植え付けちゃったかもしれない。でも、役であっても僕が死んだら悲しんでくれるというのはうれしいですよ」。満面の笑顔から、なんとも子煩悩な一面もうかがえた。

 ≪ナレーションにも挑戦≫テレビ東京「東野圭吾 手紙」(19日、水曜後9・00)は東野氏の250万部を超えるベストセラー小説の初のドラマ化で、佐藤は弟への手紙を読むモノローグでナレーションにも挑戦。映像を見ない段階での収録だったが、「とにかく弟への愛情があふれる兄なので、あまり暗くなりすぎないように、兄弟の間での意識の差が生まれるようにと意識しました」と振り返った。また、15日に封切られた映画「輪違屋糸里 京女たちの幕末」では、新選組のせき眼の隊士・平山五郎を演じている。

 ◆佐藤 隆太(さとう・りゅうた)1980年(昭55)2月27日生まれ、東京都出身の38歳。1999年、舞台「BOYS TIME」で俳優デビュー。その後、「池袋ウエストゲートパーク」、「木更津キャッツアイ」、「海猿」など話題のドラマに出演し、08年「ROOKIES」でドラマ初主演。09年「ビロクシー・ブルース」で舞台初主演。

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