久保王将“熟考角切り”で連勝 豊島八段3時間超え大長考に応酬

[ 2018年2月5日 05:30 ]

第67期王将戦 ( 2018年2月4日    栃木県大田原市・ホテル花月 )

将棋ファンのチビっ子に大好物の「とちおとめ」を食べさせてもらい笑顔の久保王将
Photo By スポニチ

 久保利明王将(42)が連勝を飾り、2勝1敗でリードを奪い返した。挑戦者の豊島将之八段(27)が昼食休憩を挟み3時間以上の大長考。久保は直後に58分の考慮で打ち歩詰め手順による自王の安全を読み切り一気に押し切った。終局は午後4時45分、97手まで。第4局は19、20の両日、兵庫県尼崎市の都ホテルニューアルカイックで指される。

 将棋界には「長考の半分返し」という言葉がある。相手が1手に長い時間をかけた場合、自分も考えていたつもりですぐに指すと、思わぬ落とし穴にはまることがある。相手の半分は時間を消費するつもりで慎重に手を探すべきという考えだ。長考した相手の手に敬意を払うという意味も含む。

 午前10時すぎ、69手目[先]4五歩を見た豊島の手が止まる。「ちょっと無理筋だった」という仕掛けを反撃され、1時間40分を消費した封じ手[後]4四銀の3手後。おやつの特製フルーツ盛り合わせにも全く手を付けず、さらなる大長考に沈んだ。

 豊島は終局後「考えているというより困っていた」と明かした。「どれも進めていくと負けになってしまう。自信が持てる変化が全くなかった」。第1局は持ち時間の半分以上を残す3時間38分で快勝。それに近い時間を費やし、苦心の[後]4二桂を繰り出した。立会人の木村一基九段(45)は「効果があるか分からない」と話したが、他に有効手も見当たらないという。

 久保は「全部は読み切れなかったが、角成りが利けば良くなるのではという感触があった」と熟考で返した。半分にこそ及ばないものの、3分の1に近い58分をかけて71手目[先]4二同角成。中盤の2枚のうち左側の角を切る強い手を選択した。

 角を渡す手順にはリスクがあった。74手目[後]1九角と王手されると、久保王の逃げ場所は4七の1カ所しかない。前に進む駒を頭に打たれれば詰まされるギリギリの形。だが相手の持ち駒は歩のみで「打ち歩詰め」の反則となり逃げ切れる。「危ない局面だが、良くなる可能性はあるかなと」。際どい局面を読み切り、手を緩めずに一気にゴールへと突き進んだ。

 振り飛車党のタイトル保持者として、第1局に続く相振り飛車で連敗はできなかったはず。残りわずかの今年度、久保は王将戦最大残り4局に加え、4強入りした朝日杯オープン戦、豊島と6勝3敗の首位で並ぶA級順位戦最終局と大一番が続く。「また準備して頑張りたい」。公式戦5連勝と好調でも、信条とする「前後際断」の構えは変わらない。

続きを表示

2018年2月5日のニュース