ほんの一日、一瞬なのに惹かれた背番号27

[ 2022年10月10日 07:45 ]

西武・西口2軍監督(左)、巨人・二岡2軍監督(右)と記念撮影する西武・内海
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 誰もが目に焼き付けたいと思ったからこその静けさだったように感じる。2日に、川崎市のジャイアンツ球場で行われたイースタン・リーグ巨人―西武戦での西武・内海哲也投手(40)のジャイアンツ球場ラスト登板。背番号27が投球動作に入ると、話し声は一切せず、シャッター音とボールの音だけが球場に響いた。

 今季最終戦にして初のチケット完売。多くのG党が、かつてのエース左腕の勇姿を見に足を運んだ。出番は5回2死二塁。名前がコールされると、この日一番の盛り上がりを見せた。ビジョンには画像が表示され、おなじみの登場曲「PRIDE」も流れる粋な計らいも。ブルペンのある左中間フェンスから姿を表すと、マウンドへ向かうまで大きな拍手は鳴り止まなかった。

 15年間在籍した古巣の2軍球場。「やっぱり僕のプロの第一歩を踏み出した球場なので、いろいろ思い出して、こみ上げてくるものがありました」と内海。5球全て直球。代打・石川を最後は137キロ内角直球で見逃し三振に仕留め「多少の忖度はしてくれたとは思うんですけど、今できるベストピッチができた」と笑った。

 登板直後に行われたセレモニーでは、西武・西口2軍監督、巨人・二岡2軍監督からの花束贈呈と、両軍の選手による胴上げが行われた。異例ともいえる演出も、その人望の厚さから。あいさつに来る選手ら一人一人に丁寧にお礼をする内海の姿を見ただけで「内海さんのためなら」と動きたくなるだろうと思った。巨人関係者も「あれだけ人のできた人間はいない」と言うほど。内海の目は涙で真っ赤だったが、多くのファンも涙していた。

 囲み取材で初めて取材した。「(緊張で足が)ガクガクですよ。ブルペンに行ったときから体が硬直していましたね。もうホッとしました」と振り返った様子は想像通りだった。記者が幼少期から活躍するスターは、テレビで見ていた姿のまま。丁寧に質問者の目を見て答える姿に人柄の良さを感じ、包み隠さず話してくれる言葉に人間味を感じた。

 試合後は巨人ナインからのあいさつの列で行列ができていた。スタンドではファンが、内海の姿が見えなくなるまでユニホームやタオルを掲げていた。関われたのは、ほんの一日、一瞬。それだけでも裏表のなさに惹かれ、取材できて良かったと思った。(記者コラム・小野寺 大)

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2022年10月10日のニュース