気がつけば40年(33)あの「10・8決戦」で1年延期された星野仙一氏の中日監督復帰
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【永瀬郷太郎のGOOD LUCK!】記者生活40年を振り返るシリーズ。今回は1994年、69勝60敗で並んだ巨人と中日が最終戦直接対決でペナントを争った「10・8」で1年先送りにされた監督人事について書きたい。
世紀の決戦を2日後に控えた10月6日、午後1時から名古屋市内のNHK名古屋放送センターで異例の記者会見が開かれた。星野仙一氏の「辞退会見」である。燃える男はこう切り出した。
「これだけの戦いをしているわけですから、今の監督が辞めるとか辞めないというのはおかしい。優勝しようがしまいが、守道さんにやってほしい。それを皆さんに伝えに来たわけです」
中日球団から要請を受け、内定していた監督復帰を辞退するというのである。
中日は首位巨人に5ゲーム差の2位につけていた8月18日から8連敗。同27日の段階では52勝55敗と3つ負け越し、巨人に9・5ゲーム差の4位に沈んだ。
球団はこの段階で、高木守道監督の契約延長はしないと決定。8月末、中山了球団社長が高木監督にその旨を通告し、9月に入って星野氏に監督復帰を要請した。
健康上の問題で監督を辞して3年。星野氏は2年前に受けた頸椎の手術が成功し、白血病で余命1年とされていた扶沙子夫人も監督業の重圧から解放された夫との穏やかな生活の中で安定した状態を保っていた。
1991年の星野監督退任後は阪神に在籍していた腹心の島野育夫、加藤安雄両コーチにも声をかけた。2人とも阪神の慰留を振り切って中日復帰を決めていた。
そうした一連の流れをキャッチして9月13日付の1面で星野氏の中日監督復帰が濃厚と報じた。他紙も追いかけてきて監督交代は周知の事実となったが、ここから状況が変わっていく。
独走していた巨人が大失速するのだ。8月26日から8連敗。ひとつ勝って、3連敗。さらに9月20日から4連敗。一方、中日は9月18日から9連勝の快進撃を見せた。
9月28日の直接対決(ナゴヤ球場)では中日が初回、立浪和義の左越えホームランで挙げた1点を郭源治―佐藤秀樹―今中慎二とつないで守り切った。1―0の勝利。7月に最大10・5ゲーム差をつけられた巨人に66勝59敗で並んだのだ。
台風26号の接近で翌29日は中止の見込みで、翌日先発予定のエース今中を投入しての必勝継投。翌日は実際に中止となり、その試合が10月8日に組まれたのである。
その後、中日がひとつ負け、星野氏の辞退会見が行われた時点では巨人が1差リードしていた。
「誰がいいとか悪いとかじゃない。何年も勝負の世界を見てきた人間が誰一人予想しなかった現象が起きたんだから。強いて挙げれば落っこちてきたヤツ(巨人)が悪い」
最後に本音をのぞかせた星野氏に対し、すでに退陣を表明していた高木監督も頑なだった。
「有終の美を飾って辞める気持ちに変わりはない。8月末に通告されたときから、最後まで全うしようと思ってここまで来てるんだ。優勝したからやるというのは間違っとる。普通にやってこうなったんならともかく、選手もコーチも来年は星野体制になると認識した上で、監督が最後だからって頑張ってきた結果なんだ」
その夜、巨人はヤクルトに2―6で敗れ、中日は阪神に10―2で勝った。再び69勝50敗で並び、世紀の大一番の舞台が整ったのである。
結果は、槙原寛己―斎藤雅樹―桑田真澄の必勝継投に出た巨人が6―3で勝利。余勢を駆って日本シリーズは4勝2敗、4度目の対戦で初めて西武を倒して日本一になった。
一方、敗れた中日の高木監督は恩ある加藤巳一郎オーナーの強い慰留を受けて続投したが、1995年は開幕から低迷。加藤オーナーが急性心不全で亡くなった6月2日、阪神戦(甲子園)の6回、久慈照嘉の打球の判定を巡り審判の胸を小突いて退場となり、球場を出て加藤オーナーの仮通夜に直行。そのまま辞任した。
監督代行となった徳武定祐ヘッドコーチも途中で解任され、星野氏より先に中日に戻っていた島野2軍監督が代行の代行を務めた。
星野氏は1996年に監督復帰。加藤オーナーの遺言状には「高木監督の契約切れに伴い来季の監督は星野氏とすること」と記されていたという。 (特別編集委員)
◆永瀬 郷太郎(ながせ・ごうたろう)1955年9月生まれの65歳。岡山市出身。80年スポーツニッポン新聞東京本社入社。82年から野球担当記者を続けている。
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