磯辺の5番鵜沢が2打席連発 昨秋急死の母へささげる「親の応援、チームの励ましがあるから打てた」

[ 2020年8月2日 15:29 ]

千葉大会1回戦   磯辺12―3千葉南 ( 2020年8月2日    青葉の森 )

<千葉南・磯辺>5回1死一、二塁勝ち越しの3点本塁打を放ちダイヤモンドを回る磯辺・鵜沢(撮影・河野 光希)
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 高く、より高く…。母に届けたかった。磯辺の5番・鵜沢達弥一塁手(3年)のバットから放たれた2本のアーチには、そんな思いが込められていた。

 チームは7回コールドで快勝。自らの打撃に「うまく打てました」。一呼吸置くと、こう言った。「自分は親の応援、チームの励ましがあるから打てたんです」。母・香織さんの笑顔が目に浮かんだ。

 昨年11月25日の夜だった。片頭痛を患っていた母の体調が急変。千葉市内の病院に緊急搬送され、劇症型心筋炎と診断された。鵜沢は人工心肺装置をつけ、意識のない母に何度も呼び掛けた。「最後の夏の大会で頑張るから」。2日後の27日、帰らぬ人となった。

 母は栄養士の資格を持っており、毎朝弁当を作ってくれた。午後9時過ぎに練習から帰宅すると「お帰り!」と笑顔で出迎えてくれた。「明るい性格で毎試合応援に来てくれたのに…。本当にショックでした」。

 前夜、自宅の仏壇で手を合わせて活躍を誓った。4回に右越えソロ、同点とされた5回1死一、二塁では右中間に決勝3ランを放った。人生初の2打席連発。高校通算12本となった。打席では「シャーッ!」と気合を入れる。1打席も無駄にしない気持ちが通じた。スタンドで香織さんの遺影を抱えていた父・慎二さん(52)は声を震わせた。「1本出ればいいと思ったのにまさか2本とは…。(妻がボールに)フッと息を吹きかけたんじゃないですか」。

 9月には地元・習志野市の消防職職員採用試験を受ける。「ガタイがいいんだから消防士になった方がいいんじゃない」。生前の母にそう勧められた。まだやることがある。落ち込んだ時に、支えてくれたナインと一日でも長く戦う。そして青空にアーチを架け続ける。

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2020年8月2日のニュース