取材は?移動は?…MLB開幕後に待ち受けるパンデミックの影響

[ 2020年5月21日 09:00 ]

 日米ともに今季開幕に向けた具体的な日程案の議論が始まり、希望を抱き始めた野球ファンは少なくないだろう。MLBと選手会の交渉がうまくいけば、7月上旬には筆者の住むアメリカにも球音が戻ってくるかもしれないという。

 もちろん、まだ予断は許さない。報酬分配の交渉では衝突は避けられないと伝えられているし、一部の選手の間からは健康面で不安の声も出てきている。パンデミックの中でのプレーは当然、誰も経験がないだけに、諸条件を懸念する選手がいるのは当然だろう。また、メディアの側から見ると、開幕に至ったとしても、取材時にどれだけのアクセスが許可されるのかが気になるところではある。

 メジャーリーグでは通常、クラブハウス内での取材が許されるが、現状ではそれは考えにくい。球場への立ち入りが許可されたとしても、マスク着用、ソーシャルディスタンスを保った上で記者会見場での取材が主となるのか。あるいはオールスター、春季キャンプの取材時のように、一部の選手をクラブハウスの外で囲むスタイルか。それとも、オンライン取材のみになってしまうのか。

 その他、球場入りの際にはPCR検査、体温チェックも行われるのか、記者席でソーシャルディスタンスを保てるのか、無観客ゆえに豊富に空いているだろう観客席が記者用に解放されるのかなど、疑問は山積みだ。米国内は飛行機移動が通常だけに、各チームの番記者たちは遠征にこれまで通り同行できるのかも気になるところだろう。

 こうしたアクセスの問題が、もともとオピニオネイティブ(自説の主張を好む)な米国人記者たちの関心も読んでいることは間違いない。今月中旬から、筆者も所属している全米野球記者協会(BBWAA)の公式サイト内でも討論が始まっている。

 ここで予想すると、MLB、選手会からは「試合は在宅観戦」「インタビューはオンラインのみ」といった厳しい提案が出されるのではないか。その上で、BBWAAがアクセスの拡大を交渉するという流れになる可能性が高いように思える。

 まずは安全が第一なので、今年に限ってはリモート取材も仕方ないという気もしてくる。ただ、最近の趨(すう)勢を見ると、ここでアクセスを諦めたら「コロナ後」の取材にもリモートが導入されかねないという危惧も感じるベテラン記者は少なくなさそう。そんな流れを回避するべく、メディアも団結して取材機会確保を主張するのだろう。

 いずれにしても、コロナショックの後では記者のあり方、取材体制も少なからず変化することは確実だ。未知の状況だけに、不安もある。シーズン開幕後、私たちメディアはパンデミックの影響を改めて思い知ることになるのかもしれない。(記者コラム・杉浦大介通信員)

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2020年5月21日のニュース