【東尾修氏 大分析1】まるで第7戦 同点8回2死からソフトB守護神・森投入

[ 2018年11月2日 08:00 ]

SMBC日本シリーズ2018第5戦   ソフトバンク5―4広島 ( 2018年11月1日    ヤフオクD )

<ソ・広>8回2死、高橋礼(左)に代わってマウンドに向かう森(撮影・北條 貴史) 
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 まるで第7戦のような継投――。スポニチ本紙評論家の東尾修氏(68)は、救援の切り札を早めに投入したところに、両指揮官の意地の張り合いを見たという。最後は是が非でも本拠で3連勝したいソフトバンク・工藤監督の執念が柳田の劇的な一発を呼んだ。その一方で、工藤監督の左腕・モイネロ起用は、不振だった丸にはプラスに働いたとも指摘。3番に待望の一発が飛び出したことは、広島には一筋の光明となる。(構成・鈴木 勝巳)

 ソフトバンクは最高の形で勝利した。まるでシリーズ第7戦、明日なき戦いのような雰囲気を感じた熱戦。その裏側には、2人の指揮官の意地と執念を見るかのような、すさまじい継投策があった。

 同点に追い付いた直後の8回2死、走者のいない場面で工藤監督が守護神・森をマウンドに送ったのには驚かされた。延長戦もある中で「禁じ手」と言ってもいい。この回は5番手の高橋礼が登板。代打・バティスタに続いて安部も簡単に打ち取った。下手投げの投手は、ボールの軌道が見えやすいために左打者は苦手とされる。その安部を抑えて2死を取った。次打者は右打者の会沢。ここで工藤監督は動いたのだ。

 会沢は6回の前打席でソロ本塁打。理由はその1点だけだ。走者の有無は関係なく、最初から「会沢には森」と決めていたのだろう。意気に感じた森は三振で応え、ベンチの士気も上がった。短期決戦の戦い方を熟知した工藤監督の継投策は、最終的に吉と出た。

 ともに先発投手は中4日。2日は移動日で試合がないという条件も重なり、それぞれ早い段階からカードを切った。リードをしたとなれば次々に中継ぎ投手をつぎ込む。1点を守る、という強い意思が伝わってきた。緒方監督も1点リードの6回2死二塁で、左の代打・長谷川勇に対してフランスアを投入。ブルペンで一人しかいない左腕を早い段階で起用した。次の回の1番・上林、2番・明石も左打者。ロングリリーフも考慮していただろうが、ここにも執念が見えた。

 継投策には勇気がいる。監督にしか分からない自信と不安もあるだろう。投手出身の工藤監督と、野手出身の緒方監督。互いに譲らない、見応え満点の駆け引きが展開された。

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2018年11月2日のニュース