ヤクルトのドラ2“緊張しない男”法大・中山が「緊張」した瞬間とは

[ 2018年11月2日 10:00 ]

持ち前の筋肉でポーズを作る法大・中山
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 ヤクルトのドラフト2位で指名を受けたのは1メートル86、95キロのがっしりした体格で豪快なスイングが持ち味の法大・中山翔太内野手だ。六大学野球リーグ通算11発を誇る大型スラッガーで、趣味の週4日のウェートトレーニングで作り上げてきたムキムキな身体から「きんに君」の異名をもつことは有名な話かもしれない。

 そんな中山の魅力は豪快なスイングや常に全力疾走などいろいろあるが、なんといっても明るくて元気なところだろう。試合前は、神宮球場の売店の店員さんにも元気よくあいさつ。試合後の取材では、記者の質問にもちろん真面目に受け答えもするが、ときに面白い発言でその場を和ませる。私が法大のグランドに取材に行った際も、初の1人での取材に緊張していたが、中山は元気よく笑顔で「今日、僕ですよね?取材、よろしくお願いします!!」と話しかけてきてくれ、緊張が解けたのを覚えている。

 さらに「どんなときでも緊張はしない」と、強靱な心も備えている。「野球1本でいきます。指名されなかったら野球を辞めます」。こう話していたプロ野球ドラフト会議当日も「緊張しなかったです!」と笑ってみせた。自分の人生が決まる瞬間ですら、緊張しない男なのだ。

 そんな中山が2018年10月29日に「いま緊張してます」と言った。六大学野球秋季リーグの早慶戦第3戦目の試合中だった。法大はすでに全日程を終了しており、慶大が勝てば、慶大が優勝し、早大が勝てば、法大が優勝が決まる日だった。法大にとって、リーグ優勝は12年秋から遠ざかっており、中山らナインは優勝を経験していなかった。秋季リーグ前に中山は「優勝しか目指していない。負けたとき、応援してくれる人に申し訳なかった。4年間悔しい思いをしてきた。口だけでは誰でも言えるけど、最後は男をみせて優勝したい」と真剣な表情で話していた。

 試合は中盤に慶大が勝ち越し、中山は思わず「まじかあ…」とつぶやき、元気をなくしていた。しかし9回に早大が逆転し、優勝が決まると待機していたロッカールームから、中山の吠えた声が聞こえてきた。「帽子を放り投げて、大声で叫んでいましたね」と笑っていた。胴上げの際は、ナインから「重くてあがらないよ〜」といじられつつもしっかりと何度も宙を舞っていた…と思ったら、舞いながらも大勢の報道陣のカメラの前で変顔を披露していた。

 そんな明るいムードメーカーを見て、周りにいた記者たちも笑顔になった。やっぱり底抜けに明るい中山。プロの世界でも、プレーだけでなく、行動でも多くの人を笑顔にさせてくれることだろう。(記者コラム・武本 万里絵)

 ?中山 翔太(なかやま・しょうた)1996年(平8)9月22日生まれ、大阪市出身の22歳。小1から野球を始め本庄中時代は東成シニアに所属。履正社では2年秋から外野手レギュラーで3年春の選抜では4番を打ち準優勝した。法大では2年春からリーグ戦出場。今春の東大戦でリーグ史上8人目のサイクル安打を達成した。1メートル86、95キロ。右投げ右打ち。

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