宇部商 玉国光男元監督 ミラクル立役者・浜口と重なる済美・矢野

[ 2018年8月17日 09:30 ]

第100回全国高校野球選手権記念大会第12日3回戦   済美3―1高知商 ( 2018年8月16日    甲子園 )

1983年、帝京戦でサヨナラ2ランを放った宇部商・浜口
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 【名将かく語りき〜歴史を彩った勝負師たち〜第12日】宇部商(山口)の元監督・玉国光男氏(70)が、済美―高知商を観戦した。強打、逆転で勝ち上がった四国勢の対決。85年夏にKKコンビのPL学園と決勝を戦って準優勝。数多くの劇的勝利を見せた「ミラクル宇部商」の指揮官は、大方の予想に反する投手戦になった理由を解き明かした。

 非常に懐かしく、楽しく試合を見させていただいた。済美は亡くなられた上甲正典監督が鍛えたチーム。88年センバツで、優勝した上甲さんの宇和島東とやった準々決勝を思い出した。高知商の元監督、谷脇一夫さんは鐘淵化学の先輩。私の頃の宇部商は夏の山口大会で負けると四国遠征に出ていて、高知では皿鉢(さわち)料理を頂きながら野球談議をしたものだ。

 済美は逆転サヨナラ満塁本塁打で2回戦の星稜戦に勝ち、高知商は2試合26得点。各打者がどんな振りをするのか興味があった。その中で済美の山口直君、高知商の北代君がコントロール良く丁寧な投球をして、少し意外な投手戦になった。ともに地方大会から1人で投げ抜いてきたエース。宇部商ではベスト4に入った05年夏の好永貴雄を思い出す。

 打線はいずれも、振りが少し大きくなっているところが見られた。特に高知商の方がどんどん振っていったため、山口直君の方がスタミナが残った。前の試合に打ち過ぎて、振りが大きくなる。多いパターンだ。打った後こそ、ベンチが気合を入れて「振りをコンパクトに」と言わなければいけない。任せていると、いつの間にか試合が終わってしまう。

 また、済美は逆転サヨナラ満塁アーチの矢野君が5回に三塁打で先制点を呼んだが、高知商はこの打者を全力で抑えることが必要だった。2死走者なしから油断したように打たれたのが惜しい。

 波に乗っている選手は、大会を通して乗る。宇部商でもたくさん見てきた。83年夏は帝京との2回戦で2年生の浜口大作が逆転サヨナラ2ラン。85年夏は藤井進が4本塁打した。88年はセンバツが2年生の坂本雄。3回戦・中京戦は木村龍治投手の前に9回1死まで走者を出せず、完全試合をやられた時のコメントを考えだしていたが、どん詰まりの幸運な初安打の後、坂本の逆転2ランが出た。その夏は1年生の宮内洋。3回戦の東海大甲府戦で代打逆転3ランを打った。

 一番覚えているのは大作の一発。4度目の甲子園での初勝利だったが録画を見た時のことも含めて記憶に残る。大作は5回に1本目の本塁打を打っていて7回は同点機に「スクイズも大丈夫だろう」と思ってサインを出したら、投ゴロで失敗した。放送の解説は松永怜一さん(ロサンゼルス五輪日本代表監督)。「選手を操るような采配をした監督のミスを、選手が救った」とコメントされた。辛口だが、当たっていると思った。なんで選手の力を信じて采配をしないのか…と。

 乗っている子は乗せてやる。それと、試合に強い子を早く見つけるのが監督の仕事だと思ってやってきた。高校野球の期間は短い。ぼやぼやせず、1年生でもいいのはパッとポジションにはめていかないと。上級生の目があるから重圧はかかるが、はねのけられるような選手は活躍する。ミラクルも起こせる。

 済美でいえば2年生から出ている矢野君はそういう選手なのだろう。今後も対戦するチームは要注意だと思う。 (元宇部商監督)

 ◆玉国 光男(たまくに・みつお)1948年(昭23)4月3日生まれ、山口県宇部市出身の70歳。宇部商の主将・二塁手として甲子園初出場の66年春に4強入り。同年ドラフトで西鉄に9位指名を受けたが社会人の鐘淵化学へ。のち協和発酵宇部工場で勤務し、75年秋から宇部商監督。85年夏の甲子園で準優勝。05年夏を最後に勇退。甲子園24勝16敗。現在は宇部ボーイズ監督。

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