「あと1本!」コールに応えた 早実・清宮 注目を力に変えた父の言葉

[ 2017年6月5日 05:30 ]

招待試合   早実1―5享栄 ( 2017年6月4日    小牧市民 )

<早実・享栄>100号本塁打の記念球を手に笑顔の早実・清宮
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 高校野球の歴史に名を刻んだ。今秋ドラフトの目玉の早実・清宮幸太郎内野手(3年)が4日、愛知県の小牧市民球場で行われた招待試合の2戦目、享栄戦で高校通算100本塁打を放った。「3番・一塁」で出場し、9回の最終打席で右中間席場外へ運んだ。飛距離135メートルの節目の一発は、美しい放物線を描いた。

 「あと1本!あと1本!」。打席に向かう清宮に野球少年のコールが送られ、1万人の大観衆が大声援で出迎えた。9回1死走者なし。右翼席では記念球を捕ろうとするファンが総立ちだ。この日は2試合、計8打席でノーアーチだったが最終打席で決めた。

 「完璧。最後の最後に出てよかった。子供たちが外野から声を出してくれて、それも聞こえて凄い力になった。100本目は自分らしい、いい打球が飛んでくれた」

 前日の桜丘戦で99号の大台に王手をかけてから10打席目。初球だった。「最後なので真っすぐが来ると思って狙い通りいった」。真ん中の直球を叩いた打球は、きれいな放物線を描き右中間場外へと消えた。「享栄のみんなからも“おめでとう”と言われたし、いつもの1本とは違う」と余韻に浸った。

 15年4月18日の春季東京都大会準々決勝・関東第一戦で第1号を放ってから778日。ファンの注目を浴びることを力に変える強さがあった。高校球児らしからぬ心を生んだのはラグビートップリーグのヤマハ発動機で監督を務める父・克幸さん(49)の「世の中の人に影響を与えられるようにならないといけない」との言葉だった。

 早大、サントリーで清宮監督の下でプレーし、幼少期から清宮を知る早大ラグビー部の山下大悟監督(36)は「幸ちゃん(清宮)は“見せ方、見られ方”ができている」と話す。第1試合では相手の至学館が友情応援でDeNA・筒香の応援歌の替え歌で「Go!Go!100号」と声を張り上げてくれた。高校球界の思いを背負った100号だった。

 順風に見えるが、失敗を心に刻んできた。昨年7月の西東京大会準々決勝の八王子学園八王子戦。一発出れば同点の9回1死一、三塁でフェンス手前で失速する右犠飛に終わり、敗れた。「あの打席は絶対に忘れない」。新チーム結成後、飛距離5メートル増を誓った。体重は101キロまで増量。背筋の矯正や腹圧を高める呼吸法で体幹を強化した。今年22発の平均飛距離は124メートル。飛距離は伸びた。

 早実入学前は「絶対無理だと思っていた」と言うが、誰よりもスケールの大きな成長曲線を描いてきた。高校通算本塁打で歴代1位とされる107本の更新も目前だ。「打てるだけ打ちたい」。誰かを追い抜くためではない。チームのため、ファンのため、そして自身の成長のために、次の1本を打つ。 (東尾 洋樹)

 ▼巨人・長嶋茂雄終身名誉監督 いや凄いね。テレビや新聞などでは見ていましたが、今の選手の中でNo・1のバッター。できればどうでしょうね。プロ野球に入って。早く見たい。

 ▼早実・和泉実監督 今回の遠征(4試合)の中で4本というのは難しいと思っていた。(相手の投手が好投する中)あの1本が出たというのが彼の成長だと思う。

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