打者・大谷 飛躍の理由 「20センチのテークバック」と「軸足加重」

[ 2016年6月22日 10:56 ]

日本ハム・大谷の2016年と2013年のバッティングフォーム

 大谷の打撃飛躍の鍵は「トップの変化」と「軸足加重」にあり――。投手として日本プロ野球最速の163キロを誇る日本ハム・大谷翔平投手(21)は入団4年目の今季、打者としても非凡な成長ぶりを見せる。そんな二刀流の打棒を、筑波大野球部監督で同大体育系の川村卓准教授(46)が分析。動作解析の結果、秘めたるポテンシャルが開花した過程が明らかになった。 (取材・鈴木 勝巳、柳原 直之)

 入団1年目との大きな違いは、フォームを解析した(2)の部分だ。トップの位置が捕手側に20センチほど引かれ、バックスイングが大きくなっている。「これによって身体の回転半径が大きくなり、スイング時の回転力も増しています」と川村准教授。この「回転力」に大谷の打撃の秘密がある。

 ここまで9本塁打のうち、実に8本が中堅から逆方向。全36安打のうちでも、右方向に引っ張ったものは3分の1の12本しかない。これを川村准教授は「メジャー級のバッティング」と呼ぶ。「回転力によって、外角球に対してもスイングスピードが落ちない。その結果、左方向への本塁打増につながっている」。いわゆる「流し打ち」と呼ばれる逆方向への打球は、ミートと軽打によって生み出される。そのため飛距離は出ない。対する大谷は、力を直接ボールにぶつけて逆方向に飛ばす、大リーガーと同じ打ち方だという。

 「多少振り遅れても、回転力とウエートがある。だから打球が飛ぶのです」と川村准教授。大谷は今季、肉体改造に取り組み、一時は102キロまで体重を増やした。昨季までは細身の体が「スイングに負けて浮き上がるような形になっていた」が、体重増で下半身が安定。これにより、体幹の回転を最大限に生かしたスイングが可能になった。

 13年に比べて、肩―腰にかけての「ねじり」が大きくなったのもポイントだ。この「ねじり」が大きいほど、下半身の力を上半身に伝えてスイングスピードが速くなり、かつ体幹の力を爆発させることができるという。

 変化はまだある。(3)のように、かつての大谷は後ろの足(左足)がインパクトの際に動くフォームだった。今季は軸足である左足に体重が残り、「腰の回転を強調した、リアレッグ(後ろ足)スタイルの打撃に移行している」。これは元ヤンキースの松井秀喜ら、長距離打者に多く見られる特徴。「下半身の筋力増、体重増によって可能になったスタイル。大谷選手は確実にホームラン打者へと進化している」と結論づけた。

 (6)のフィニッシュに関しても、13年は右足に体重が移動して下からあおるようなスイングになっているのに対し、今季は「腰の回転がしっかりしているので、レベルスイングができている」。他の打者より少ない打撃機会の中でも、大谷は大きな成長を遂げている。投げては最速163キロ。それでも「当初から打者の方に魅力を感じていた」という同准教授は、「メジャーで中軸を打つ打者はなかなか出てこない。大谷選手は、松井選手以来の大リーグでクリーンアップを打てる逸材」と力を込めた。

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