【斎藤隆パドレス留学記】複雑4256本目…打たれた投手は私のイチ推し

[ 2016年6月22日 10:00 ]

パドレスのペルドモ(AP)

 まさか、その瞬間に立ち会えるとは思いませんでした。6月15日。イチローがパドレス戦でピート・ローズの4256安打を日米通算で抜き去りました。大歓声にヘルメットを取って応えましたが、偉業を成し遂げたのに、それ以外は淡々。その振る舞いが彼の凄さを余計に引き出しているように感じました。

 あの試合、私はもう一人、特別な思いで見ていた選手がいました。初回、イチローに捕手前のボテボテの内野安打で、ローズに並ぶ4256安打目を打たれた先発のルイス・ペルドモです。ドミニカ共和国出身の23歳。彼は昨年12月に「ルール5ドラフト」でカージナルスから移籍してきました。いわゆる、マイナーでの飼い殺しを防ぐための米国独特のシステム。獲得した選手は翌シーズン中、メジャー25人枠に入れなければならず、外す場合は元のチームに返さないといけません。

 ペルドモはオープン戦ではアウトを取るのも四苦八苦で、防御率は14・63。昨季は1Aで投げていた投手なので、無理もありません。「もうダメだ。戻される」と思って見ていました。でも、ブルペンでは凄い球を投げる。全身バネのような筋肉で、それでいて日本人に近いような理にかなったフォーム。私はA・J・プレラーGMに「絶対に残した方がいい。2、3年我慢して使えばエースになれる素材だと思う」とお願いしました。そのぐらい潜在能力の高さに惚(ほ)れ込みました。

 結局、開幕メジャーに残り、最初は結果が出ませんでしたが、4月の終わりごろからコントロールが安定し、急に打者と駆け引きもするようになりました。6月になって中継ぎから先発に昇格。イチローには4256安打目を許しましたが、第3打席では三振を奪っているんです。私も取ったことがないのに…。

 6月15日はイチローが偉業を達成し、私のイチ推し、ペルドモは、6回3失点でメジャーでは初めて先発での勝利をつかみました。いろいろな感動が入り交じった何とも言えない一日でした。 (前楽天投手)

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