20年目 初めて見せた苦悩と焦り…すべては松井に必要だった「準備」

[ 2012年5月30日 11:18 ]

 「今、俺はいい経験をしている」――。マイナーリーグから米大リーグ、レイズへの昇格を果たした松井がニューヨークで孤独な自主トレに励んでいる際、ふと漏らした言葉だ。

 練習場所探しにすら苦労した。バッティングセンターで打ち、郊外の公共グラウンドを使い…。一般の学生が春休みで、思うように施設の予約すら取れなかった。09年のワールドシリーズMVPはそんな中、連日300球以上を打ち込んだ。そこに記者が押しかけ、珍しく声を荒げられた時もあった。目に見えぬ焦り…。4月末にレイズとマイナー契約。これまでにない経験ばかりだった。

 大きかったのは食のストレスだ。3Aの本拠地ダーラムはナイターが主体で、日本料理店はほぼ閉店。やむなく、深夜まで開いているメキシコ料理店などで済ませた。ある日のこと。練習後、汗だくの松井が鬼気迫る顔で記者に迫ってきた。

 松井 どこかでいいレストラン見つけたか?

 記者 「○○○」には行きましたか?

 松井 どうだった?

 記者 カレーはまあまあです。寿司はいまいちでしたが。

 松井 ダメか…。

 メジャーまでの長かった道のり。記者が聞いた「弱音」は、最初で最後だったかもしれない。あの時の落胆した55番の背中は今でも忘れられない。

 会見では「今までと違う環境だったこの1カ月の経験は、自身にとってどういうものか?」と聞いた。松井は少し考えてから答えた。「この後いいプレーができれば、いい期間だったということになるんじゃないですか。いい準備ができたということだと思います」。苦しい経験は全て、メジャー10年目に必要だった「準備」だと信じたい。

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