G1周年記念競走展望

【G1戸田プリムローズ】エース桐生がビッグネーム迎え撃つ

[ 2014年10月28日 05:30 ]

今大会のポスターの前でガッツポーズを見せる桐生順平
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 ボートレース戸田の「G1戸田プリムローズ開設58周年記念」はあす29日、開幕する。「戸田グランプリ」から名称を変更し、日本一のまくり水面で装いも新たにスタート。地元の桐生順平(28)は9月の当地ヤングダービーで初のG1タイトルを獲得し、名実共に埼玉のエースへと成長。現埼玉支部長の須藤博倫(37)も悲願の地元タイトルへ色気を見せる。

◇「若きエース」が初の戸田周年Vに挑戦

 愛する地元水面で悲願のG1制覇を飾ってから1カ月。埼玉の若きエース・桐生順平(28)が、今度は初の戸田周年Vに挑戦する。

 今大会のポスターに、WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志と共に起用。「撮影に呼ばれた時、つい『僕ですか?』と言ってしまった。僕の成績は(埼玉のエースに)見合っていないと思う」と振り返る。

 しかし、2日目ドリーム戦の1号艇にも指名された。関係者の期待度がどれほど大きいか分かるだろう。松井繁、服部幸男、山崎智也、浜野谷憲吾、井口佳典、湯川浩司…。ズラッと並ぶビッグネーム。SGでは完全に桐生が挑む側だが、この戸田周年だけは違う。埼玉のエースとして迎え撃つ立場なのだ。

 当然、その覚悟はできている。「ドリーム1号艇は光栄なこと。期待されている証拠だと思う。乗せてもらえるなら、やるしかない」。戸田は全国屈指のイン受難水面。ここで逃げ切ることの難しさは、地元だけに十分に知っている。実際、今年2月の57周年記念でも2日目ドリーム戦に1号艇で参戦したが、この時は毒島誠のまくりに屈して2着。白星を挙げることはできなかった。そして、得点率24位で予選落ち。悪い流れの発端にもなってしまった。

 「戸田は自分が最も成長できている場所。一番好きな水面」。ここまでキッパリと言い切る舞台で、同じ失敗は繰り返せない。求められるのは結果だ。このハンパない重圧を乗り越えられれば、ヤングダービー優勝後に掲げた「平和島グランプリ出場」も現実味を帯びてくる。20代の頂点から艇界の頂点へ。桐生の戦いは、この戸田周年から再びスタートする。

◇地元G1奪取へ燃える須藤

 7月、蒲郡の開設59周年記念「G1オールジャパン竹島特別」優勝戦。1号艇の須藤は100メートル付近の深インを押し切り、12年の三国以来通算2回目のG1制覇を果たした。「緊張はしたが、G1を1回獲っているので落ち着いて行けた」と松井、井口らSG覇者を抑えて堂々のV。次は念願の地元G1奪取といきたいところだ。

 かつて埼玉の新エースと呼ばれた須藤も37歳。埼玉支部の新支部長を務める。総大将の平石を含めたベテラン勢と、桐生ら才能溢れる若手の間に立たされた言わば中間管理職。今や全国屈指の層の厚さを誇る埼玉支部だが「平石さんからモチベーションの整え方などを教わったりするが、若手が僕の年齢になったら教えてやれる立場になりたい」とリーダーの自覚十分だ。

 それでも「やっぱり一番勝ちたいのは自分」と闘争心むき出しのまま。現在賞金ランキング44位でチャレンジカップ(25~30日、下関)出場は厳しい状況だが、埼玉支部では桐生と共に賞金レースをけん引した。当然ながらG1優勝で尼崎クラシック(15年3月)の出場権利を手中に収め「SGを意識して走りたい」と輝きを放つ準備を着々と進める。

 当地周年記念は02年の開設45周年でG1初優出を飾るなど優出2回だがいまだVなし。今年2月の開設57周年は準優勝戦3着と敗退。届きそうで届かなかった地元G1獲得へ「欲しいタイトルだし、たくさん応援してくれる人がいるので恩返ししたい」。甘いマスクをシュッと引き締めた。

◇試練の時を乗り越えたい中田

 地元ヤングの中田竜太(26=埼玉)は活躍を期待された当地G1ヤングダービーでまさかの初戦フライング。続くとこなめダービーでは、SG初出場した3選手でただ一人水神祭を飾れず「リズムを悪くしたのは自分。悔しさしかない」。飛躍の年は一転、試練の時を迎えている。

 それでも若き才能を疑う余地はない。6月の江戸川周年記念ではシリーズリーダーを務め、優勝戦1号艇をゲット。初のG1優勝こそ持ち越しとなったが、インからコンマ01のスタートを決め準優勝と堂々のレースを見せた。

 「G1はまだ遠いが、頑張れば獲れないことはないのかなと思えるようになった」初めて袖を通したSGカッパは決して記念品なんかではない。似合う選手へ再び歩を進める。

◇賞金キングめざす吉田

 吉田拡郎(32=岡山)は一気にスターダムを駆け上がった。4月の大村周年記念でG1初V。3回目のG2優勝(宮島MB大賞、7月)を挟んでまるがめオーシャンカップでSG初制覇を達成した。G1初優勝から98日目のことだ。現在賞金ランク5位。初のグランプリ出場は当確の立場だが「まだ目標達成ではない。今年は賞金王を獲る!」と頂点だけを見つめる。

 趣味は将棋。自身のレーススタイルを将棋の駒に例え「槍(香車)のごとく自分でレースをつくりたい」。今年の4コース1着率は脅威の44・4%を誇る。

 戸田水面は12年のクラシックでSG初優出(3着)、今年3月戦で優勝し好相性。「伸びが大事なレース場。まくっていける足にしたい」とらしさ全開で戦うつもりだ。

◇地元御大・平石は久々V狙う

 戸田の御大・平石和男が近況を語った。「1年以上も優勝がないのは最近では記憶がない。何とかしたいね」と、昨年6月の戸田一般戦を最後に優勝から遠ざかっていることを気にしていた。

 勝率もまさかのA1級勝負まで追い込まれていたが、9~10月にかけての住之江G1高松宮記念で勝率アップに成功。「手応えはあった。準優で成果が出た」と、上昇の兆し。「残る多摩川とからつで何とかして地元の周年に向かいたい」と、今大会を期に流れを変えようと健闘中。多摩川では住之江の調整が合わず一から出直しとなったが、日増しに気配を上向かせ優勝戦では先行艇を最後まで追い回し2着。これで追い風に乗ったか。

 実力と実績は埼玉勢No1。ペースさえ取り戻せばこっちのも。V候補の一角として参戦する。

◇期待のホープ佐藤は気合十分

 若手の台頭が著しい埼玉支部。今大会に出場する地元勢9人の中で最も若い佐藤翼(26)にも期待が集まるはずだ。地元G1出場は今回で3回目。今年2月の57周年記念、先月のヤングダービーは共に準優進出を果たせなかった。「地元のアドバンテージはあると思うが、そのアドバンテージがあって、やっとトップクラスの人に近づける」。控えめに自己評価するのも当然の成績だ。だが、地元で何度も予選落ちはできない。三度目の正直へ向け、気合十分で乗り込んでくるだろう。

◇屈指の当地実績誇る山崎

 “ライジングスター”としての圧倒的な存在感を放つ山崎。今年G15Vの大活躍。本人は「ツキすぎて怖い」と笑うが、そのうち3回で1号艇以外から優勝をかっさらったのは紛れもなくスターの証だ。当地は03年ダービー、06年オールスターのSG2V。02年の第46回大会も制し、実績は出場選手中No・1と言える。2年ぶりの賞金王奪回へ手綱を緩めることはない。

◇3連続優出へひた走る井口

 今年のSGで抽選運に恵まれなかった井口だが、4強エンジンの一角とコンビを組んだとこなめダービーで14年SG初優出(4着)。今年2回目のG1優勝を飾った9月の徳山周年記念から3連続優出と勢いを加速させる。賞金ランクは堂々の7位だが「絶対に6位までに入らないと、と思っている」と年末へ照準。当地周年記念は07、10年に優出歴なら、大会初制覇も時間の問題か。

◇水面特徴

 戸田漕艇場の西側を利用した淡水プール。スタンドから対岸までの距離は107・5メートルで日本一コース幅が狭いレース場になる。そのためレース傾向も全国平均とは大きく異なり昨年11月から今年10月までの1コース1着率は37%と低く、4コースの1着率は高めの17%。握って回れるカドが有効なレース場になる。

 大敗するシーンでよく見かけるのが、スタートで後手を踏み行き場を失うパターン。この水面に適しているのはスタート一撃、または同体からのツケマイを得意とする選手になる。

◇エンジン診断

 現行エンジンは7月3日に導入されたもの。23~28日に開催されたヤングダービーでは前検日の時点で2連対率17%だった44号機(操者・渡辺雄一郎)が節一級のパワーを披露したように、まだまだ相場が定まっていない印象を受ける。このシリーズでの上位機を挙げるならば伸び系で松尾昂明の23号機、長尾章平の45号機、出足系統で黒井達矢の61号機に注目だ。

 確実に好素性機に分類されるのが西川昌希の16号機と稲田浩二の28号機。ほか1、12、26号機あたりが上位級に仕上がる確立が高い。

◇初日ドリーム展望

 Wドリーム戦の第1弾「ウインビードリーム」。外枠勢が前付けを行うタイプではなく、進入は枠なりに落ち着きそうだ。楽インが見込める松井が、1M先マイで主導権を握る。強敵は山崎。今年のG1戦線で驚異的な強さを見せているだけに、逆転があっても不思議はない。差しだけではなく、ツケマイを放つ可能性も十分にある。豪快な攻めが持ち味の服部はカドから一撃狙いか。平石、浜野谷、中島は的確なさばきが武器。冷静に差し場を狙ってくるだろう。

◇2日目ドリーム展望

 Wドリーム戦の第2弾は「プリムローズドリーム」。こちらもピット離れが互角なら、進入で動きはないだろう。桐生はインのスタートに集中して、1Mを先に回るのみ。旋回力では負けない以上、先手を奪えれば問題ない。怖いのはスタート自慢の井口と吉田。特にカドが見込める吉田は今年、初G1に初SGと勢い十分。桐生の最大のライバルとなりそうだ。湯川は吉田を止められればチャンスが生まれる。反対に吉田が攻め切ると、篠崎と秋山に出番が巡ってくる。

 ◆BSフジで毎週日曜日の16時~16時56分に放送されている「BOAT RACEライブ~勝利へのターン~」(司会・島崎和歌子、堂前英男、解説・秋山基裕)。11月2日の放送はボートレース戸田G1開設58周年記念 戸田プリムローズ5日目第12Rと、ボートレース住之江G3オールレディース2014モーターボートレディスカップ4日目第4Rの模様を実況中継するのでお楽しみに。ゲストはますだおかだの増田英彦とタレントの夏川純。

 ボートレースオフィシャルウェブ http://www.boatrace.jp

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