G1周年記念競走展望

【三国 G1北陸艇王決戦】初日ドリーム1枠 今垣が地元で必勝 

[ 2017年4月17日 05:30 ]

 SG並みの豪華メンバーが北陸に集まった。三国ボート開設64周年記念G1「北陸艇王決戦」は18日に開幕する。SGウイナー24人という、とんでもないメンバーに胸は高鳴るばかりだ。しかも来月のSGオールスターに出場する“人気者”も23人いる。実力と人気を兼ね備えた垂涎(すいぜん)の強力メンバー。新エンジンとあって、選手個々の戦闘能力が重要になる。歴代3位タイのSG9Vを誇る地元の今垣光太郎、初のファン投票1位に輝いた峰竜太には特に熱い視線を注ごう。

 ◎今垣 痛恨Fバネに

 99年3月の児島クラシック(当時は総理大臣杯)でSG初優勝を成し遂げて以来、SGタイトル獲得数は9回を数える。現役では3位タイ。素晴らしい戦歴だ。ただ、8回目のVから昨年12月の住之江グランプリシリーズで9回目を勝つまで、いろんな思いがあったという。

 「若い子も出てきたし、自分ももう47歳。もう(SGを)勝てないんじゃないかと弱気にもなりました。それにボクは8という数字にこだわりがあるというか、好きなんです。登録番号にも2つ入ってるし(3388)、好きだからこそ、このまま8のままで終わるんじゃないかとも思ったりして…。でも、そのカベを越えたことで、また今年もイケるんじゃないかなという気持ちになったんです」

 2月には地元三国で開催されたG1「近畿地区選手権」を制した。最高の流れで迎えた3月の児島SGクラシック。自らその流れを断ち切った。今垣が口を酸っぱくして言う「平常心」がアツくなった気持ちに負けた。2日目に非常識なFで帰郷…。「初日のドリームでヘタなレースをしたことが、その晩、寝れないぐらい悔しくて。次のレースは絶対に捲ってやろうと思ったら、あの結果です。自分を見失ってました」と振り返る。このFによりグラチャン出場権を放棄してしまったのは何とも痛いが、今垣はいつものように前を向く。

 「済んだことは仕方がないです。オーシャンカップの点数もギリギリだし、三国の記念は気持ちを切り替えてやりますよ。ただ、いいエンジンというか、中堅以上のエンジンを引くことが絶対条件ですね」

 初日ドリーム1号艇からのスタート。今垣は言う。「ボクの中で、ドリーム戦というのは特別なんです。ドリームの1着というのは、大げさかもしれないけど、G1の優勝ぐらいに感じる勲章なんですよ。だからまず、そのレースは絶対に勝ちたい。勝てば波に乗って、最後にはいい結果がついてくると思うんです」

 圧倒的な地元ファンの声援を味方にして、三国G1連覇にチャレンジだ。

 ◎峰 オールスターファン投票1位“御礼V”誓う

 峰竜太が17年ボートレースオールスター(5月23〜28日、福岡)ファン投票1位の看板を引っ提げて、三国に乗り込んでくる。ファン投票1位の肩書は峰にとってまさしく特別な金看板。峰は常々公言している。ただ「強いレーサー」ではなく「みんなから憧れられるレーサーになりたい」と。

「ボートレーサーになった人やボートに興味のある人が、“峰選手のようになりたい”と言ってもらえるような、そういう選手になりたいんです。だからオールスターのファン投票は特別。1位というのは当然うれしいです」

 本人としては「あとは、結果を出して、本当に人気のある選手になれたらいい」と道半ばを強調するが、客観的に見れば峰は着実に、自身の“理想のレーサー像”に近づきつつある。 

 それは、どのコースからでも勝負になるスタート力と技量があり、不利な態勢に追い込まれてから巻き返しを図る粘り強さがあり、凡機を与えられても立て直す整備技術があること。ことボートレースのファンが求める“レーサーかくあれかし”のファクターをことごとく高次元で成立せしめている。そうでなければ、SG未冠の峰を、オールスターのファン投票1位に推すことはない。ライトなボートレースファンはもちろん、シビアな舟券ファンも“峰竜太が次世代No.1”と期待するからこその1位なのだ。

 コースに関して峰は「自分が一番、勝てると思うところから行くのが、やはりいいのかなと思います」という。アウトからでも、ここ、というときは勝ちに行くレースをしてくれる。エンジンについても「いいエンジン、悪いエンジンというのは、どこにでも必ずある。でも、だからといって(凡機を引いて)あー、どうしよう、とはならないし、しない。慌てない。水上で目の前で起きたことを対処するイメージ」と頼もしい。

 三国では2〜3月の月またぎ一般戦に登場し、初日1走目でよもやの6着スタートもすぐさま軌道修正。9戦7勝で優勝している。4コースから1着、6コースからの2着とオープンコースで強さを見せつけた。むろんG1メンバーではそう簡単にいかないのは承知しているが、「ファン投票1位感謝行脚・三国編」の今回、随所に“峰竜太らしさ”を見せてくれるはずだ。



 SG優勝12回、G1優勝54回。生涯獲得賞金額も35億円を超えた。公営競技選手としては前人未到の記録。彦坂、野中時代や、今村豊に植木通彦。王者はすべてを凌駕(りょうが)した…と言ってもいいのではないか。ボートレースという競技において“総合力”No.1の存在。熟年世代に入った今もその存在感は揺るがない。

 数々の松井語録のなかからひとつを例にあげる。「流れは自分で引き寄せるもの」

 松井は他の選手の失敗など、“他力”のことは全く気にしていない。自分ではどうにもならないからだ。その代わり、自分の力でできることや勝つための努力は「これだけやって負けたら仕方がない」と思えるまでとことんやる。そのスタンスはこれまで一度も崩したことはない。その結果が現役最多のSG優勝回数につながっているのだ。

 ◎松井 堂々反攻宣言「流れ変えていく」

 今年は住之江のバトルトーナメントで優勝があるとはいえ、G1やSG戦線ではいいエンジンを引けずに苦戦することが続いていた。3月末の蒲郡周年では開会式で「これから流れを変えていきますよ」とファンに宣言。蒲郡では準優止まりだったが、続く前節のまるがめ周年では久々にメーカー機を引き当て優勝戦4着とまとめた。間違いなくリズムは好転。相性抜群の三国で王者の走りを見せつける。

 ◎桐生「インパクトあるレース」目指す

 引き波のないところ、つまり外から外を全速で攻めて内側の艇をネジ伏せるレース。今村豊が出てきた時は衝撃だった。植木通彦のターンにも時代が変わったことを感じた。そして今、ニュージェネレーションと呼ばれる新しい世代。桐生や茅原悠紀のド迫力ターンはさらに進化している印象だ。プロペラ調整がバチッと合った状態で桐生が見せる高速ターンは芸術的でさえある。

 そんな仕上がり、ターンを見せたのが3月の児島SGクラシック。勝つ時は運も味方する。エンジン抽選で最高2連対率機を引き当てると、ライバルたちも次々と脱落して得点率トップの座も獲得。「エンジンが良かったから乗ることだけに集中できました。その分、いつも以上にリラックスしてレースができました」。精神的にも余裕があった桐生に負ける要素はなかったか。「これまでのSGを走ったなかで一番の足」でインから豪快に1Mを先制。ぶっちぎりのSG2Vだった。

 「自分のできることはすべてやって、お客さんにいいレースを見せたい。インパクトがあるレースをすることはいつも思ってます」

 その姿勢がオールスターファン投票3位という結果に結びついている。もちろん、三国のファンにも最高のパフォーマンスを披露するつもりだ。

 ◎先行予想

 超豪華メンバー集結とはいえ、三国でのG1なら主役の座は今垣で揺るがない。児島クラシックでのF以降、雰囲気は確かに良くないが、軌道修正を図るには絶好の舞台。「いいエンジンさえ引けば、やれる自信はあります。自分も含めて地元から優勝者が出ればいいですね」とすべてを知り尽くした地元水面で全力投球の構え。まずは初日ドリームを逃げ切って波に乗りたい。正月シリーズのスポニチ杯を優勝した萩原や中島、石田、松田も地元の意地を見せるはずだ。

 地元勢以外でもやはり近畿地区の選手は三国で実績を残す。松井は直前のまるがめ周年で優勝戦4着とようやく本来の姿に戻ってきた。三国でのSG、G1の実績は抜群。石野もそう。8戦7勝で圧倒的Vを飾った2年前のSGオーシャンカップは強烈な印象を残す。魚谷、守田もV戦線をにぎわすだろう。

 近況の充実度でいえば児島クラシックを勝ち、賞金レーストップをひた走る桐生No.1。津東海地区選→徳山MB大賞と“特別戦連覇”の井口も絶好調を維持している。直前気配なら蒲郡周年V、地元まるがめ周年優出2着の森高が勢いMAX。そのまるがめ周年でG1初制覇を誕生日に飾った中田も三国に参戦する。菊地、白井、茅原の爆発力も見逃せない。

 対照的に昨年のグランプリ覇者・瓜生は江戸川、大村の両G1で立て続けにF。期末であることを考えればスタート勝負は封印せざるを得ない。苦しい戦いになりそうだ。

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