G1周年記念競走展望

【徳山G1 徳山クラウン争奪戦】白井英治 亡き少年ファンの思いを胸に

[ 2018年1月29日 05:30 ]

地元・徳山の周年に挑む白井英治
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 寒波が迫る季節でも水面は激アツだ。今年は2年ぶりに真冬の開催となるボートレース徳山の開設64周年記念競走G1「徳山クラウン争奪戦」は30日に開幕する。注目はもちろん白井英治(=山口)。6月の徳山グラチャンでの活躍も期待される地元のエースは強い思いを胸に、18年も快走を誓う。また、白井、今村豊、寺田祥の3強を含め、地元からは8人の精鋭が出場。調整の難しい徳山は地元のアドバンテージが大きい。お目当ての選手から買って、高配当をゲットしよう!

 地元で迎える周年記念でも自然体は崩さない。それでも目の奥の強い光が決意と覚悟を物語っている。2度目のSG載冠こそならかったが、昨年は充実の1年だった。優勝した10月下関周年を含め、SG、G1だけで計10優出。1年を通じて質の高い走りを披露し、特に夏場以降の猛チャージは見事だった。今年も下関の正月シリーズ、からつスポニチ杯を制し、迎えた平和島周年も優勝戦1号艇(3着)。勢いはとどまるところを知らない。

 「グランプリは残念だったけど、それ以外はいい1年だったと思う。8月のメモリアル以降が勝負だと思っていたし、そこでうまくリズムを上げることができた。住之江はもっと場数を踏んで、いつか運を味方につけたいね」

 8月。白井にとって転機となった月だ。一人のファンの訃報を耳にした。山富煌牙(こうが)君。ボートレースファンだった両親の影響で白井に憧れを抱いた少年は、横紋筋肉腫という小児がんが原因で4年7カ月の短い人生に幕を閉じた。5人の子供を育てる白井にとってもそれは大きな衝撃であり、言葉を失うほどの深い悲しみに包まれた。

 煌牙君が亡くなった後、母・和恵さんから送られた手紙には、最期の瞬間まで息子が会いに行きたいと口にしていたこと、白井が走る姿にどれだけ力をもらっていたかが、丁重に記されていた。

「心にグッときたし、本当に大きな勇気をもらいました。振り返るとあれが昨年後半に活躍できたきっかけだったかもしれない。煌牙君がいたから、頑張って体重を落とせたところがあったし、自分を奮い立たせることができました」

 ちょうど四十九日にあたる日、使っていたプロペラとシールドが和恵さんの元に届けられた。そこには「最高のファイター煌牙君へ、たくさんの勇気と力をもらいました。これからも煌牙君をボートに乗せて、一緒に走って行きます」というメッセージが添えられていた。

 「もしかしたら将来ボートレーサーを目指していたかもしれないし、一緒にレースをしていたかもしれない。そう考えるとすごく悲しいですよね。でも、今はボクのボートの中にいます。彼の分まで自分が精いっぱい走りたい。きっと一番近くで見守ってくれていると思うから」

 白井が見ている景色は、亡くなった煌牙君がいつの日か見たかった景色。例年は夏場に照準を向けることが多いが、今年は下関周年、徳山グラチャンが重なっている6月が勝負の月だと言い切る。

 「徳山は地元だし、調整方法は分かっている。ある程度はやれる自信があります。あとは仕上げの部分ですね。好きな乗り心地さえきてくれれば大丈夫。6月に向けていいイメージを持っていくためにも、しっかりと結果を残したい」

 08年以来、10年ぶりのクラウン獲得へ。亡き少年の思いを胸に刻み“ホワイトシャーク”は牙をむく。

 ◆白井 英治(しらい・えいじ)1976年(昭51)10月15日生まれ、山口支部所属の41歳。80期生として97年5月に下関でデビュー。14年SGメモリアルなどSG1V、G110V。主な同期に平田忠則、重成一人ら。1メートル73、血液型O。

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