G1周年記念競走展望

【G1宮島チャンピオンC】地元“四天王”がV戦線リード

[ 2015年1月19日 05:30 ]

6年2ヶ月ぶりの当地Vをめざす市川哲也
Photo By スポニチ

 新春3節目を迎えるボートレース宮島では開設60周年記念「G1宮島チャンピオンカップ」が20日~25日の日程で開催される。恒例のWドリーム戦(初日、2日目の第12R)にノミネートされた12人、前回覇者の前本泰和らが主役候補になりそうだが、他にも好メンバーが揃った。ここでは白熱のV争いをリードする地元“四天王”をピックアップ。今年に懸ける想いなどを聞いた。

◆久々の当地Vへ 上昇志向あふれる市川
 昨年11月の鳴門周年IN宮島で6年ぶりのG1優勝。この時点で賞金ランク18位まで躍進したがグランプリ(平和島)出場には届かなかった。

 「チャレンジカップ(下関)を走れなかったし、無理だと思ってました。記者の皆さんには(チャレンジC前の)福岡周年で優勝すれば行けると言われたけど、この世界はそんなに甘くないと分かってますから」

 それでも昨年後半の活躍は復活を十分にアピールするものだった。10月には江戸川MB大賞で5年11月ぶりの特別競走V。地元エース石渡鉄兵のイン戦を2コースから差し切ったのだから値打ちがある。G1、G2を各V1。昨年の広島支部MVP級の成績と言ってもいい。しかし、なぜか市川の表情は硬い…。

 「11月の記念は自分でしっかりペラを叩いてエンジンを仕上げた結果の優勝ではないので満足できないですね。うれしいのはうれしいけど、素直に喜べないんですよ。あの時(準優、優勝戦)はかなり叩いたつもりだったけど、水を少し逃がしたりする程度の微調整でしたから。結局は前本(泰和)クンが(前の節に)叩いた形を崩すことができなかった…」

 そんな市川の今年の目標は「(宮島開催の)グラチャンに出たいです」に尽きるか。そのグラチャンの出場権を取るには3月・尼崎クラシックで優勝戦に乗るしかない。「ワースト級のエンジンでどうすることもできなかった」と振り返る12月GPシリーズ(平和島)で優出していれば気分よく正月を迎えることができたのだが…。とにもかくにも尼崎が勝負だ。

 「いいエンジンを引けるかどうか分からないし、今から肩に力が入りすぎても…。それよりもレースも整備もペラ調整も上手になりたいです」

 賞金王V、MB記念で完全Vという輝かしい実績を持つ市川から「上手になりたい」という思いを聞かされるとは全くの想定外だが、逆に言えばそれだけ上昇志向があるということだ。

 「(11月のG1優勝)表彰式で多くのファンに喜んでもらえたのがうれしかった。ホント、1人も残ってないかも…と心配してたんですよ」

 正月の広島ダービーは「準優はペラを失敗してました」と優出できなかったが、最後は【2】【1】で締めた。少しずつペラ調整の“引き出し”が増えているのは確か。6年2カ月ぶりの宮島チャンピオンカップVで“自信”も取り戻してほしいものだ。

◆当地実績は抜群 連覇めざす前本
 昨年は19回の優出を数え、そのうち優勝は11回。一昨年12月の賞金王シリーズ戦V(住之江)でSGウイナーの仲間入りを果たした翌年というのに一般戦中心のあっせんというのは解せないが、前本は黙々とレースを消化して優勝を量産してみせた。

 凄いのはV11が全部1コースからだったこと。イン戦でV逸したのは9月の江戸川だけ。「全部1号艇だったかは忘れたけど、すんなり逃げたレースばかりではないですよ。まあ、インならスタートをしっかり行けば勝つチャンスが膨らみますからね」。一般戦の舞台なら予選での得点能力が高く、準優→優勝戦の好枠は“指定席”のようなものなのだ。

 一方、SGレースは3月クラシック(尼崎)、6月グラチャン(浜名湖)、10月ダービー(とこなめ)、12月GPシリーズ(平和島)に出場。準優に乗ったのはダービーだけ(3着)と苦戦を強いられた。結果、今年のグラチャン選考順位(SG優出で優先出場、あとは予選ポイントの合計順)は現在49位。対象期間内のSGレースは3月のクラシック(尼崎)を残すのみだが「まだチャンスはある」と自力(優出)での出場権取りを意識している。

 話が前後するが、昨年V11の原動力は何なのか…を本人に直撃してみた。「たまたまですよ」と笑って返答したが、少し考えて「1戦1戦、目の前のレースに集中した結果だと思います」と続けた。期待した“秘密”は聞けなかった。

 それにしても、宮島での強さは何だ。直前の広島ダービー(正月レース)まで実に9連続優出。その中にはG1(優勝)、G2(5着)も含まれている。とにかくエンジンを出す。これに尽きる。前本は宮島専用のペラゲージを持っている、とうわさされるぐらいだ。しかし、前本は「いろいろなゲージに合わせて叩いて乗ってみて、シャッフルしながら一番いい状態を探すだけ。コレという自分の形があるわけではないですよ」と話す。乗ってみての体感でペラを調整している。

 “同門(師匠は西島義則)”の先輩で兄貴的な存在の亀本勇樹は「彼は努力家。今までの蓄積が結果に表れてますね。持ちペラの時代から自分で叩いて、それから乗って、体感でペラを微調整…というパターンを持っていた。よく腰や首が痛いと言ってたけど、家でペラを叩かなくてもいい時代になってからは整体に行って身体のケアに時間を割いてるみたいだし、もっとSGタイトルを取ってほしいですね」と前本賛歌。チャンピオンカップ連覇の期待は膨らむばかりだ。

◆地元周年初Vへ エンジン全開の辻
 昨年の辻はチャレンジカップ(下関)、GPシリーズ(平和島)には出場したが、メモリアル(若松)の【2】着が最高でSG、G1、G2では優勝がなかった。それを踏まえて、昨年を次のように振り返った。

 「去年はあまり活躍できなかったし、いい年ではなかったですね。若松のメモリアル(MB記念)はたまたまうまくいっただけ。(獲得)賞金(ランク)的にはまあまあだったけど、納得できる成績ではなかった。ずっとペラ(調整)に悩んでました」

 それでもグランプリ出場に手が届きそうな位置につけていたのだから、広島の誇るトップレーサーに変わりはない。昨年が不本意な成績だっただけに、今年は期するものが大きいはずだ。

 「この前のグランプリは見ていて楽しかった。茅原(悠紀)クンが優勝したレースは特に面白かった。平和島だったこともあるだろうけど、ああいう舞台で走るのは楽しいだろうな…と純粋に思いました。だから、グランプリに出たいです。あっ、でも今年は住之江でしたね」

 いきなりグランプリの5文字が出て少し驚いたが、辻は賞金王ウイナーなのだから目標がGP出場というのは当然だ。ただ、今年6月のグラチャンは宮島での開催。てっきりグラチャンVが目標と思ったのだが…。

 「(選考)順位(現在19位で当確)も見てないです。グラチャンは出場できたらいいな…という感覚。ボクは意気込みすぎると良くないタイプなので、優勝を狙うとは言いません(笑い)。でも、取れるものなら、どんなタイトルでも欲しいですよ」

 どんなタイトルでも…の中には、もちろん地元周年のチャンピオンカップも含まれている。この地元周年はまだ優勝がないだけに、なおさらだ。そして、正月の広島ダービーを走り終えた時、こう言った。

 「調整が合ってない時の理由がハッキリわかったんですよ。これをやったからダメだったというのが…ね。気温も同じぐらいだろうし、これが今度の周年ではアドバンテージになると思います」

 正月レースの後に遠征した蒲郡(一般戦)では122122211【2】とオール2連対で優出。優勝戦は6号艇でコースが取れずスタートも不発で5着に終わったが、走りのリズムは悪くなかった。地元に帰って、さあエンジン全開だ。

◆山口、正月早々好発進もあくまでクール
 年またぎ開催の正月レース「広島ダービー」(栄光盾競走)で10戦8勝V。1回走りの3日目から6連勝の圧勝劇だった。「出足関係がいいのでスタートが決めやすかったし、回った後の押しも良かったですからね」。ダッシュ3艇(正木聖賢13―山崎裕司11―山下和彦09、数字はスタートタイミング)にスリットでリードを許したが、山口自身もインからコンマ16を決めていた。難なく逃げ切って幸先のいい新年の滑り出しとなった。

 山口は昨年、SGやG1だけではなく一般戦でも優勝から見放されている。振り返って「いいエンジンを(抽選で)引けなくて苦しんだ1年でした。ペラ調整とか整備とか…やってることは同じなんだけど、良くないエンジンだと出てくれないですね」と話した。

 10月のダービー(とこなめ)でドリームメンバー入り。それもランク2位で2号艇。「ボクは例年、この時期から調子が上がるんですよ。だからグランプリ(の出場)だってあきらめてません」と強気だったが、最近10節の成績表にあるように転覆などの事故が続いて“18人”に入ることができなかった。

 「エンジンが出てないからターンで無理してしまう面がありましたね。その結果が転覆とか妨害失格とか…。チャレンジカップ(下関)では転覆した時に脳しんとうを起こしたし…。選手になって13年目ですけど、そういうこともあるんだな…と思ってます」

 そんな昨年の経験が早くも生きたのか“自然体”の走りで正月早々に優勝。「去年は前半の(成績の)感じだとグランプリに出ないといけなかったし、広島から一人も出てないのは悔しかったですね」と今年の目標に挙げる年末のグランブリ(住之江)出場へ、まずは好発進と言えるだろう。

 GP出場へ賞金を稼ぐという意味でも今回の周年、6月のグラチャンと地元のG1、SGが勝負だ。グラチャンの選出順位は現在39位。ほぼ当確だが「そうなんですか。実はグラチャンの順位は気にしてないんですよ。意識しすぎるとダメなので、もう何年も前から目の前のレースに集中することを心がけてますから」と言うから驚きだ。

 チャンピオンカップだけではなく、まだ宮島ではG1優勝がない。勝ちたい気持ちは強いはずだが「ほっといても気合が入るので抑え気味ぐらいでちょうどいいと思います」とクールな表情で“勝負の時”を迎えようとしている。

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る