G1周年記念競走展望

【G1徳山クラウン争奪戦】SG初制覇の勢いそのままに 凱旋Vめざす白井

[ 2014年9月15日 05:30 ]

地元・徳山で凱旋Vを狙う白井英治
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 秋の気配が漂うボートレース徳山は16日から開設61周年記念「G1徳山クラウン争奪戦競走」が開催される。超豪華メンバーが徳山プールに集結。初日にクラウンドリーム、2日目にすなっちドリームとダブルドリームが組まれたほどだ。中でもSGウイナーの仲間入りを果たした白井、ベテラン今村の地元両者がV争いをリードする。王者・松井繁、昨年準Vの今垣光太郎もV候補グループにカウントしたい。“2番手勢力”にも注目選手がそろった。地元の若手からは谷村一哉、原田篤志、遠征陣からは徳山巧者の今村暢孝、吉川元浩、重成一人。双璧の35、44号機でも引けば、一気に突っ走る可能性を秘める

 待ちに待ったSG初優勝を決めた白井英治が徳山に凱旋する。先の若松で開催されたメモリアル(MB記念)で2コースからオンライン(コンマ00)でスリット一気にまくり一撃で他艇をぶっちぎって、SG優出14度目で悲願の優勝を勝ち取った。

 212着と2日目まで順調に着をまとめていた3日目、思わぬ落水のアクシデントに見舞われた。選責減点がコールされた。しかし、動じることもなく4日目から一点に集中する冷静さと迫力できっちり巻き返した。優勝戦では体重をさらに1キロ減量して51キロと限界に近いスレスレに絞り込んでいた。

 レースでは時として運に恵まれた勝者もいる。しかし、白井は違った。自らの手で栄冠をつかんだ。獲得賞金も3位に付け、暮れのグランプリ(賞金王)は決定的。「気持ち緩めている場合ではない」と気持ちを引き締めて徳山に乗り込んでくる。

 
 艇界史の記録を塗り替えてきた男、今村豊。53歳とは思えないほど走るごとに進化を遂げている。5月のボートレースオールスター(笹川賞)、6月のグランドチャンピオンではいずれも優勝戦1号艇。惜しくも菊地孝平に阻まれ大魚を逃している。「常に最高峰のSGレースで戦いたい。相手が強ければ強いほど、自分もそこに身を置き、1走入魂の全力投球を目指している」と。ここ10節走って優出6、1Vと好調を維持している今村が10年間待った王冠を奪い取る。

 徳山は3年ぶりに参戦する王者・松井繁も黙ってはいないだろう。若松のメモリアルを終えた段階で獲得賞金は2位をキープしている。変わらず慌てず騒がずのスタイルを貫く。正月レース優出【2】からスタートした松井。2月の地区選手権で優勝決め、その流れで3月のボートレースクラシック(総理大臣杯)でSG12度目の優勝を飾っている。ファン必見の王者が華麗な舞いを披露する。
 
 当地56周年記念の覇者である今垣光太郎。昨年の同大会はファイナルにコマを進め、不利な6号艇だったが、前付け4コースに回り込み2着でゴールイン。変幻自在のハンドルさばきは健在でV候補の一角だ。

 坪井康晴にとって徳山は忘れもしない初優勝を決めたプール。デビューして2年6カ月の快挙だった。今ではSG 2V、G1 8Vと記念戦線では常連となっている。徳山は53周年に優勝、55、59周年は準優勝と実績は抜群。地元勢を脅かす一人だ。

 12、13年連続でグラチャンを連覇した太田和美。賞金王を含めSG 6V、G1 14Vと輝かしい戦歴を残している。徳山では52、54、59周年記念で優出【3】、【2】、【3】着の実績を残す。冷静沈着、かつ大胆なレース運びでVを呼び込む。

 半月が過ぎようとしているが興奮冷めやまず。山口支部の谷村、白井、寺田の3人が1、2、3号艇を独占した若松メモリアル。優勝戦一番乗りを決めたのが寺田祥。徳山周年記念では過去3度の優出を決めているが、優勝はない。ここ3節連続優出を決めているこの勢いで徳山初冠を決めて見せる。

 記念戦線に復活した原田幸哉、また57周年記念で2、3着に終わった田村隆信、井口佳典も虎視たんたん。広島勢で唯一ドリーム戦に乗る山口剛も軽視禁物。

◇トップレーサーへの道を突っ走る吉田

  ひとつずつ、足音を高くして着実に階段を駆け上っているのが吉田拡郎だ。11年の津MB大賞でG2初優勝を飾ると、その翌年は丸亀でのMB大賞でG2で2Vを上げる。その年の戸田総理杯では初のSG優出(4着)も経験した吉田。この頃から全国区に名を売るようになった。
 
 今年の大村周年記念では予選トップ通過から準優と優勝戦は危なげなく逃げを決めてG1での初優勝を決めた。津のMB大賞を制した時も予選はトップ通過。準優、優勝戦もインから圧倒した。どうやら一端リズムをつかむとその勢いで突っ走るタイプのようだ。G2、G1とホップステップ。そしてジャンプしたのが今年7月の丸亀オーシャンカップ。優勝戦の1枠を勝ち取った吉田に緊張の色は見られなかった。全速のSではなかったものの1Mは会心のターンで他を寄せ付けなかった。見事なSG初Vだった。「来年のことは分からない。でも今年は最後の最後を目指して頑張りますよ」大言壮語はしないタイプの吉田が口元を引き締め、こう宣言した。直前の児島周年記念では優勝戦で3着。リズムはが然、吉田に傾いている。

◇SGで躍進を見せた谷村

 アッと驚く、このフレーズがピッタリだったのがSG・ボートレースメモリアル(若松)での谷村一哉の活躍だ。
 
 伏兵的な立場での参戦だったが予選の初日から堅実な走りをみせた。
 
 特に2日目の2着はP離れで遅れを取りながら大外6コースから食い込んだ価値あるもの。
 
 「4号艇で6コースになりながら2着を取れたのが大きかった」。
 
 予選が終わってみれば毒島誠が得点トップ、谷村は2位でクリア。
 
 準優戦もトップバッターで登場した山口県の先輩、寺田祥がカド捲りで先陣を切ると、2番手の谷村がインからキッチリ逃げて続く。
 
 最後は白井英治が捲りで締めくくり、山口県勢が優勝戦の1~3号艇を独占。優勝戦の1号艇を谷村が手中にした。
 
 「1号艇、インからしっかりスタートを行くだけ」。結果は2コースの白井がタッチS、インの谷村もコンマ07とスタート踏み込んだが白井の捲りの前に【6】着。
 
 悔しさもあっただろうが5戦目のSGでこれだけの成績が残せた。結果は結果として今後の谷村に自信になったことは間違いない。
 
 大きく成長した姿を地元のファンに見せてほしい。再び“山口旋風”を期待しよう。

◇“絶品ターン”に注目の重成

 少数精鋭の6人が出場する四国勢からは、当地周年4年連続の登場となる重成一人(36=香川)に注目したい。近況はエンジン出しに苦しみながらも7月津、8月丸亀と一般戦で2節連続優勝。納得の行く水準に仕上がれば、間違いなく優勝戦線をにぎわしてくれるはずだ。

 「徳山周年はよく呼んでもらってますよね。エンジン差が大きいので、やっぱりいいエンジンを引かないと苦しいかなという感じはします。勝つ時はだいたいインなので、逃げられるいいイメージはありますよ」

 言葉通りに当地のイン戦は過去3年で5戦5勝。数字は全て周年記念を走ってのものだから価値があるだろう。11年の当地周年で優出した際には「1Mで回った後にグイッとくる感じがあって、その足をキープしながら乗り心地もきた」と話したように、重成の生命線と言えばターン回りだ。

 「最近そこが思うように仕上がらないから、苦しんでるんですけどね。徳山は展示タイムが独特だし、調整が難しいところもあるけど、ターンの足さえくれば、レースはできます」

 旋回テクニックはボート界でも指折り。絶品ターンで存在感を示したい。

◇吉川、強気なレース運びでVなるか

 徳山水面は09年の周年記念【2】から今年7月戦は圧巻のV逃げ圧勝で5連続優出中と実績は抜群。現モーターの乗艇経験と気温に対応した実戦ペラ知識は何とも強みだ。

 運命を変えた95年1月の阪神大震災。一念発起してボート界に飛び込み険しい道のりが闘志の源となっているのは確かだろう。09年に自己最高勝率8・95をマークして2度目の勝率No.1の座を獲得。抜群の安定感は絶大な信頼を勝ち得ている。吉川を一躍、スターダムにのし上げた07年の福岡グランプリ(賞金王決定戦)だ。SG初戴冠に輝いた瞬間の感涙シーンは今でも鮮明な記憶に残っているファンは多い。

 昨年は16優出で優勝7回と強気なレース運びは健在。今年は1月に地元の尼崎W優勝戦で幸先良くV発進。その勢いで2月の住之江第57回太閤賞はG115回目の制覇。7月に徳山、8月は尼崎でV4ゲット。だがSG戦線では福岡オールスター、丸亀オーシャンC、若松メモリアルで予選突破を果たすがV報告は後一歩届かず。10年から途絶える大一番・グランプリ(賞金王決定戦)出場に向けてもう足踏みはできない現状だ。世評も高いスタート力とコーナーテクニックは候補の一角でファイナルを熱視―。

◇円熟のハンドルさばきで攻める今村暢

 やまと競艇学校長の植木通彦氏とは同期の59期生で49歳。今年4月の唐津マスターズ(名人戦)でも勝率トップで初日ドリーム戦は1号艇シードが好調ぶりを証明。巧みなハンドルさばきが持ち味でG1優出は30回でV5の功績。SG優出は5回で昨年10月の平和島ダービー準優戦で瓜生正義とのし烈な優出争いはテクニシャン・今村暢の本領を見せつけた。徳山開設48周年記念では、先マイ今村豊のわずかな間げきをつく絶妙差しで、猛追迫る今村豊や浜野谷憲吾、辻栄蔵らを振り切ってクラウン杯の初戴冠は記憶に鮮明に残る。12月のMB大賞でも準優勝と潜在能力は一級品。徳山は一般戦でもV実績を残して苦手意識はない。昨年は14優出で今まで優勝実績がなかった福岡を含めてV4、今年は1月の芦屋V1と数は少ないが10優出で常時7点強の高勝率をマークする充実ぶり。
 
 イン水域に構えて若手のスピード自慢をガッチリと受け止めるハンドル操作の確かさは円熟の境地。時として一つでも前へ突進…強気なレース運びは不良航法を科せられることもあるが“水上の格闘技”とファンは声援を送る。妥協せずに卓越したペラ調整と本体整備。メモリアル・徳山で勝つコツ、勝てるパターンを十分に披露してくれよう。

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