G1周年記念競走展望

【下関チャレンジC】“第5章”制覇へ 全速で駆け抜ける白井

[ 2014年11月20日 05:30 ]

若松ボート「第60回ボートレースメモリアル」優勝戦、1周2マークを力強く旋回する白井英治
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 ボートレース下関「SG第17回SGチャレンジカップ・G2レディースチャレンジカップ」は25日に開幕する。86年の創設から名勝負を生み続けてきたグランプリ(賞金王決定戦)。昨年までは出場選手は12人。つまり“二十四の瞳”が頂点を見上げた。今年からは出場枠が拡大されて18人が最後の決戦に臨むこととなる。その大一番を前にして最後の追い込みがチャレンジカップだ。また女子の獲得賞金上位20人が大みそかのプレミアムG1クイーンズクライマックス出場12の座をかけて争うレディースチャレンジカップも同時に開催。チャレンジカップの優勝賞金は2500万円。レディースチャレンジカップは400万円。見逃せない晩秋の乱である。

◆SG初制覇の勢いそのままに 地元Vめざす

 順風満帆。今年の下関正月シリーズで白井英治は優勝を飾り幸先いい滑り出しを見せた。続く福岡でも優勝し、2月には下関に帰って来た。その中国地区選手権では優勝戦で1枠を勝ち取り、コンマ17のスリットで駆け抜けて同大会での2Vをやってのけた。意外にも白井の下関でのG1制覇はこれが初めてだった。ヒーローインタビューで「正月に続いてここで優勝できたのはうれしい。また周年記念もあるし第3章に向けて頑張ります」と力強く言葉を結んだ。第3章の59周年では準優3着で惜しくも優出とはならなかった。
 
 逸機は3月。尼崎のボートレースクラシックだ。準優12Rの1号艇をつかんだもののSで後手に回って敗退、涙をのんだ。SGに最も近い男として幾度も名を挙げられた白井。この時の屈辱は重く胸を締めつけた。

 ナイターSGのボートレースメモリアル。舞台は若松へと変わる。前検日のモーター抽選でも吉と出た白井は初日から【2】【1】【2】と快進撃。ところが3日目には落水となる。減点を取り戻せるのか。周囲の心配もよそ目にその後も【1】【2】の成績で優勝戦にコマを進めた。その一番は左右に谷村一哉、寺田祥の山口両者。長州決戦とも呼ばれた。インの谷村がコンマ07のS。しかし上には上がいた。白井だ。タッチの00でスリットを通過すると鮮やかに捲り切ってしまった。過去SGの優勝戦では2着が3回、3着が4回と苦杯をなめ続けた男がSG14度目の優出にして初の栄冠をつかんだ。

 「ほぼ全速のSだった。支えてくれた人たちに感謝したい」と唇をふるわせた白井に、師である今村豊が駆けつけ愛弟子を抱きしめる。流した涙は一瞬こちらの方が早かった。常滑ダービーでの負傷もあって、下関の60周年記念は欠場となった。白井の下関第4章は空白となったが、そのぶん今年最終ページとなる下関第5章での気合は倍加する。年末の平和島で開催されるグランプリの出場権も手にし、ひとつリラックスして望める終章に晩秋の追い風が吹き抜ける。

◆下関は好相性 気迫で勝る海野

 逆境に強く、敗戦を良き栄養剤としてステップアップして来るのが海野ゆかりであろう。昨年、芦屋で開催された第2回女子賞金王決定戦ではベスト6に名を連ねた海野。優勝戦は平山智加の後じんを浴びて2着。第1回の大村女子賞金王決定戦には出場できなかったが、まずはウップンを晴らした格好ともなった。

 海野が逆境を跳ね返したのは10年前に多摩川で行われた第17回の女子王座。ことごとくインが将棋倒しとなったシリーズ。優出メンバーもインを避けたいと口にする選手が多かった。「それならば私がインで勝負したい」とキッパリと言い切った海野。公約通りに優勝戦はインから逃げて第17代の女王に輝いたのである。

 08年にはつまずいた。出走回数が足りず屈辱のB2落ち。しかし、女子リーグの最終戦となった尼崎で優勝してB2ながら女子王座の出場を果たしている。苦難を前にした時にこそ敢然と立ち向かうのが海野で、底力を見る思いだ。

 「海水よりも淡水の方が成績がいいんですよ」とも言うが、海水であるここ下関での実績も抜群だ。最近10場所では10、13年にタイトル戦で優勝し14年にはオールレディースでもVの好成績を収めている。その反面、Fもここ10場所で2回。気迫が長所にも短所にもなるが、いつでもやる気満々、元気いっぱいだ。

 逆境を克服し続けてきた今の実力がある。好相性の水面で、海野らしさを全開に大暴れしてもらいたい。

◆総展望

 最終のステージに立つこと。これがプロの矜持(きょうじ)でもあろう。プロ野球なら日本シリーズの舞台へ。歌手であるならさしずめ大みそかの紅白歌合戦の舞台に立つこと。これが夢でもある。

 今年、年末のグランプリ(賞金王決定戦)の舞台は平和島。昨年までとは改正点がある。トライアルは第1ステージと第2ステージを設定。賞金ランク6位までの選手は、第2ステージで第1ステージの6位までの6人を待ち受け3日目から登場する。初日、2日目は7位から18位までの12人で争い、その得点6位までの選手が第2ステージに勝ち上がる。いずれにしても獲得賞金18位までが最後の決戦に挑むこととなり“億の細道”はやや道幅も広めることになる。

 優勝賞金は2500万円のチャレンジカップはその舞台に上がるための最終トライアル。福岡のボートレースオールスター、浜名湖のグランドチャンピオンと今年SGで2勝した菊地孝平はすでに獲得賞金で1億円を突破している。王者・松井繁はチャレンジカップ16回目の出場。これは浜野谷憲とならび最多回数だ。今年もっとも活躍した選手と言えば山崎智の名を挙げたい。SG優勝はないもののG1で5回の優勝は見事と言うしかない。今年、若松のボートレースメモリアルでSG14回目の優出にして悲願成就の初Vを飾った白井英は師である今村豊と同じ舞台での決戦に挑む。

 遅咲きと言っては失礼か。でもファンはこの日を待っていた。デビュー23年目。常滑のボートレースダービーでSG初戴冠は仲口博だ。瓜生正、池田浩の大砲も爆発の予感だ。 
 
 レディースチャレンジカップの出場選手は20人。男子は準優3個レースを実施するが、こちらは5日目までの得点率上位6人がベスト6にコマを進める。まさに1戦必勝。後なき戦いだ。三国での第28回レディースチャンピオンで優勝を飾った水口由が獲得賞金でトップ。とはいえ選考期間において獲得賞金は16位の守屋美までが2000万円台。20位で滑り込んだ向井美も1800万円を超える。レディースの優勝賞金は400万円。大みそか決戦のクイーンズクライマックス(賞金女王決定戦)に出場できるのは獲得賞金上位の12人まで。ソロバンを弾くと誰にでもその舞台に登れるチャンスは巡って来るわけだ。徳山に下関で女王の座につくこと2回の寺田千。同じくこの大会2Vの日高逸は当地の実績は豊富だ。一昨年に新たなページを開いた賞金女王決定戦で優勝を飾った三浦に、第2回の賞金女王を制した平山智も仁王立ちする。

◆モーター診断

 現在使用されているモーターは今年2月の中国地区選手権競走がおろし立て初節。すでに20節以上を消化してモーター相場もクッキリと色分けされてきた。勝率No.1は6・80の64号機。6・20の55号機、6・05の37号機がそれに続く。

 64は2月・60周年記念で寺田祥が優勝。3月に川北浩貴、8月に山本修一、9月には川口貴久で4V。優出も10回を数えるエースモーターだ。先月の59周年記念では原田篤を優勝戦2着に導いた。37号機は7優出で3V。優勝者の顔ぶれは2月の今泉和則、4月のオールレディースの海野ゆかり、同月の平尾崇典と乗り手にも恵まれている。ただこの37、異変が起き始めている。59周年では徳増秀が手にしたが意外な動き。3走した後にピストンを交換したものの結果は出なかったし、前回の林明治も低調気味。温水パイプの影響が出て来たのかも知れない。見極めは必要だろう。

 55は優出は8回。優勝戦で2着から6着まであるが不思議と優勝には縁がない。2月の地区選では茅原悠紀が優勝戦で2着。その節には新ペラ基準となって最速の1分44秒1をマークしている。

 かつてはエース機候補だった36号機はこのところやや下火だったものの前節には進藤侑が優出3着。節イチを誇っている。19、47、60、72、74が近況赤丸急上昇だ。19はチルト0で走っている選手も多いが脅威の伸び型。59周年の乗り手は東本勝。47は前節に浜崎誠が優出2着。前田将が59周年で優勝戦6着だった60は前節は中島真が優勝戦で5着。10月に丸岡正が優勝した72はその後、山田竜、豊田光が引き継いで相変わらずのいい動きを見せている。74は最近7節連続して賞典レースにコマを進めている。優勝は8月の中田竜の1回だけだがラッキーナンバーとなるだろう。

◆下関の水面

 瀬戸内海に面するボートレース下関は1Mから対岸までの距離が123メートルと広大なプール。大潮が3メートルを越える満潮の時刻となれば1Mにウネリが入るが、静水面に恵まれることが多い。1Mは2Mから20メートル振られておりセンターからの決まり手も多彩だ。ピットから2Mまでの距離は173メートル。そのためP離れも優劣がつく。インの1着率は過去1年間に直近の6カ月でも50%前後の数字を残している。前回59周年記念ではインの1着率は55・5%だった。

 ただ、この時季は風向きが変わることにより波乱の要素もある。先月のボートピア山口あじすオープン3周年記念では、インが16連敗のケースもあった。気温の低下に伴いモーターの回転アップは出足強化につながる。イン優勢の図式は強くなるだろう。

◆ツイッター連動企画

 SG第17回チャレンジカップ、G2レディースチャレンジカップは、29日の準優勝戦を山口放送、30日の優勝戦を山口朝日放送で中継する(16時~16時56分放送)。その地上波中継内でツイッターと連動した企画を実施。選手やゲストへのメッセージ、番組の感想などをハッシュタグ「♯BOATRACEライブチャレンジカップ」をつけてつぶやくと、選ばれたものがリアルタイムで放送される。さあ、あなたもハッシュタグをつけてつぶやいてみよう! 
 
 ※ハッシュタグ「♯BOATRACEライブチャレンジカップ」をつけてつぶやくと番組内で紹介される場合がありますのでご了承ください。

◆制度変更

 1998年(平成10年)に創設されボートレースのSGレースでは最も新しい競走。優勝賞金は2500万円。開催年の1月1日~10月31日までが選考期間でそれまでの賞金獲得額の上位選手が出場する。昨年の第16回までは上位52名に出場資格が与えられたが、今年からはレディースチャレンジカップが併設され、そのシリーズに女子20名が出場するため獲得賞金上位の32名が出場となる。

 20人が出場し新設のG2レースが「レディースチャレンジカップ」。今年1月から10月までの賞金上位20人が出場し優勝賞金は400万円。年末のプレミアムG1「クイーンズクライマックス」の出場権をかける。

 1日のレース区分は初日から4日目まではチャレンジカップが8レース、レディースが4レース。5日目のみがチャレンジ7レース、レディースが5レースで行われる。勝ち上がり方式はチャレンジが予選を4日間で行い準優は5日目の3個レース制、レディースはポイント制で5日目までの得点上位6人が優勝戦に進出する。初日は12Rでチャレンジのドリーム戦、11Rではレディースのドリーム戦を実施する。

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