G1周年記念競走展望

【宮島G1大渦大賞】鳴門勢が“秋の宮島”席巻 

[ 2015年9月28日 05:30 ]

来年7月、鳴門で開催されるSG「オーシャンカップ」出場を目指す市橋卓士
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 鳴門周年が昨年11月に続いてボートレース宮島で開催される。「G1大渦大賞IN宮島」鳴門開設62周年記念競走。賞金ランク4位の毒島誠に池田浩二、瓜生正義、今村豊、白井英治、菊地孝平らが“秋の宮島”に集結する。きょう、このページは“鳴門周年”に気合が入る徳島勢から市橋卓士と浜村芳宏、大会連覇の懸かる地元G1戦に燃える市川哲也を中心に構成。開幕は29日、ファイナル優勝戦は10月4日だ。

 ◆市橋 エース格「見せ場つくる」
 ~来年7月鳴門でのSG開催 オーシャンカップ出場意欲~
  昨年11月の61周年に続いて今回62周年も宮島での開催だ。前回はエース田村隆信が予選6位で準優に進出したが、優出を逃し“鳴門勢”の名前はなかった。迎えた今回は田村を除く5人が昨年のリベンジに燃えて乗り込んでくる。

 そして、田村に代わるエース格として期待されるのが市橋だ。今年の四国地区選手権(丸亀)ウイナーということもあり、徳島から唯一ドリームに選出され「地区選以外のG1でドリームに乗せてもらうのは初めてなんですよ。6号艇ですか…。なんとか見せ場をつくりたいですね」と燃えている。

 宮島は盆のスポニチ杯を走ったばかり。地元勢を相手に孤軍奮闘して準優は1号艇。がっちり逃げて優勝戦は3号艇。カド4コースに持ち出したが、結果は【3】着だった。

 「スタートを失敗してしまいました(コンマ25)。カドになったので捲る気満々だったんですけど…。でも、1節走って収穫はありましたよ。水面に慣れたし、いろんな起こし位置でスタートする時の風向きとか景色とか、だいぶ研究できましたからね。低出力になると多少変わると思うけど、1カ月前に走らせてもらったのは大きいんじゃないですかね」

 市橋が言うように、今回は低出力エンジンにチェンジしている。ただ、盆の後の活躍ぶりを見ると心配は無用だろう。蒲郡のSGメモリアルで堂々の優出。優勝戦は4位を走っていた3周2マークで転覆してしまったが「上の舞台の雰囲気が味わえたし、いい経験ができました。優勝戦はコケてしまったけど、攻めた結果なんで後悔してないです」とSGタイトルを間近に感じることができたのは大きい。

 ひと回りもふた回りも成長したことを証明したのはメモリアル直後の三国周年だった。2連対率29・7%の低勝率機で予選をトップタイで通過したのだ。中辻崇人との抽選に勝って予選1位で臨んだ準優は最も得意とするイン発進。逃げて優勝戦1号艇という計算だったが…。

 「あんなに遅いスタート(コンマ27)とは…。練習で入ってなかったので遅らせて行ったんですけど…」

 スリット後に伸び返しただけに、3着という結果も合わせて“もったいない”レースだった。それでも最終日11Rの特選A戦はインからコンマ09のトップスタートを決めて逃げ切り、精神的に強くなったことを証明してみせた。

 21日現在の賞金ランクは30位。GPボーダー18位との差は640万円。今回の鳴門周年で優勝すれば一発逆転、優出すれば手を伸ばせばすぐ届く位置まで迫ることができるが「もちろん、それ(GP出場)は虎視たんたんと意識してます。でも、それ以上にオーシャンカップですね」と言うように、来年7月に地元の鳴門で開催されるSGの出場権取りが一番の目標なのだ。

 「オーシャンカップ出場を一番意識しているし、絶対に出ないといけないと思ってます」

 三国で優出を逃したのは痛いが、まだ来年の4月までチャンスは残っている。オーシャンカップはG1の優出ポイントで出場が争われる。優勝すればほぼOK。2着とプラスアルファで有力。まだ7カ月あるが、できれば早く決めたいものだ。
 
 蒲郡も三国も2連対率が低いエンジンをいち早く立て直して上位のパワーに仕上げた。低出力エンジンでの勝率7・58は全選手中36番目の数字で今回メンバーでは8番目だ。第一ノルマの優出はもちろんのこと、優勝も狙えるだろう。

 ◆浜村 好相性の舞台だ
 ~整備巧者見せる~
  7月の男女W優勝戦(なるちゃんカップ)で優勝したシーンが記憶に新しい。5号艇だったが、選択した位置は大外6コース。ところが、レースは何があるか分からない。1マークで“前競り”が発生。鋭角度の差しで突き抜けたのだ。

 「(6号艇の烏野)賢太が特訓から前づけする気満々だったし、こっちはそこまでエンジンは出てなかったし、一緒に深い進入になっても…と思っておとなしく6コースから行った。でも、分からんもんやね。あんな(前競り)展開が待ってるとは…」

 なるちゃんカップは鳴門のタイトル戦だが、休催中のため宮島で代替開催。女子の部は岸恵子が優勝。男女そろって“地元V”となった。それにしても宮島は相性抜群だ。前々回の鳴門60周年は予選落ちしたが、その前の昨年8月・企業杯まで3連続優出(【2】→【5】→【3】)している。「コレという理由はないけど、もともと海水のレース場は得意だからね」。難水面の鳴門で鍛えぬかれたターンが宮島でも生きるということだろう。

 ところで、浜村といえば“整備巧者”というイメージ。ただ、持ちペラ制の廃止→低出力エンジンの導入など整備環境の激動でアドバンテージはなくなった感がある。とくに低出力エンジンは「悪いのを引くと厳しい。この前(前走)の尼崎がそうだった。いろいろ本体の整備もしたけど、スタートが届かないし、ターンで押さない」と浜村の整備力をもってしてもどうしようもないようだ。

 それでも浜村には“天才メカニック”と呼ばれた感覚がある。「低出力のペラの形は何パターンかある。たいてい前検日に叩きますね」。ペラ調整主体でイケると感じるか感じないかに応じてギアケースや本体の整備に取りかかる。今回の宮島は新エンジン2節目で半分が新品のエンジンでペラも新ペラ。「新ペラの方が叩きやすいのでいいけど、1節使っただけのペラもクセはついてないから問題ないですよ」と頼もしい限りだ。

 この宮島(鳴門周年)から下関→宮島(宮島周年)→児島とG1あっせんが続く。「もう少し若ければどうしても…という気持ちになるんだろうけど。でも、意識はしてますよ」と、地元開催の来年のオーシャンカップ出場権取りへ向けての思いもチラリ。ちなみにオーシャンカップはG1の優出ポイントで出場を争うSGレースだ。

 ◆市川 大会連覇狙う
 ~昇り調子だ~
  今期勝率6・63。市川の実力を考えればモノ足りない数字だ。さらに、低出力エンジン使用のレースで集計した成績は81走して勝率6・14。3優出で1V。6月・グラチャン(宮島)前の江戸川周年で切ったFも響いているが、低出力機に手を焼いているのも確かだ。

 「A1の勝率にも届いてないじゃないですか。ひどい(数字)ですね。伸びを求めてペラを叩いてるけど、ダメ。新型エンジンになっても変わらない。出せないです…」

 低出力機では7月のオーシャンカップ(三国)など苦戦を強いられている。「低出力でエンジンが出てたと言えるのは(優勝した6月の)常滑ぐらいですね。でも、もらったままで自分の力で出したわけではないので…」と苦笑い。市川がオーシャンカップ(三国)で苦戦したエンジン(42号機)で市橋卓士が予選トップ通過したと知って「すごいショックです」と、また苦笑い。

 ただ、三国の42号機は市川と市橋の間に4人が使用している。そこまで気落ちする必要はないだろう。持ちペラ制が終わってからペラ調整の悩みが尽きない中でも昨年は10月に江戸川でG2モーターボート大賞V。そして、11月には地元・宮島開催の鳴門周年でG1優勝している。「いいエンジンを引けば、まだなんとかなる」という思いはあるのだ。

 直前の唐津は一般戦で優勝戦【3】着。準優→優勝戦と6号艇が続いたことを考えると、内容は悪くないと言えるだろう。

 「前節の人が最後に転覆してペラとギアケースが換わっていたエンジンで、出てなくて準優(6号艇)に乗るのが精一杯。準優の朝のレースが1号艇で全く出てなくて3等だったので開き直ってペラを思い切り叩いたんですよ。そしたら準優は2等が取れた。優勝戦もまあまあの感じだったので、宮島も新ペラだし、あの形で叩いてみようと思ってます。唐津と違って宮島は海水だけど“連覇”を狙うと書いといてください」

 “鳴門周年”だけに宮島開催でも地元は正木聖賢と2人だけ。とくに市川は“鳴門周年IN宮島”のディフェンディングチャンピオンだけに期待される身だ。初日12Rの渦潮ドリーム5号艇にノミネートされたのも期待の表れなのだ。

 【ドリーム戦展望】
 前回大会に続いて今回もWドリームが組まれている。初日12Rが「渦潮ドリーム」で2日目12Rが「なるちゃんドリーム」。宮島開催だが、鳴門周年なので鳴門ゆかりのネーミング。渦潮、なるちゃんとも前回と同じだ。

 ~初日12R~
 前回の渦潮ドリームは1号艇に指名された田村隆信がガッチリ逃げて2着に6号艇の山口剛が入り、3着に2号艇の池田浩二で3連単は7280円の好配決着。2大会連続で渦潮ドリームに選出された池田が今度は1号艇。ドリームまで時間はたっぷりある。しっかり臨戦態勢を整えて必勝を期す。レジェンド今村、6月の当地グラチャンで優出した深川、6月・江戸川周年Vで3年半ぶりのG1優勝を飾った浜野谷、前回覇者の市川に近況の活躍が目覚ましい“地元”市橋。これは見逃せない一戦だ。

 ~2日目12R~
 なるちゃんドリームは前回の1号艇は辻栄蔵だった。初日まさかの6転で巻き返しを期したが、3号艇の太田和美に捲り差され3着に終わっている。このレースで4号艇で2着の瓜生正義が今回は2号艇で登場。G1戦線に帰ってきて間もない中、あっという間にグランプリ出場圏内に浮上している。1号艇で瓜生を迎え撃つ形になる白井は今月、多摩川周年の最終日に切ったFがハンディになりそう。今年の賞金ランクは桐生周年が終わった時点で44位。ダービーを前に“流れ”を変えたいところだ。そして、3号艇に毒島。今節メンバーの賞金トップ。水面相性もいい。この毒島が攻めて出る展開になれば赤岩、吉田拡、菊地にもチャンスはあるだろう。

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