G1周年記念競走展望

【G1宮島チャンピオンC】辻 魅せる円熟走 周年初Vへ

[ 2015年11月3日 05:30 ]

地元周年初VとGPキップ取りに燃える辻栄蔵
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 ボートレース宮島の開設61周年記念競走「G1宮島チャンピオンカップ」(11月4日~9日)はあす4日に開幕を迎える。宮島で6月に開催されたグラチャン(SG)で優勝した山崎智也が約5カ月ぶりに参戦。グランプリ出場を確実なものにした太田和美、田中信一郎の大阪両雄に迎え撃つ地元勢は1月の60周年以来の“四天王”そろい踏み。そんな秋の宮島決戦、きょうの特集ページは地元周年初VとGPキップ取りに燃える辻栄蔵と今月末のチャレンジカップ(芦屋)出場を決めるなどG1初Vの期待が膨らむ下條雄太郎に注目した。

 ~前向き40歳“黄金ヘルメット”もう一度~
 ダービーをF休みで走ることができず、賞金争いで5人に抜かれてしまった。それでもダービー終了時点で14位。グランプリ出場ボーダーの18位には少しながらまだ余裕がある。そんなこともあってF休みは「気にしても仕方ないし、新聞とかは見ないようにしてました」と、釣りや登山、家族サービスなどで消化したそうだ。

 この14位という順位はグランプリの2ndステージから出場となる6位以内を狙える位置でもあり、一方でボーダーの18位以内は尻に火がついた状況。現時点で6位との差が2100万円と開いていることもあり「(6位以内に)入れるものなら入りたいけど、難しいかな」とポツリ。偽らざる本音だろう。

 それでも、辻にとってGP勝負のラストマンスリー初戦が地元周年というのは大きい。ここで賞金を上積みしてチャレンジカップ(芦屋)での勝負駆けが切羽詰まったものにならないように…という戦略を立てることができるからだ。

 辻は今年、SGもG1も優勝がない中で獲得賞金は6000万円を超えている。SGの優出は宮島開催だった6月グラチャン(3着)だけだが、G1は4度の優出を数え、準優を外したのは9月の桐生周年だけという安定した成績を残している。昨年のSG1回、G12回という優出実績と比べると明らかに好調と言えるだろう。

 「1年を通してではなくて良かったのは4月以降ですからね。それに、相変わらず詰めが甘いです。ここまで振り返ると、エンジン出しに苦労したな…と。特に低出力の後に前のエンジンで走るケースが難しかったですね。調整もそうだけど、スタート勘の修正が大変でした」

 辻自身は成績ほどの手応えを感じていなかったようだ。地元SGのグラチャンも「優出できたので良かったけど、優勝戦は朝から1日頑張ってペラとかいろいろやって“優勝するには厳しいな…”と感じましたね」と、勝負できる足に持っていけなかったことを納得していないのだ。

 そのグラチャンは旧エンジンだった。宮島が現在の低出力エンジンを導入したのは9月中旬の一般戦(モーターボート選手会会長賞)から。9月末の“鳴門周年”は2節目で辻はこのG1をF休みで走っていない。今回に限っては“地の利”はないと言えるだろう。

 「ボクが分かっていない部分を分かってる人はたくさんいると思う。エンジンの仕上げで最初から先手を取れる方が楽たけど、それは難しいでしょうね」

 気がつけば、辻は今年3月に40歳になっていた。話していても、レースを見ても若い頃と変わっていないように思うのだが「若い人のレースを見ていて“よくソコに入って行けるな。度胸あるな”と思っちゃいますもん。最近は“(ここが開く)だろう運転”は難しいです」と、当の本人は“40歳”を意識している様子。とはいえ、ここからが“円熟の域”。もう一度“黄金のヘルメット”を…は不可能なことではないだろう。

 グランプリ出場へ、文字通りこの11月がラスト勝負。10月のSG(ダービー)をF休みで走れなかったのは痛いが「走れるものなら走りたかったけど(Fを)自分で切ったものだから仕方ないです。でも、その(休みで賞金の上積みができない)分を頑張れたという面もある」と、今は前向きな気持ちになっている。

 いつも話題になる“辻が宮島周年を未Vとは意外”が今回も「よく質問されるけど“このタイトルを取りたいと言って取れるものではないと思ってます”と答えるしかないですよね」と笑い飛ばす。そして、続けた。1月の周年前と同じように「まあ、取れるものなら取りたい…とは思ってますけど」と。

 ◆下條 誓う一走入魂 ~G1初Vへ~
 若手レーサーで、この夏から秋にかけて最も“覚醒”したと言ってもいいのが下條だ。事故率オーバーで9月末のヤングダービー(尼崎)を走れなかったことが信じられないぐらいの活躍を見せている。

 その第一歩となったのは、8月末のボートレースメモリアル(蒲郡)でのSG初優出だ。優勝戦は4号艇。カド4コースからコンマ08の鋭発を繰り出した。大舞台ということを考えれば、このスタートは大したもの。

 「結果の4着よりも1コーナーですね。思い切って外を握って行ったんですけど、冷静に捲り差しに行けば良かった」

 悔いは残したが、メモリアルで得た自信は大きかった。次節の多摩川周年では予選トップ通過を果たした。勝てば優勝戦も1号艇となる準優の白カポック戦はインからコンマ12と“まずまず”のスタートを決めたが…。

 「瓜生(正義)さんが早すぎるとかじゃなくて自分が05のスタートを行かないと…。起こした時に遅れたと思いました」

 3コースの瓜生正義にコンマ01スタートをぶち込まれ、4着に敗れた。「プレッシャーはなかった」から余計に悔しい気持ちが沸いてきたのだ。

 蒲郡、多摩川の悔しさを最高の結果とは言えなくても好成績に結びつけたのが9月末の鳴門周年IN宮島だった。予選ラストの1着条件のイン戦を速攻逃げで勝ち切り、準優→優勝戦は大外から迷いのないターンで準優2着、優勝戦3着。

 「いろいろ経験してきたので精神的には強くなったかな…と思います」

 確かな手応えを感じつつ賞金上位34人しか出場できないチャレンジカップ(芦屋)の出場を決めて迎えるのが今回の宮島周年だ。1カ月前にG1で優出している水面で宮島の低出力エンジンを経験しているのは大きい。

 下條には、その低出力エンジンを完全に手の内に入れている印象がある。SG、G1でこれだけの活躍を見せれば誰だってそう思うだろう。そんな声に下條は「完全ではないけど、いい感じでペラ調整ができてますね」と笑顔を見せる。その要因として「この何年、たまたま夏場の成績が良かったんですよ。エンジンのパワーが落ちる時期の調整がうまくいっていて、それが低出力エンジンに合ったのだと思います」ということを挙げた。

 ダービーが終わった時点の賞金ランクは29位。GPボーダーの18位との差は約500万円。優勝できなくても残りの高額賞金レースで優出、優出と行けば逆転できる差だ。もちろん、ここ宮島で優勝すれば一発逆転でGP出場が見えてくる。

 来年のチャレンジカップが地元・大村での開催ということで「まずはダービー(出場)に近づけたいですね」と福岡開催のダービーを目指して“一走入魂”の走りを意識しているという。ちなみに前走の津が終わった時点のダービー勝率は17位。その前にここらでG1初Vを成し遂げておきたいところだ。

 ◎見どころ
 【賞金争い】
 今月末のチャレンジカップ(芦屋)に34番目のラスト切符を手にした岡崎がグランプリ出場ボーダーの18位との差は約700万円。チャレンジC優勝戦2着で逆転できる差だ。したがって、19位~34位に位置する茅原、今村、深川、坪井、吉田、下條、新田は高いモチベーションは当然のこと、攻めの気持ちが強いだろう。

 一方、1~18位にランクインしている面々ではGPトライアルが2ndステージからになる6位という目標がある太田、田中、中島に勝負気配。順位を下げられない辻、瓜生も一走入魂だ。

 【ダービー帰り】
 前走がダービー(浜名湖)というのは15人。優出したのは太田で5着だった。優勝戦は「いいスタートを行けたし、自分のやれることはやれた。仕上がりも良かった」と振り返るようにコース負けが全てだった。直前のレース、それもSGでファイナルに進んだ準優に乗ったのは精神的にも大きい。

 準優に乗ったのは田中、菊地、吉田、茅原。持ち前の“旋回力”を存分に見せたのは田中と茅原。今回も並み以上のエンジンを引けば…という期待感が十分だ。対して、予想外の予選落ちが山崎、瓜生、中島。彼らは気持ちを切り替えての宮島入りだろう。

 【宮島との相性】
 前回G1の9月・鳴門周年IN宮島を走ったのは16人。優出したのはイキのいい走りを終盤にアピールした下條(3着)、優勝した毒島誠と“節イチ”を争った坪井(4着)だった。

 準優には乗れなかったが、瓜生は「エンジンはいいんですよ。選手が乗れてないです」と仕上げに手を焼いたわけではなかった。今回は意地でもV争いを演じたい。そして、意地と言えば市川。昨年11月の鳴門周年IN宮島で優勝したのは記憶に新しいが、今年はグラチャン、鳴門周年IN宮島と連続予選落ち。「とにかくエンジンを出したい」。これが偽らざる本音だろう。

 市川とともに地元の“四天王”を形成する辻、前本、山口も新期の初戦ということで気合が入らないわけがない。それぞれが持ち味を発揮してのV争いに期待したい。

 ◎ドリーム戦展望
 【初日12R・よろしくドリームPART1】
 ~足踏み状態でも瓜生~
 1号艇に指名された瓜生はG1戦線に戻るやいなや9月・多摩川周年で優勝して“さすが”の地力を見せつけたが、その後は9月末の鳴門周年IN宮島で予選落ち→下関周年でF、浜名湖ダービーで予選落ちと足踏み状態が続いている。初日ドリーム1号艇からの始動となるここで勝って軌道修正といきたいところだ。

 ダービーは準優で敗れたが、近況の充実ぶりが際立つ田中がダッシュ戦で瓜生に迫りそう。吉田が田中の一つ内、カド4コースから先攻めを狙う。そして今村は9月の鳴門周年IN宮島と同じ初日ドリーム2号艇。差し不発に終わっているだけに集中力が増すはずだ。

 坪井は前回優出。しかも節イチ級の足に仕上げた。ただ、ダービーの最終日に切ったFでスタートは無理できない。3コースでもスタートを行けないと苦しいか。むしろ6号艇でも地元の山口は「6コースは嫌いではないですよ」と常々話している。

 【2日目12R・よろしくドリームPART2】
 ~辻 入魂の走り見せる~
 地元の辻が1号艇。昨年11月の鳴門周年IN宮島で初日6着、転覆から2日目ドリーム1号艇という苦い経験があるだけにこの白カポック戦より初日から入魂の走りだ。

 もしも辻の仕上がりが一息という状態なら太田が差し切りまで。辻がすんなり逃げる形ならソツなく順走。この内2人の行った行ったに待ったをかけるなら山崎だろう。なんといっても目下の賞金ランク首位を独走中の男。また、宮島は6月のグラチャンでSG優勝を飾った水面だ。トップ3コース戦はツケマイもある。

 山崎が仕掛けてくれると茅原に突き抜けのチャンスも。速攻力を生かせる伸びがあれば菊地も軽視できない。菊地が絞り込むと中島に差し場が生まれる。2着、3着争いに顔を出す可能性は十分だ。

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