栗山監督 “吉田松陰の魂”を胸に世界一奪還必ず 侍ジャパン全30人出そろった

[ 2023年1月27日 05:10 ]

侍ジャパン全30選手決定

質問に答える栗山監督(撮影・会津 智海)
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 3月の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で14年ぶりの世界一奪還を狙う侍ジャパンは26日、先行発表の12選手以外の残り18選手を発表。新人だった昨季に37セーブを挙げた巨人・大勢投手(23)、成長著しいオリックス・宇田川優希投手(24)らが選ばれた。5人の大リーガーも名を連ねた最強の30人を率いる栗山英樹監督(61)は江戸末期に私利私欲を捨てて日本のために奔走した吉田松陰の魂を胸に、世界の頂点を目指す。

 いきなり栗山監督は言った。改めて目標を問われた時だ。「世界一。それだけです」。そして「魂」という言葉を何度も繰り返した。

 「日本野球の魂を最大限に生かせる形は何かを考え、このメンバーが形をつくりやすい、世界一になれると考え選ばせてもらった」

 かみしめるように名前を読み上げた30人の侍たち。世界を獲るために悩み、考えに考えぬいてえりすぐった精鋭だ。その一人一人が持つ全ての「魂」を結集し、形に変えて勝ちきる覚悟で「日本野球の魂を信じています。野球にひたすら向き合うだけ。選手たちが必ず表現してくれると信じている」と続けた。

 侍たちの魂を形にするため、身を尽くしてきた。その姿に重なるのは、江戸末期に欧米列強に負けない日本をつくるために命懸けで奔走した吉田松陰。栗山監督自身、心に残る幕末の人物として真っ先にその名を挙げる。「何といっても寅之助(松陰の幼名)。あの時代に命を捨てることの意味を知り、人を育てて弟子たちが明治という時代をつくった」。そんな偉人の思いを受け継ぐかのように、日本野球の未来を担える最強の30人を選んだ。

 思いは直接伝えた。選手への選出の伝達は通常はNPB(日本野球機構)から各球団→選手という流れ。「それは分かっていたけど、覚悟して戦おうという思いを共有したくて、一人一人と話させてもらった」。電話がつながると言葉は交わさなくとも「命懸けでやります」という空気感が伝わってきたという。

 愛弟子の大谷ら、海の向こうから日本のために参戦するメジャー組が「海援隊」なら、若き守護神候補の大勢らフレッシュな面々は「新鮮組」で、育成出身で勢いのある宇田川はさながら「奇兵隊」だ。大勢については「抑えも大事だけど勝つために重要なポイントが出てくるはず」と終盤の厳しい局面での投入も示唆。昨季途中に育成からはい上がったが、まだまだ今季年俸1700万円の宇田川についても「彼の生い立ちや苦労は、魂が出やすい形」と期待する。

 およそ150年前、日本のために身を犠牲にして明治の世を切り開いた侍たちがいた。吉田松陰の辞世の句は「身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂」。目的はただ一つ。日本野球の“夜明け”のため、30人の侍が日の丸に身をささげる。(秋村 誠人)

 ▽吉田松陰 幕末の教育者、思想家。江戸時代の長州藩で松下村塾を主宰し、高杉晋作や伊藤博文ら明治維新の志士に影響を与えた。自身は下級武士の家に生まれたが、9歳の時に長州藩の藩校「明倫館」で教師見習い、19歳で師範となった。黒船来航時に海外密航を試みるが失敗し、1859年の安政の大獄(反幕府運動への弾圧)により29歳で処刑。松下村塾では「実行が第一」の教えの下、2年間で約90人が学び、政治、軍事、学問の分野で優れた人物を輩出した。

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