愛工大名電 6月に急逝した仲間とつかんだ頂点、9回ピンチで天に向かい祈るエースに力を貸してくれた―

[ 2022年7月31日 06:00 ]

第104回全国高校野球選手権愛知大会決勝   愛工大名電7―4東邦 ( 2022年7月30日    岡崎レッドダイヤモンドスタジアム )

<東邦・愛工大名電>甲子園出場を決め、急逝したチームメート・瀬戸さんの写真を掲げながら喜ぶ愛工大名電ナイン (撮影・亀井 直樹)
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 第104回全国高校野球選手権大会(8月6日から17日間、甲子園)の出場校を決める地方大会は30日、4大会で決勝が行われた。愛知大会では愛工大名電が東邦を下し、2年連続14度目の出場を決めた。

 愛工大名電のエース有馬伽久(がく=3年)は1点を返された9回、空を見上げて祈った。「もう少しだけ力を貸してくれ。頼む」。中堅に高く上がった最後の打球は、フェンス手前でグラブに収まった。4失点完投で、2年連続14度目の夏切符。三塁側ベンチに飾られた背番号13のユニホームも、フワリと揺れた。

 倉野光生監督も万感の思いだった。「厳しい戦いを予想していたが、選手の成長を感じた。ここに来るまで多くのドラマがあった。貴重な戦力を大会前になくしましたから」と声を詰まらせた。6月に3年生部員の瀬戸勝登(しょうと)さんが急性心不全で帰らぬ人となった。直前まで一緒に練習をしていた。チームに欠かせないムードメーカーだった。両親の「選手を動揺させたくない」の意向で、葬儀を済ませた後に選手には伝えられた。3年生は帽子に「勝登と共に」と書き込み、瀬戸さんのユニホームを甲子園に連れて行くために戦った。

 表彰式で瀬戸さんの遺影を手にした美濃十飛(しゅうと=3年)は同点の8回2死一、二塁から決勝のホームインを果たした。「いつも一緒で仲が良かった。だから信じられない。みんなが泣いていても、僕はまだ涙も出ない。信じられないから」と思いを語った。

 球友と一緒に向かう甲子園。NPB最多セーブの記録を持つ元中日・岩瀬仁紀氏の長男・法樹(のりき=3年)もこの日は出番がなかったが、愛知大会2試合登板、無失点で甲子園に乗り込む。「得意のスライダーで勝利に貢献したい」。父も果たせなかった聖地で全力投球を誓った。(鈴木 光)

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