ソフトバンク レジェンドの記録に挑む遅咲きルーキーの覚悟「結果を残さないとすぐにクビに」

[ 2022年7月31日 09:00 ]

ソフトバンク・野村勇
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 25歳の遅咲きルーキーが球団の大記録に挑んでいる。ソフトバンクのドラフト4位・野村勇内野手は、1939年に鶴岡一人が記録した球団新人最多本塁打10本まであと2本。実に83年ぶりの偉業が目前だ。

 今季は107打数で8本。約13打席に1本のペースで驚異の本塁打率を誇る。ここまでの戦いぶりに「ホームランは多く打てている感覚はある。いいペースで打てていると思うし、1軍のレベルは高いけど、何とか食らいついていけてる」と充実の1年目を過ごしている。

 新人のシーズン8本塁打は、1997年の井口(現ロッテ監督)らに並ぶ球団歴代4位でチームが福岡移転後は最多記録。「全く意識してなかったけど、井口さんに並んでいるのは凄いこと。でも、あと2本はいけると思う」と記録更新に自信をみせている。

 前半戦終盤で一皮むけた瞬間があった。7月22日オリックス戦、3回無死一、三塁の第2打席だ。宮城の初球のスライダーを左翼に大ファウル。「この感覚だ」と確かな感触が両手に残った。そして3球目。同じくスライダーを捉え、左翼席に同点8号3ランを放り込んだ。

 今季の球種別本塁打は直球5本、チェンジアップが2本。スライダーを捉えたのはプロ初めて。「今まではスライダー系が来ると“うっ”とワンテンポ置いて振ってしまっていたけど、あの1球は直球のタイミングからスムーズに打てた。この感覚でもう1球いこうと思って打った。今までなかった感覚なので経験できたことは大きい」。得意の速球に加え、横の変化球攻略にもヒントを見つけた。

 この一打に首脳陣がうなった。村上打撃コーチは「練習の中でやっていたことがゲームの中で反応できた。今までの失敗の中にヒントがあって、成長する」と目を細める。変化球に対応するため、ティー打撃では普段よりも前のポイントにボールを投げ、拾って打つ動作を繰り返し練習。効果は最高の形で表れた。

 藤本監督は通算1760安打を記録し「右への一発」が持ち味でもある井口に姿を重ね合わせた。「やっぱり右中間にホームランを打てる打者。よく似てるのかな。勇もどこでもホームラン入るからね」。続けて、「あれだけの走力があって、バントも1発で決めてくれる。将来的なところを考えたら1、2番というところじゃないかな」とリードオフマンとしての青写真を描き上げた。

 大混戦のパ・リーグは勝負の後半戦に突入。野村勇は「試合に出ないと意味がない。(大卒、高卒とは)立場が違うし、結果を残さないとすぐにクビになると思ってやっています」と人一倍強い覚悟がある。快足堅守は評判通り。今や長打力が最大のストロングポイントになっている。(記者コラム・福井 亮太)※数字は30日現在

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