稲垣啓太、白血病乗り越えたJ2新潟・早川との絆 少年時代から顔なじみ 昨冬共闘の誓い

[ 2019年10月13日 09:30 ]

ラグビーW杯1次リーグA組最終戦   日本―スコットランド ( 2019年10月13日    日産ス )

水しぶきを上げてグランドに出る稲垣(撮影・篠原岳夫)
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 決戦へ、新潟魂を前面に押し出す。スコットランド戦前日の12日の練習、プロップ稲垣啓太(29=パナソニック)は軽快なダッシュを披露した。急性白血病を克服し、3年7カ月ぶりに公式戦に復帰したJ2新潟のDF早川史哉(25)は同じ新潟市出身で、少年時代からの顔なじみ。エールを胸に、日本を勝利に導く。

 「ジャパニーズ・マフィア」や「笑わない男」の異名を持つプロップ稲垣は、義理人情に厚い。会見でよく相手を称え、仲間を思いやり、裏方に感謝する。周囲の気持ちをくみ取れる性格だからこそ、故郷・新潟の友人の存在が力になる。

 「昨冬に新潟で食事に行き、いろんなことを話した。彼の苦労はそれ以前に記事で知っていたので、スタメンに名前があった時は非常にうれしかった」

 J2新潟のDF早川が急性白血病を乗り越え、今月5日、3年7カ月ぶりに公式戦に出た。復帰戦前にツイッターで「フミヤ頑張れ!!」とエールを送った。

 同じ新潟市出身。3学年下のサッカー選手とは、10代から県内のスポーツ表彰式で顔を合わせて知っていた。距離が縮まったのは昨冬。新潟のゲームをよく観戦していた関係で、SNS上では親交はあった。帰省した際にメールで話が弾み、焼き肉会食が実現した。

 復帰過程だった早川にとっても「参考になる」1日だったという。「ガキ(稲垣)さんは体に合わない食材を検査で知っていて、コンディション維持のために揚げ物や脂っこいものを絶対に食べなかった。4年間の犠牲を払ってW杯に臨んでいるというのは本当だと思った」。紫のマフラーというセンスに驚きつつ、尊敬の念を抱いた。残る試合へ「いろいろな人を熱くさせるプレーを期待している」とメッセージも寄せた。

 スパイクに「新潟」の刺しゅうを入れるほど郷土愛にあふれた稲垣は「彼の頑張りが、自分の頑張りにつながっている。県内のアスリートとして一緒に盛り上げられれば」と決意を口にした。スクラム強者のスコットランドFWの先発平均体重は、112・6キロ。日本は109・6キロで3キロ軽い。しかし、「スクラムは全員が自信を持っている」と信念は揺るぎない。15年大会の敗戦は先発メンバーとして味わった。「悔しさを忘れたことがない」。さまざまな思いを大きな体に背負い、決戦のピッチに立つ。

 ◆稲垣 啓太(いながき・けいた)1990年(平2)6月2日生まれ、新潟市出身の29歳。新津二中3年からラグビーを始める。新潟工では片道40分かけて自転車通学。関東学院大を経て、13年パナソニック入り。中学までは大型捕手でならし、野球でも強豪校から誘いを受けた。代表32キャップ。愛称は「ガッキー」。1メートル86。体重は116キロだが体脂肪率は1桁に近い。

 ◆早川 史哉(はやかわ・ふみや)1994年(平6)1月12日生まれ、新潟市出身の25歳。小針中1年から開志学園3年まで、アルビレックス新潟の下部組織に所属。U―15から各年代の日本代表に選出された。筑波大で主将を務め、16年に新潟入り。同年4月に急性白血病の診断を受け、同年11月に骨髄移植手術を受けた。1メートル70、68キロ。

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2019年10月13日のニュース