不測の事態を不測とせず乗り越える、長谷川慎・代表スクラムコーチの緻密な準備

[ 2019年10月13日 08:00 ]

日本代表の長谷川慎スクラムコーチ
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 不測の事態をいかにして乗り越えるか。一つはその場で柔軟に対処することだろう。状況を冷静に見極め、方法を模索するとともに、動じることのない強い精神力も必要となる。もう一つは不測の事態そのものを、不測としないこと。すなわち事前に予測し、準備をしておくことで、乗り越えることが可能になる。

 日本代表の長谷川慎スクラムコーチの方法論は、後者のように思う。1次リーグ最終のスコットランド戦の会場は、横浜市の日産スタジアム。初戦から全て異なる会場で戦ってきた日本だが、今回は初めて、本番会場での前日練習を行わずに、試合当日を迎えることになった。

 このこと自体は、以前から決まっていたことのようだ。結果的に台風19号の影響で中止となったが、試合前日の12日には、同会場でイングランド―フランス戦が予定されていた。試合日には他チームが練習することができないのがW杯ルール。当初から東京都内の練習会場で最後の準備を整え、横浜に移動する予定が組まれていた。一方でグラウンド状況と深い関係を持つスクラムの責任者として、長谷川コーチは9日の会見で「過去にも試合会場でできないことはあった。僕一人でも行って、芝を見る」と明かした。

 同コーチが日本代表に根付かせた文化に、試合前日の会場練習で、本気のスクラムを組むことがある。たとえ1本、2本であっても、本気で組むから得られる感触があるが、世界の強豪国、日本国内のチームを見渡しても、これは異例だという。FW勢はそこで、スパイクのスタッド(ポイント)の長さを決める。21ミリか、18ミリか、あるいは16ミリか。スクラムを組むだけなら長いに越したことはないが、わずか数ミリの違いが、後半のスタミナ残量を大きく左右するだけに、非常に重要だ。

 この緻密な準備の原点となったのが、サンウルブズのスクラムコーチ1年目だった17年4月の敵地クライストチャーチで行われたクルセイダーズ戦だという。当初は会場で前日練習の予定だったが、大渋滞に巻き込まれて断念。SO田村らキッカーのみがAMIスタジアムの感触を確かめに行ったものの、長谷川コーチはチームと一緒に引き返したという。試合当日、天気は大雨。所々で滑りまくる芝に対応できず、スクラムは崩壊。試合も3―50で大敗した。

 「それからは、自分1人でも必ず行って、絶対に芝状態を見るようにしている」。今年8月のパシフィックネーションズ杯、フィジー・スバで行われた米国戦では、前日練習が別会場で行われたものの、単身スタジアムへ乗り込み、芝の感触を確かめたという。選手は長めのスタッドを付ける予定だったが、18ミリで十分と助言。後半のフィットネス勝負に勝てたのは、この一言があったからこそだった。

 重箱の隅をつつくような準備もしていたエディージャパンと比べると、その点ではやや劣るイメージが先行するジェイミージャパン。だが、こうした緻密な準備をしていることを、スコットランド戦でも証明してくれるはずだ。(阿部 令)

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