稀勢の里 料亭で実技指導 北の湖魂継いで挑む自分の道「もっと努力が必要」

[ 2017年1月28日 09:30 ]

新横綱・稀勢の里 奉納土俵入り ( 2017年1月27日    東京都渋谷区・明治神宮 )

<稀勢の里 明治神宮奉納土俵入り>雲龍型の結び
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 真新しい綱を締めた稀勢の里の姿を見て、北の湖に似ていると話した関係者がいた。現役時代、1メートル79、150キロだった第55代横綱と比べれば、1メートル87、175キロの稀勢の里はひと回りサイズが大きい。だが、その体形、特に綱を締めた時の腹周りなどは、優勝24回を誇った横綱の姿をほうふつさせるところがある。同じ左四つからの寄りを得意としている。

 以前、理事長を務めていた北の湖親方から実技指導を受けている。知人を通じて東京・向島の料亭に誘われ、その席上で左四つに組んだという。特に左下手の使い方について助言をもらった。「まわしをつかんだまま手首をひねれば、相手の体が傾いて右上手も近くなるんだぞ」。その言葉通りの動きをされると、稀勢の里の体はぐらついたという。一門は違えど、北の湖親方は相撲界を背負っていくであろうと期待していたからこそ、指導せずにはいられなかったのだろう。最近の取り口では、左で先にまわしを取ってから右上手を引く相撲も多い。稀勢の里は昭和の大横綱の魂をも受け継いでいる。

 稀勢の里は目指す横綱像について「尊敬されるような力士になっていきたい。そのためにはもっと努力が必要。稽古場の振る舞いや生き方も見られている」とさらなる精進を誓っている。先代師匠である元横綱・隆の里の元鳴戸親方の教えは今も心に残っており、北の湖親方の思いもしっかりと受け止めている。だが、過去71人の横綱を目標にするつもりはない。それらの先人に敬意を表しながらも「自分は自分でしかない。どんな状況でも力を出し切れるようにしたい」と新たな横綱像をつくりたいと考えている。

 昭和以降、4横綱時代は14度あったが、最も長く続いたのは14場所。平成以降の2度は、いずれも5場所で終焉(しゅうえん)を迎えている。自身も4横綱時代を経験した八角理事長(元横綱・北勝海)は言う。「(横綱で)早く一度優勝すること。そうすると肩の力が抜けて、もっといい横綱になれる」と。19年ぶりとなる日本出身の新横綱は、各方面からの期待を背負って土俵に上がる。 (特別取材班)

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