坂本龍一さん 最後の作品は高専校歌 4月2日開校「神山まるごと高専」入学式でサプライズ発表

[ 2023年4月4日 05:10 ]

神山まるごと高専の入学式で、スクリーンに映し出された「作曲 坂本龍一」の文字
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 坂本龍一さんが壮絶な闘病生活を送りながら手がけた最後の作曲作品が学校の校歌だったことが3日、分かった。2日に徳島県神山町に開校した私立「神山まるごと高等専門学校」の校歌。がんと向き合いながらも生徒たちの未来に思いをはせ、命を削りながら曲を作った。

 死去が報じられる前の2日午後1時、同校の入学式が始まった。司会者が「ここでサプライズがあります」と語り、音源とともにスクリーンに「作曲 坂本龍一」と映し出された。全国から集まった44人の新入生や保護者、列席した関係者などからどよめきが湧き起こった。

 会場にゆっくりと力強い旋律が響き渡った。未完のため歌はついていなかったが、代わりに歌詞が画面に映し出された。作詞は歌手のUA(51)が担当した。

 学校関係者は「こちらから1年ほど前でしょうか、オファーさせていただきました」と説明。同校が掲げる「モノをつくる力で、コトを起こす人」という人物像にふさわしい作曲家として坂本さんの名前が挙がったという。

 坂本さんと慎重に議論を重ねる中で、最終的に学校の理念に共感した坂本さんから承諾を得た。入学式での披露を目指していたが、制作中に坂本さんの体調が悪化したこともあり、完成には至らなかった。坂本さんには制作途中の作品を公開することへの抵抗感もあったというが、新入生の門出を祝福する思いも込めて、特別に入学式での音源公開を了承したという。

 今後は坂本さんの事務所などと協議をしながら校歌の完成を目指していくという。同校は「本校の学生・スタッフ全員で、坂本氏の思いも含めて、100年、200年と大切に歌い継いでまいります」とした。

 徳島県神山町は人口5000人ほどの小さな町で、限界集落といわれたこともあった。光ファイバー網の整備などでIT企業のサテライトオフィスができ始め、今では“地方創生の聖地”ともいわれている。同校は次世代の起業家育成を目標としている。生徒たちは坂本さんの曲に背中を押され、世界へ羽ばたいていく。

 ≪母校東京芸術大学生 落胆の声「ショック」≫坂本さんの母校、東京芸術大の上野キャンパス(東京都台東区)の校門前にいた学生からは「ショック」と落胆する声が聞かれた。
 音楽学部2年の伊藤心菜さん(19)=東京都足立区=は「音楽を通じたメッセージで社会を変えていける数少ない人だったと思う」と話した。入学準備で大学に来た新入生の男子学生(18)は「最近までオンラインでコンサートをしていて、最期まで音楽に真摯(しんし)に打ち込んだのが凄い。自分も見習いたい」と述べた。

 ≪大貫妙子 気骨ある人でした≫歌手の大貫妙子(69)は自身のツイッターで「荼毘(だび)に付す前日、お会いすることがかないました」と坂本さんと最後の対面をしたことを明かした。「肉体に宿ったすべての苦しみから解き放たれ、本当に安らかで奇麗なお顔でした」とつづり「なにより、気骨ある人でした」と振り返った。坂本さんは昨年8月に月刊誌に寄せた原稿で、20代前半の一時期、大貫と一緒に暮らしていたことを公表していた。

 ≪NHK今日追悼番組≫NHKは4日に坂本さんの追悼番組を放送する。「クローズアップ現代」(後7・30)では、過去の単独取材など貴重映像とともに、被災地支援や核廃絶に力を入れていた坂本さんが伝えようとしていたことに迫る。「NHK MUSIC SPECIAL」(後11・45)では、昨年12月に世界配信された東京・NHKのスタジオでのピアノ・ソロコンサートの映像に撮影の舞台裏やインタビューを交えた特番を再放送する。

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