久保九段も驚きの決断力 藤井七段、終盤の読み「神に近い」

[ 2020年6月9日 06:10 ]

第91期棋聖戦5番勝負第1局 ( 2020年6月8日    東京・将棋会館 )

久保利明九段
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 棋聖戦第1局を前王将の久保利明九段(44)が解説した。40手目まで先後同型の矢倉戦。渡辺明棋聖の飛車角両取りを読み筋とばかり、ノータイムで藤井聡太七段が返す熱戦になった。勝負を分けたのは…。

 第1局から見応えある応酬がありました。渡辺棋聖の92手目△4六金。金が3六から一つ寄っただけで7二馬の利きが1八まで通り、4六の金は角取り。つまり飛車角両取りがかかっています。

 もしここで藤井七段が長考するようであれば勝負あったでしょうが▲1三飛成をノータイムで決断。お互いの読み筋でした。ということは、両者これならやれると思っての踏み込み。開幕から読みと読みがぶつかり合う熱戦になりました。

 長く互角の形勢が続いたと思います。差がつき始めたとしたら終盤の入り口で銀取りに打たれた香を渡辺棋聖が同銀と取らず、さらに王頭から激しく迫っていたらどうだったか。

 藤井七段がどの時点で勝利を確信したのか、興味があります。というのも渡辺王に詰めろをかけたのが125手目。後がなくなった渡辺棋聖は157手目で投了するまで、連続王手で迫ってきた。要するに、藤井七段は125手目時点で自王に詰みはないと分かってない限り、あの詰めろをかけることはできなかった。

 抜き出た詰め将棋の強さは、5連覇中の詰将棋解答選手権で実証されています。それはもちろん相手王を詰ます能力であると同時に自王に詰みがない、だから攻めに専念できるとの決断力に通じる。時間切迫の中、本当に125手目時点で自王が詰まないと見切っていたなら「神に近い」。そう感じました。

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