「なつぞら」“泰樹おんじロス”呼んだ草刈正雄 開拓者体現しMVP級活躍!企画の前段階“異例”の配役

[ 2019年9月29日 09:00 ]

連続テレビ小説「なつぞら」最終回。草むらに寝転び、目を閉じる泰樹(草刈正雄)(C)NHK
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 女優の広瀬すず(21)がヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「なつぞら」(月~土曜前8・00)は28日、最終回(第156話)を迎え、完結した。脚本家の大森寿美男氏(52)が、北海道の開拓者の物語と昭和のアニメーションの歴史を見事に融合。開拓者のテーマを体現し、ドラマを最初から最後まで牽引したのが俳優の草刈正雄(67)だった。

 節目の朝ドラ通算100作目。大河ドラマ「風林火山」や「64」「精霊の守り人」「フランケンシュタインの恋」、映画「39 刑法第三十九条」「風が強く吹いている」などで知られる大森氏が2003年後期「てるてる家族」以来となる朝ドラ2作目を手掛けたオリジナル作品。戦争で両親を亡くし、北海道・十勝の酪農家に引き取られた少女・奥原なつ(広瀬)が、高校卒業後に上京してアニメーターとして瑞々しい感性を発揮していく姿を描いた。

 草刈の朝ドラ出演は1995年後期「走らんか!」、00年前期「私の青空」以来19年ぶり3作目。今回演じた柴田泰樹は幼い頃に流行り病のため両親を亡くし、1902年(明35)、18歳の時に富山から1人、十勝に入植。原生林を3年のうちに切り開き、国の検査に合格すれば、自分の土地になった。しかし、土が悪く、稲作を試したものの根付かず、酪農を始めた。最初は帯広に近い、十勝川のほとりに入植したが、1922年(大11)、十勝川が氾濫。自宅も牛舎も畑も流され、音問別に移住し、また開墾から再スタートした。それから1年もしないうちに妻が病死。男手一つで富士子(松嶋菜々子)を育て上げた。偏屈で頑固な性格だが、深い愛を持った大樹のような男。なつに人生を生き抜く術を教え込む。

 その風貌や話し方を見ると、草刈が熱演した16年の大河ドラマ「真田丸」の真田昌幸が否応なしに彷彿、連想される。昌幸は主人公・真田信繁(堺雅人)の父。知略軍略に優れた。草刈は戦国時代を楽しむかのような豪快なラテン系キャラクターを体現し、ドラマ前半のMVPと称賛された。

 「なつぞら」においてもMVP級の活躍。その名演は何度も視聴者の涙を誘った。最終回後もインターネット上には“じいちゃんロス”に陥るファンが続出した。

 アニメ「アルプスの少女ハイジ」の“アルムおんじ”から、いつしかインターネット上で“草刈おんじ”と呼ばれ、愛された泰樹。柴田家に引き取られたばかりのなつ(粟野咲莉)を「おまえはこの数日、本当によく働いた。もう無理に笑うことはない。謝ることもない。おまえは堂々としてろ。堂々と、ここで生きろ」と励まし、家出したなつを「おまえにはもう、側に家族はおらん。だが、ワシらがおる。一緒におる」と抱き締めた。

 アニメーターになりたいと夢を打ち明けたなつを「よく言った。それでこそ、わしの孫じゃ。行ってこい。漫画か映画か知らんが、行って、東京を耕してこい。開拓してこい」と送り出した。

 駆け落ちした夕見子(福地桃子)を連れ戻そうと上京した際には「抹殺」とつぶやいて恋人・高山(須藤蓮)に痛烈な左フックをお見舞いし「そのヒゲも剃れ」と一喝した。

 シビアな反面、甘い物が好物というギャップもあり、時折、チャーミングな素顔を披露した。

 90歳を迎え、すっかり穏やかになったが、柴田牧場が嵐により停電になると、牛を助けるため、全身にエネルギーが満ちたように立ち上がり「手で絞るんじゃ!牛を助けるんじゃ!」。若返ったように声を張り、皆に指示。率先してピンチを救った。

 嵐が去った翌日、なつと天陽(吉沢亮)の畑へ。泥沼と化した畑で、靖枝(大原櫻子)がジャガイモを掘り起こすのを手伝った。泰樹は「わしが死んでも、悲しむ必要はない」と開拓者精神を伝授した。

 制作統括の磯智明チーフプロデューサーは草刈のキャスティングが“異例”だったと明かす。

 「『泰樹というキャラクターを誰に演じていただけるか』という考え方じゃなく、そのもっと前に、脚本の大森さんと開拓者の取材をしていて『開拓者1世となつ』を物語の軸にしようと決めた時点で、これを演じ切れるのは草刈さんしかいない、と思いました。当時の開拓・開墾する男たちの写真を見るたびに、ことごとく『これは草刈さんだ』と思うわけです。シャツを着て、タイトなズボンを履いて、帽子をかぶって。ヒゲを生やして木を切ったり、馬車を操ったりしている写真を見ると、それは日本というよりは欧米のにおいが非常に感じられます。開拓するために、機能的な服を着ていただけなのかもしれませんが。また、大地と向き合っているから、体格も良く、屈強で、日本人離れしたような風貌をしている。ドラマ的に言えば、さらに心の大きさも持っている男となると、僕たちの中では草刈さんしかいないわけです。だから、キャスティングのあり方としては、珍しいですよね。普通は企画があり、台本ができてから、キャスティングが始まるんですが、今回は具体的に泰樹という名前やキャラクターができる前から、企画の前段階の時点で草刈さんにお願いしようと思いました」

 放送スタート直後の今年4月、草刈にインタビュー。「いいセリフを頂き、ありがたい限り。年も年になり、そういう役回りが来て、大事な役を頂いたと思っています。大森さんがいい本を書いてくださるので、自分のシーンに限らず、しょっちゅう泣いています。僕も年を取って泣き虫になりました。だから、あまり余計なことは考えず、その素直な気持ちを芝居で表現できたらと思っています」と初の大森脚本にストレートに向き合っていた。

 「(泰樹は)僕とは真逆の人間。僕はイジイジして、本当にどうしようもない。器量のデカい男の人に憧れるんです」と笑いを誘いながら、素顔を告白。「(『真田丸』の)昌幸の豪快さも僕とは真逆。自分はそういうヤツじゃないので、芝居として演じられるのは楽しいし、真逆の方が僕にとってはおもしろい」と自身と正反対のキャラクターを演じる醍醐味を語っていた。

 今月20日、NHK「あさイチ」(月~金曜前8・15)に生出演。(『なつぞら』出演は)役者冥利に尽きます」と繰り返した。取材や生出演だと口下手なところもあるが、芝居は雄弁。最終週(第26週)(今月23~28日)も圧倒的な存在感を示した。なつたちが作ったアニメ「大草原の少女ソラ」を見て潤んだ瞳、とよ(高畑淳子)を訪ねて語り合った開拓時代の朝日、停電になった柴田牧場で牛を救おうと発揮した往年のリーダーシップ、なつへの開拓者精神の継承…。その一挙手一投足に誰もが魅了された。

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