「いだてん」嘉納治五郎 東京五輪返上ピンチも「心配したら禿げる」「いかにIOC委員から尊敬されたか」

[ 2019年9月29日 20:50 ]

「氷川丸」の嘉納治五郎(右端)
Photo By 提供写真

 俳優の役所広司(63)がNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(日曜後8・00)でチャーミングに熱演し、圧倒的な存在感を示してきた“日本スポーツの父”嘉納治五郎(1860~1938)が29日放送の第37話「最後の晩餐」で77年の生涯に幕を閉じた。

 「いだてん」のスポーツ史考証を担当している筑波大学の真田久教授は「1938年3月のカイロでのIOC総会に出掛ける時、東京の返上やロンドンの突然の立候補(実際には、すぐに取り下げた)などの状況を聞かれた時、治五郎は『今からそんなことを心配したら頭が禿げる。いざとなれば柔道の奥の手を使うまでさ』とユーモアたっぷりに出掛けました。最大の危機にあっても、逆らわずして勝つ、という姿勢だったのでしょう」と解説。

 「治五郎の逝去にIOC委員たちが追悼のメッセージを送りました。その内容が凄い。いかに治五郎がIOC委員から尊敬されていたかが分かります」と、その偉大さを証言した。

 真田教授が紹介する嘉納治五郎への追悼メッセージは以下の通り。

 ▼ラツール伯爵(IOC会長)嘉納氏の逝去は単に日本にとって偉大なる損失たるにとどまらず、全世界のスポーツ界にとってもまた同様である。氏は青年の真の教育者であった。我々は嘉納氏の想い出を永く座右の銘として忘れないであろう。あたかも兵士のごとく氏は自己の義務を遂行しつつ逝った。しかし氏はもっと永く生きて氏の生涯の夢であった東京オリンピックを見るべきであった。この東京オリンピックこそ、氏が日本のあらゆるスポーツを今日の高き標準に引き上げるため費やした永年の労苦に対する報酬であったであろう。日本の全スポーツマンに対し、我々の最も深き哀悼の意を伝えたい。

 ▼カール・ディーム博士(ベルリン大会事務総長、スポーツ教育学の権威)氏とは1913年以来の親しい知友で全く感慨無量である。氏は世界で稀にみるスポーツ教育の総合的人格者で、氏の逝去は単に日本にとってばかりでなく、世界スポーツ界、教育界にとって痛惜に堪えない。

 ▼アベリー・ブランデージ(IOC委員、米国オリンピック委員会会長)嘉納氏は立派な『サムライ』であり、典型的教育家であり、そのスポーツ界に対する貢献は長く追憶されるであろう。

 ▼フランソア・ピエトリ(IOC委員、仏国オリンピック委員会会長)嘉納氏は永年の私の親友の1人である。氏はカイロ総会で最大の難事とされていた東京・札幌両大会獲得のため非常な過労を強いられ、ほとんど独力でこの難関を克服していた。日本国民は氏の真摯なしかも勇敢な努力に対して深く感謝しなければならない。

 ▼クラレンス・ブルース(第3代アバーデア男爵、IOC委員、英国オリンピック委員会)私はかかる素晴らしい人物に会った喜びを長く記憶から消し忘れないであろう。また私はかつて氏が柔道の講義と実演をなした際その道場において当時75、76歳であった氏が、わずか1分足らずの間に氏よりもずっと年若い人を投げ倒し、出席者一同をして氏の勇気と熟練とを賞賛せしめたことも忘れ得ない。私は嘉納氏の遺志に従い、日本におけるオリンピック競技会を支えることを最大の幸福と考えるものである。

 ▼クリンゲベルグ(IOC技術顧問)今回の嘉納氏の最後の欧州訪問はオリンピック精神に合致したものだ。カイロ会議では非常な困難に直面したが、氏は巧みに、また自信を持ってこれを執り裁き、オリンピックの東京招致を確実にした。氏の残したもの、すなわち東京オリンピックを成功させることは氏を尊敬する者の義務である。

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