宮本亜門氏「やれることはやって、挑むことは挑む」がんと出会い「演出が変わるかも」

[ 2019年4月12日 17:14 ]

自身がプロデュースする「Hibiya Festival」(26、27日)のオープニングショーに関する会見を開いた宮本亜門氏
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 演出家の宮本亜門氏(61)が12日、東京ミッドタウン日比谷(千代田区有楽町)で自身がプロデュースする「Hibiya Festival」(26、27日)のオープニングショーについての会見を開き、患っている前立腺がんの現状と今後について話した。報道陣から「思ったよりもお元気そうで」と言われると、「落ち込んでいる場合じゃない」と笑顔を見せた。

 現在、痛みなど自覚症状は感じなかったそうだが、「ただお小水が出にくかったり、何回も(トイレに)行きたくなるなと思っていた」という。年に一度受けている人間ドックで2年ほど前に、PSAの数値が少し高いということと、糖尿病予備群などで、再検査が必要と指摘されていたが、「まあ大丈夫だろう」と自己判断をしてしまい「後悔した」と語った。

 宮本氏は8日に放送されたTBS系「名医のTHE太鼓判!春の芸能人余命宣告3時間SP」に出演するため、2月下旬に都内で人間ドックを受診したところ、前立腺に影が発見された。3月上旬に都内の病院で精密検査を受けた結果、約1センチの前立腺がんが見つかった。番組の撮影でカメラが入っていたから「表情を絶対暗くしない」と思っていたが、「心の中ではうわーっ、とめまいがするような。思わなかったですからね。自分が(がんだとは)」とそのときに心境を吐露。一方、「がん家系なので。おじいちゃんも、父も膀胱がんで手術をしました。がんのことはいつも生死がいろいろあったので。ゼロではなかったんですね。がんという言葉を聞くということが。だから大混乱するというわけではなかったです」。いまは「これからどうしようか」と思っているという。

 じつは「高校生の時からもっとも自分に自信のない男で。自分こそ生きる価値がない、自殺すべきと思っていた」と告白。「だけど演出家になってみなさんが喜んでくれたり、感動したと言ってくれると、ああ、おれは生きている価値があるんだと思ってきた30年間があるので、いまここで終わらせたくない」と力強く語った。

 奇しくも昨年、ミュージカル「生きる」を演出。「黒沢明監督の映画『生きる』を見て、ミュージカル化して、まさか。舞台の前半に主役の渡辺勘治が還暦をすぎたあと、病院に行ってがんだろうと察する。自分が演出していて何にも思わなくてね」と声を震わせた。「こんな感じかな…。と楽しく作っていたので、まさか自分はないだろうと思い込んでいたんでね」。再演の話が持ち上がってきているいま、「演出が変わるかも」と話した。

 「運命をリセットする瞬間、渡辺という人はがんを知ってから輝き出すんですよ。日々、どれほど無駄なことをしてきたか。おれは自分がやりたいことを本当にやるんだって。ぎりぎりまで生きて行く。演出家としてそれをがんばってやった以上、そういった生き方をしようと思ったのは事実」と力を込めた。

 5月中に前立腺全摘出手術を受ける予定になっているが、手術後に尿漏れや勃起障害などの弊害もあることから、「もう一回冷静にセカンドオピニオンを考えて。とにかく落ち着いて自分の状況を見ていこう」と話した。

 前立腺がんを患った人の声を聞いてみたいということで、調べていたら、「恐れ多いんですけれども天皇陛下が平成15年に全摘出をなされた」ことを思い出し、「その後の陛下の国民のためのご尽力、被災地訪問などをすごい勢いでされていた。俺は小さい。なんて恥ずかしいんだ、俺は。悩んでいる場合じゃない」と勇気をいただいたという。

 宮本氏のがんはステージ2。「早期発見はどれほど人生を変えるのか。転移していないと聞いたときは生きていていいんだ言われたよう。いまの段階では幸せ者です」と目を潤ませた。

 また「還暦前後はうまくいかないことが多くあった」とし、「余命とか終活とか、老後を考える」気持ちにはなれなく、「還暦おめでとう」という言葉にも素直に受け止められず、過敏に反応。「ちゃんちゃんこなんて嫌だよ。俺はこれからだ」という気持ちでいたら「孤独になってしまった」とも。

 仕事についても「頑固なところがあった」と反省。演出家は「24時間ずっと考えないくてはいけない。休みが取れてちょっと旅行は行くけど、病院に行く時間はなかった」。また、演出家が休むとすべてが先に進まないため一回も休んだことはなく、「稽古中に休む人、自分の管理ができていないなと思っていた」と唇をかんだ。

 がんの宣告を受けてから、いままでの食事は全部変えたという。「牛肉、炭水化物は抑える。ゴーヤを食べてばっかりいる」と笑ったが、お酒はやめられないという。

 宮本氏は「いまこの環境にいることに感謝」しているというが、手術が終わっても「昔みたいな(気持ち)には戻りたくない」とし、「出会っちゃった“がん”と全部やれることはやって、挑むことは挑む」と前向きに語った。

 今後、年内に予定されている演出、7月26~28日のフィギュアスケート×源氏物語「氷艶hyoen2019 ~月光かりの如く」(横浜アリーナ)、10月3~6日のプッチーニ作曲 亜門版オペラ「蝶々夫人」初演(東京文化会館大ホール)は予定通り行うという。

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2019年4月12日のニュース