加藤雅也 北方ワールド体現 小説「抱影」映画化 中野英雄が初プロデュース「夢だった」

[ 2019年2月16日 08:38 ]

映画「影に抱かれて眠れ」に主演する加藤雅也
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 ハードボイルド界の巨匠・北方謙三氏(71)の小説「抱影」が、俳優加藤雅也(55)主演で映画化される。哀愁漂う男たちの悲哀と優しさを描いた作品。「影に抱かれて眠れ」のタイトルで今秋公開予定だ。

 「抱影」は2010年に出版。講談社創業100周年を記念して北方氏が書き下ろした作品で、横浜を舞台にした男の物語。同地は北方氏の最初のハードボイルド作品「弔鐘はるかなり」(81年)の舞台となっており、まさに原点回帰だ。加藤が演じるのは、横浜・野毛で酒場を営む抽象画家の硲冬樹。絵を描き、酒を飲む、気ままな暮らしを愛していた。だがある傷害事件により横浜の街の闇にのみ込まれていく。暴力団抗争の一方、愛する女性の余命を知る。全てを受け入れて生きる男を表現した。

 作品を作り上げたのも、渋い男たち。プロデューサーは俳優中野英雄(54)が務め、自ら映画化を推し進めた。脚本はVシネマなどで活躍する俳優小沢和義(54)が担当した。

 初の映画プロデュースとなる中野は、北方氏の大ファン。映像化された作品に出演したことはなかったが「当時の悔しさをバネに、どうしても先生の作品を1本映画化したい。それが夢だった」と説明。「同年代の監督に撮っていただきたい」と「相棒」シリーズなどを手掛けた和泉聖治監督(72)と交渉し、快諾を得た。

 撮影は昨夏。北方氏は加藤の自然体の演技を絶賛した。「てらいのない存在感が漂い出して、間違いなく新しい境地に立ったことを感じさせた。影に抱かれた男の、激しさと悲しみ。人はなぜ生きるのかという命題にさえ、ある答えを出したと思う」と称えた。

 加藤が原作を読んだ印象は「余計な説明のない漠然とした世界観が頭に入ってくる小説」だった。自身もセリフではなく、作品の世界観を雰囲気で表現するように心掛けて演じた。「一人の男の生きざまを楽しんでいただけたら」と自信を見せた。

 ≪北方氏70年デビュー、歴史小説も≫北方謙三氏は70年に「明るい街へ」でデビュー。81年からハードボイルド小説を書き始め「眠りなき夜」「檻」などがベストセラーになった。89年からは歴史小説にも挑戦。代表作の一つ「水滸伝」は06年に司馬遼太郎賞を受賞している。16年には全51巻の大作「大水滸伝」シリーズで菊池寛賞を受賞した。現在、直木賞の選考委員を務めている。

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